PENGUIN RESEARCH Penguin Go a Road 2019 「なぜ決闘なのか」 @なんばHatch 2019 6/2

※本記事には現在進行中のツアーのネタバレがございます。この先の閲覧は自己責任でお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近年じわじわとライブでの質が評価されきている(と勝手に思っている)PENGUIN RESEARCH。その背景にはデビュー当時のクールな路線からのいい意味での逸脱、つまり一言で言い換えればアツい曲が多くなったことが一因と考えられる。ここでいうアツいとは、生田鷹司(Vo)の突き抜けるようなハイトーンボイスなどを武器に、「悔しい」とか「今に見てろよ」といった感情を素直に表現しているということで、その実直さがライブ映えしているのかもしれない。

 

先日リリースされた「決闘」もまた、そのアツさをこれでもかと前面に押し出した楽曲といえるだろう。そんな「決闘」を引っ提げ、8月の横浜まで続くツアーの中盤戦、大阪公演に参戦。彼らにとって大阪では過去最大規模のワンマンだ。

 

開演時間ちょうどになると暗転、デジタルサウンドのSEが流れる中で新保恵大(Dr)、柴﨑洋輔(Key)、神田ジョン(Gt)、堀江晶太(Ba)、生田が順番に登場し、

 

「俺たちがPENGUIN RESEARCHです、よろしくお願いします!」

 

の合図で「SUPERCHARGER」がスタート。生田はお立ち台の上で時折両手を広げながら、客席が温まっていくのを確認しているかのようにふるまい、楽器隊4名が超絶プレイで魅せていく。つい誰か一人に夢中になってしまう程、とにかく一人一人のスキルがずば抜けているのはこのバンドの大きな強みだ。特に堀江のベースラインは、メインのメロディを担当しているのかと思うほど手数が多い。

 

ストロボが鮮烈に瞬いた「wasteland」と激しい曲が続き、フロアが十分に温まったところで、新曲「逆襲」を投下。「決闘」と対象的に音数は少ないが、「絶望的なシチュエーションから 大体ヒーローは生まれるんだぜ」といった歌詞からは、内側で確かに燃え滾る闘志を感じる。

 

続く「WILD BLUE」では「カモンカモン」の大合唱が自然と響き渡る。「転げ回りたくて仕方ない」といった歌詞は雑念や外野の声をかなぐり捨てていきたいという現在のバンドのモードを表しているし、演奏しているメンバーは実に楽しそうだ。生田の歌声も気持ちよく聴こえてくる。

 

昨日は福岡でライブだったし、前日にライブ映像を見たりしていると、生田のボーカルは安定感に欠けているというか、そもそもバンドサウンドが強靭であるがゆえに、そこに没入してしまうのではないかと心配だったが、どうやら杞憂だったようだ。やはりライブ映像を見るのと本物のライブを見るのは天と地の差があるなと改めて思う。

 

3月にイベントでの出演でなんばHatchに立っていたものの、ワンマンは初めて。生田は改めて客席を見回して

 

「ワンマンってやっぱ最高だな!」と笑顔を見せ、

 

「みんなは今日誰を見に来たの?」

 

の問いにPENGUIN RESEARCH!と答えるフロアにメンバーも満足げだった。

 

中盤、「brave me」「ボタン」を伸びやかに演奏すると、「世界最後の日に」では一転して優しい歌声を聴かせる。生田は声優としての仕事もこなしているだけあり、この辺りの表現力は流石だ。

 

ここで照明が一斉に落ち、暗闇の中から柴﨑のエレクトーンが響く。まるで深い海の中にいるかのような静謐な時間を経て始まったのは「冀望」。しかし曲が始まっても照明は点らず、メンバーの手元すら最低限の明かりがあるだけで、ほぼ暗闇に近い状態で曲が進んでいく。

 

徐々に光が増していく演出かな、とも思ったが、1番の終わりに中央の小さなライトが一つ点灯した以外は、なんと最後までステージが明るくなることはなかった。

 

ライブでの演奏において、色とりどりの照明を用いてオーディエンスに視覚的演出を提供するのは当然のものだ、と考えていたが(それに加えて、この曲はライブでどんな照明で演奏されるのだろうか、とオーディエンスがあれこれ想像するのもライブの一つの魅力だと考えている)、この曲はあえて照明を多用しないことで、ある意味での視覚的演出を見せる、というものだった。

 

そもそもバンドとしての強固な集中力がないとできないし、こうした引き算の演出を考えているバンドはそうそう見当たらない。とても秀逸なワンシーンだった。しかも後続の「ひとこと」「スポットライト」で、夜~夜明けの時間軸を表現するような流れも素晴らしかった。

 

「なぜ決闘なのか」というツアータイトルについて、生田はMCで

 

「1本も捨てていいライブなんてない。俺たちは誰にも負けたくないし、日々のライブが決闘だと思っている」

 

と語った。そして、

 

「俺たちはこのツアーを通じてもっと成長したい。俺たちだけじゃなく、スタッフや目の前にいる皆と一緒に前に進みたい」

 

とファイナル・横浜での初のアリーナワンマンも意識した意気込みを見せる。

 

これは個人的な意見だが、ロックバンドは常に最盛期を更新し続ける存在であってほしいな、と思っている。今年素晴らしいアルバムがリリースされても、2年後にはそのアルバムが霞むような最高傑作を生みだす、そんな風に進化していく姿に自分は心を打たれてきたし、そんなバンドを応援していきたいと感じている。

 

生田の言葉からは、現状に満足せず、バンドとしてさらに高みを目指すギラギラとした情熱を感じたし、それはきっとオーディエンスにも伝わったと思う。

 

「でもな、自分自身に勝てないやつが誰かに勝てるわけがない。違うか大阪!」

 

とフロアを大いに煽ったところで、「決闘」がついに放たれる。神保のヘビメタかと思う程のツインペダル連打が襲い来るように鳴りまくり、生田は自身の限界に挑戦するかのように声を張り上げる。それに比例して、オーディエンスの歌う声もどんどん大きくなっていく。

 

演者と観客が一切の妥協なしで真剣に向き合い、己の熱を叩きつけあう、まさに闘いのような一幕を経て、イントロから歓声が起こった「敗者復活戦自由形」ではジョンと堀江が華麗に立ち位置を入れ替わりながら、鮮やかなフレーズ一つ一つを見せつけるように奏でる。

 

完全にスイッチが入ったオーディエンスの合いの手もどんどん大きくなり、間奏のアレンジではゴリゴリのサウンドに乗せてヘドバン。本当に「スポットライト」とか「ボタン」を歌っていたバンドと同じか?と疑いたくなるほどの変貌っぷりである。

 

こうしたサウンドを趣向するのも、優等生のようなメジャーバンド像から離れ、本当に自分たちの興味が赴くままに生きていきたい、というこのバンドなりの反抗心の表れか。

 

続けざまに「シニバショダンス」で踊らせると、「近日公開第二章」では

 

「僕らが僕らを超える復讐劇」

 

と歌い、PENGUIN RESEARCHPENGUIN RESEARCHと対峙し、超えていく様を見せつける。鳴り物入りでデビューしたからこそ、彼らがロックバンドという形に拘り、泥臭くもがいている姿勢を隠そうとしない意味がわかった気がした。

 

生田は振り絞るように歌い上げてもなお、客席を不敵に見つめながら両手を広げ、「オイ!オイ!」コールを一身に受け止める。まるで「俺たちは絶好調だけど、お前らはどうだ?」と挑発しているかのようだった。

 

最後の曲の前に、生田は「ライブは好きか」「音楽は好きか」「PENGUIN RESEARCHは好きか」の流れに続いて(もちろん3つの問い全てにオーディエンスは大歓声で答えていた)、

 

「自分自身のことは好きですか?」

 

と問いかける。これには客席の反応は曖昧。

 

「自分のこと好きかって聞かれて、すぐに好きだって答えれるようになれたらいいな。毎日色んなことがあるだろうけど、俺たちはみんなのすぐ近くにいるから。最後、全員の声を聴かせてくれ!」

 

と語りかけ、「嘘まみれの街で」を演奏。

「奪い返して救い出せ 未来のお前自身を」というフレーズは、PENGUIN RESEARCHの音楽を信じてくれているオーディエンスへ、自分に負けるなという精神を体現してきたバンドからのこれ以上ない真摯なメッセージに感じた。だからこそ、

 

「何にも出来ないさ お前だけじゃ でも何だって出来そうだ お前となら」

 

というフレーズは説得力があるし、バンドとファンの強い信頼関係が窺えた。

 

アンコールではジョン以外が着替えて登場し、昨日誕生日を迎えた堀江にMCが回る。彼は改めて誕生日を祝われた後、実は「嘘まみれの街で」の前に足をくじいてずっと座っていたことをカミングアウト。それだけバンド全体が死に物狂いで音楽と向き合っているということを再認識された。

 

アンコール1曲目の「アジテーション・パレード」ではタオルを振り回したり、柴﨑がショルキーを背負ってフロントに躍り出たり、曲中に写真撮影をしたり、生田は大阪にちなんでたこやきを用いたコール&レスポンスを行うなど、自由奔放な時間が展開された。

 

どうやら未発表曲らしいが、次のアルバムには収録されるのだろうか。それにしても、かなりぎゅうぎゅうに新しい要素が詰め込まれた曲だ(曲中に写真撮影するのも前代未聞だし)。

 

そしてラストは、重大発表と冠してニューアルバムのリリース、そして大阪でFCライブを行うことを告げる。再会を誓ってから「boyhood」を会場全員で歌い上げ、ライブは幕を閉じた。

 

正直に言うとライブ映像やツアー初日のLINE LIVEを見ていて、今日のライブに不安を感じていた。今の時代、CD音源を綺麗に調整するのは簡単だが、それに伴い、音源とライブでの格差に違和感を覚えるアーティストが増えてきているとも感じる。

 

どれだけ表面を取り繕っても、ライブではそのアーティストの本当の姿が見えてしまう。ましてライブがロックバンドにとっての生命線となっている今、ライブ映像が微妙なのにライブに行ってみたい、という人は少ないだろう。

 

そんな心配はいらなかった。やはりライブバンドとして評価されているだけあって、その実力は本物だった。ロックバンドとしての地力を十分に感じたし、全ての曲が芯の通った出で立ちをしていた。

 

この調子でファイナルまで突っ走っていってほしいし、アルバムが出るということはまた近いうちに新たなツアーが始まるだろう。PENGUIN RESEARCHの更なる飛躍に、期待ばかりが押し寄せる一夜だった。