SiM presents DEAD POP FESTiVAL 2019 @川崎市東扇島東公園特設会場 2019 6/22

SiM主催の下、野外では5回目の開催を迎えたDEAD POP FESTiVAL。今年は昨年の京都大作戦のこともあり、例年よりもかなり前倒しのスケジュールでの開催となった。

 

「壁を壊す」のコンセプト通り、SiMと親交の深いバンドはもちろん、昨年は女王蜂やSHE’Sなどが出演するなど、常に異色の化学反応を起こしてきたフェスだ。今年もSHISHAMOやMOROHA、2日目ではあっこゴリラや凛として時雨といったメンツが、どんな刺激を与えてくれるのか。

 

しかし、予想以上にシャトルバス乗り場が混雑していたこともあり、オープニングアクトのINNOCENT in FORMALはおろか、ヤバイTシャツ屋さんすら間に合わなかった。しかも雨はどんどん強くなっていく。幸先の悪いスタートになってしまったが、気を取り直して最初のアーティストへ。

 

 

 

・ハルカミライ(CHAOSステージ)

 

CHAOSステージ一発目はハルカミライ。リハでは先に楽器隊だけで「ファイト‼」を披露し、土砂降りの客席をワクワクさせる。橋本学(Vo.)が遅れて登場すると、大歓声が巻き起こり、SEやアナウンス無しでライブが始まった。

 

橋本は早速ステージから飛び出していき、最前のお客さんに支えられながら「君にしか」を熱量マックスで歌い上げる。既にエンジン全開のスタートだ。橋本がじわじわと客席の上を移動しながら「カントリーロード」へ続く流れは恒例だが、ふとステージを見ると関大地(Gt.)も客席に進み出て、ペットボトルの水を頭から被っているではないか。もはや彼らにとって雨なんか関係ないんだな、と思い知る。

 

曲中のブレイクタイムでは橋本が地元でマー君と呼ばれていることを引き合いに出し、「俺がSiMだ。俺のことはマーと呼べ」と断言して笑いを誘う場面もあった。

 

 

「俺達が呼んでいる」ではステージ右手に移動し、ビニール傘を持っていた人から傘を拝借して高々と掲げたりと、やりたい放題のステージングを経て客席中央に到達した橋本はおもむろにTシャツを脱ぐ。

 

「お前らも脱げよ。女はやめとけ、男は…まあちょっとぐらいいいだろ」と言うと、ずぶ濡れの男たちが次々に上裸になる。

 

彼はその光景を見て「やっぱりちょっと気持ち悪いな」と笑い、「僕ら世界の真ん中」の歌詞通り、客席中央で「春のテーマ」を歌い上げた。

 

その後も橋本はステージに戻ることなく、ステージの先にある照明の鉄塔を目指してどんどんマイクケーブルを伸ばしていく(橋本の移動中は楽器隊だけでこの日3回目の「ファイト‼」を演奏したりしていた)。客席の上を横断するマイクケーブルはしっかりお客さんに支えられているし、何より須藤俊(Ba.)が

 

「曲やっていいかー?」

 

と橋本を気遣っていたのが印象的だった。彼のような冷静な存在がいてこそ、橋本や関の自由奔放な振る舞いがプロのライブとして成り立っているのだろう。ハルカミライのライブにはこうした優しさが随所に感じられる。まあ須藤もかなりの暴れん坊なのだが。

 

橋本が限界まで客席の奥に達したところで、「世界を終わらせて」でピースフルな空間を作り出すと、小松謙太(Dr.)の2ビートが冴えわたる「Tough to be a Hugh」「エース」が連続でドロップされ、CHAOSステージはさらにヒートアップ。その間、気づけば橋本はステージの上に戻っている。

 

最後の「アストロビスタ」では関のミスを「今日コイツ誕生日だから」とカバーしたり、

 

「さっきの人大丈夫だった?怪我してない?もし何かあったら物販のとこに来てくれ」

 

と、先ほど自身を支えていたと思われるお客さんを気遣う。「パンクロックは優しいものなんだ」と主張する彼らだからこそ、その優しさを体現したライブにこれほど多くの人が惹かれているんだろう。曲中、橋本は

 

「俺らはSiMと対バンしたことない。けど他のバンドのプッシュもあって、ハルカミライならってことで呼んでくれた!いつかSiMとライブハウスでもやりあいたいと思ってるから、その時は全員来いよ!」

 

と熱く語る。そして、

 

「いつかあっちのステージでトリ前がしてえ!」

 

と、前方のCAVEステージを指差して言った。これだけのライブをするならば、あっちのステージに立つのも時間の問題だろう。

 

 

 

・Dizzy Sunfist(CAVEステージ)

 

京都大作戦での経験から、「DPFでも小さいステージから大きいステージに行くストーリーを見てほしい」というSiMの思いで2ステージ制となっているDEAD POP FESTiVAL。2015年、2016年と連続でCHAOSステージに立ち、今年遂にCAVEに進出したDizzy Sunfistにとっては、きっと万感の思いだろう。

 

降りしきる雨がどんどん強くなっていく中、

 

「初めてのCAVEステージ!雨もいい思い出に!」

 

と超特急の純度100%メロコアナンバー「SHOOTING STAR」でライブは幕開け。絶え間なく「No Answer」をぶつけると、「人生何が起こるかわからへん!まさにLife is Suspense!」と「Life is Suspense」を投下。

 

現在妊娠中のあやぺた(Vo,Gt.)は椅子に座って演奏すると事前アナウンスされていたが、遠目からだとそんなに気にならない。むしろギターソロでは積極的に前に出るなど、いつもとあまり変わらないように感じる。いやま(Ba.)は骨太のベースでアンサンブルを支え、moAi(Dr.)はキレッキレのビートでバンドを勢いづけるなど、安定感は抜群だ。あやぺたは

 

「4年かかったよ!あの丘…っていうかあの島を越えるのに4年かかったよ!」

 

とどこかで聞いたことのあるMCで初めてCAVEに立てた喜びを爆発させると、「SiMはもはや酸素です」と感謝を告げる。

 

「守るべきものを持った人間の強さと覚悟だけは誰にも負けへん。今が最強やと思ってるから!」と語り、新曲「STRONGER」をメロディアスに届けると、

 

「夏が来るぞ―!」

 

と叫んで「Summer Never Ends」へ。続く「Tonight,Tonight,Tonight」ではラテンなリズムもしっかり乗りこなす器用さも見せた。

 

「おかんになってもDEAD POP FESTiVALに戻ってきたい」

 

と最後に語っていたあやぺたの言葉は、これから母親になるという責任感と同時に、バンドに憧れる少年少女のようなピュアな輝きをまとっていた。演者がいつまでもドキドキやワクワクを忘れないでいるからこそ、その思いがこれほど多くの人に届くのだろう。

 

最後の「The Dream Is Not Dead」が終わり、ライブを見ていた我々の心が晴れやかになるのと同時に、気づけば雨は上がっていた。

 

 

 

SHISHAMO (CAVEステージ)

 

DEAD POP FESTiVAL初参戦のSHISHAMO。ライブを見るのは3年ぶりぐらいだろうか。おそらく今日来場しているお客さんの大体は、名前は知っているがライブを見るのは初めて、という状況だろう。もしかしたらポップなイメージが先行しすぎて、この場に不釣り合いだ、と思っている人もいるかもしれない。事前に出演者に「気になるアーティストは?」と問われていた中でも、SHISHAMOはかなり注目されているようだった。

 

穏やかなSEに乗せて、吉川美冴貴(Dr.)、松岡彩(Ba.)、宮崎朝子(Vo,Gt.)が順番に登場。「DEAD」と刻まれたオフィシャルTシャツを着ている吉川はいつにも増して厳ついし、宮崎はよく見るとヒョウ柄のショートパンツを履いていてかなり攻撃的だ。

 

小気味のよい「DEAD POP!」の掛け合いから始まり、

 

「DEAD POPのPOPの部分を担いに来ましたSHISHAMOです。SiMのMAHさん好きの女に捧げます」

 

と挨拶して「バンドマン」からライブがスタート(女の子ではなく女と言っていたのがポイント)。シンプルながら堅実な演奏に宮崎の情感たっぷりの歌声がよく冴える。デビュー当時から比べると、宮崎のボーカリストとしての表現力は格段に上がっていて、時にがなるように歌う部分は思わず鳥肌が立つほどだ。

 

続く「タオル」ではステージ両脇のスクリーンにタオルをぶん回すアニメーションが映し出される。しかも映像内に登場するメンバーの服装はDPF仕様。SHISHAMOのタオルを持っている人は少なかったが、色とりどりのタオルが会場を彩った。

 

「知ってるよ。どうせみんな「なんでSHISHAMOおるねん」って思ってるんでしょ」

 

と宮崎はひねくれた様子だったが、

 

「私たちも川崎出身のバンドとしてこのフェスに出てみたかった」

 

と、SiMに直談判しにいったエピソードを語る。やはりどうしてもポップな側面ばかりが目立つバンドだが、the pillowsをルーツに持つなど、彼女らの根幹のスピリットは意外にも硬派だ。SiMもそれを認めているからこそ、DPFに呼んだのだろう。直前までかなりビビっていたという彼女らだが、温かく迎えてくれたお客さんにホッとしているようだった。

 

「君と夏フェス」では大きな歓声が起こり、「ねえ、」と爽やかな曲が続くと、ホーンセクションが鳴り響く「明日も」へ。スクリーンには歌詞が映し出され、口ずさむお客さんも大勢いた。

 

ガールズバンドは「かわいい」とか「明るくて爽やか」というイメージを持たれがちだが、SHISHAMOのスタイルはとても実直で泥臭い。サビの歌詞を予習してから最後に演奏された「OH!」では、彼女らのそんな一面が垣間見えた。

 

「ありのままの君 全部丸ごと 抱きしめてやるよ」

 

と歌った後の宮崎の笑顔は、皆からの期待を一身に背負う頼もしさすら感じられた。そんな彼女らの出番が終わるころには、会場は雲間から太陽が覗くほどの好天に変わろうとしていた。

 

 

 

・SIX LOUNGE(CHAOSステージ)

 

リハでRCサクセション「雨上がりの夜空に」を歌い、天気が回復したことを喜んだSIX LOUNGE。「自由にやろうぜ!」と叫び、「僕を撃て」からライブが始まると、早速前方エリアではクラウドサーフが巻き起こる。

 

「ふたりでこのまま」ではイワオリク(Ba.)がピョンピョン飛び跳ねながらベースラインを描き、ナガマツシンタロウ(Dr.)はグルーヴィーなプレイでバンドを支える。ヤマグチユウモリ(Vo,Gt.)の伸びやかな歌声は野外で聴くと非常に痛快だ。

 

どこかで熱狂的な声を上げたお客さんに向かい、「さすがCHAOSステージ」と返したヤマグチユウモリは、

 

「CHAOSの意味ってよくわからんけどスゲーってことだろ」と場を盛り上げる。先日新木場STUDIO COASTでのワンマンをソールドさせた彼らは、

 

「俺達がかっこいいから呼んでもらえたんだと思ってます!」

 

と自信満々だ。

 

彼らのメロディアスな部分が前面に押し出された「メリールー」をじっくり聴かせた後は、

 

「ここからノンストップでいくぞ!この時間は俺たちが主役だ!ロックンロールの時間だぜ!」

 

と高らかに叫び、「DO DO IN THE BOOM BOOM」「LULU」と更に加速していく。性急なビートに乗せてクラウドサーフが留まることなく起こった「トラッシュ」で限界突破のカオスな空間を生みだすと、「ピアシング」でトドメの一撃。

 

演奏中にステージ後方から一際どんよりとした雨雲が近づいてきていたのが気になったが、どこまでも突き抜ける無敵のロックンロールをぶちかましてくれた、まさに独壇場の30分間だった。

 

 

 

10-FEET(CAVEステージ)

 

もはやDEAD POP FESTiVAL、いや日本中のフェスに欠かせない存在となっている10-FEET。そのカリスマっぷりはやはりこの会場でも健在で、豪勢なSEが鳴り響く会場には色とりどりのタオルが掲げられている。

 

 

「蜃気楼」からライブが始まると、客席は早速ダイブに乗り出す人もいれば、じっくりと味わうようにTAKUMA(Vo,Gt.)の歌を噛み締める人も。

 

続く「VIBES BY VIBES」ではイントロから会場を熱狂の渦に飲み込んでいき、NAOKI(Ba.)は足を振り子のように回して自在に回転しながらステージを動き回る。客席は性急なビートに乗って円になって走り回ったり、肩を組んでジャンプしたりと大忙しだ。

 

続いて披露された「ハローフィクサー」は10-FEETの新たな側面を見せる斬新なナンバーだ。ティザー映像を見る限りだと、打ち込みを融合させたミクスチャーといったイメージだったが、ライブで聴くとやはり生音の比率が強く、いい意味で音源と全く異なっている。今後この曲が、彼らのライブでどのような立ち位置を担うことになるのか楽しみだ。

 

「RIVER」の曲中、焦らしプレイが決まって悪戯っ子のように笑ったTAKUMAは、

 

「会場に着いたらおもろいぐらい雨降ってて。その時にMAHと目が合いました。彼はひとこと言いました、「引き受けました」」

 

と語った。互いに同じ時期にフェスを主催する者同士の信頼関係がよく伺えた一幕だった。

 

「1sec.」ではいったん曲を中断し、「お前らまだまだやれるやろー!お前らがまだまだやれるって俺らは知ってるんやぞ!」と思いっきり煽る。そしてMAHよろしく、両手で客席の中心をこじ開けるような動作をすると、今度は開けた空間を閉じてしまう。

 

こうした遊び心あふれるライブができるのも、10-FEETが各地でたくさんのロックキッズ達と心を通わせてきたからだろう。結局ウォールオブデスの体制が整ったところで再開。

 

「その向こうへ」「ヒトリセカイ」と最後まで会場を熱狂させてフィニッシュすると、

 

「SiM、あとは頼んだで」

 

としっかりバトンを繋いでみせた。

 

 

 

My Hair is Bad(CAVEステージ)

 

ヤバイTシャツ屋さん、Dizzy Sunfistに続いて初めてCHAOSから昇格したMy Hair is Bad。小雨の中、アナウンス時からステージ上に陣取り、開始の合図とともに爆音を鳴らす。

 

「行くぞDEAD POP!」と挨拶代わりに「アフターアワー」を打ち鳴らすと、「熱狂を終え」で勢いは更に加速。足を高々と蹴り上げながらコーラスも完璧にこなす山本大樹(Ba.)、パワフルかつ安定感抜群の山田淳(Dr.)が生みだすリズムは爆発力の塊だ。

 

「初めましてなので自己紹介を」

 

と椎木知仁(Vo,Gt.)がギターを爪弾きながらつらつらと言葉を重ねていくと、「ドラマみたいだ」へ。

 

アリーナツアーで披露していた「次回予告」や「裸」、あるいは新曲「芝居」でも感じたが、こうしたバラードやミディアムな曲がどんどん味わい深くなっていっているのが今のマイヘアの凄みだ。

 

もちろんキレのある演奏もさらに磨きがかかっていて、「告白」や「クリサンセマム」ではクラウドサーフが続出していた(クリサンセマムの虹色の照明も素晴らしかった。マイヘアは照明も抜群にかっこいい)。

 

特に「真赤」は圧巻だった。「目が合うだけでも」の部分では、椎木は頭を掻きむしり、ギターを弾くことも忘れて溢れ出た言葉を吐き出す。そこに予定調和は全くとしてなく、今この瞬間じゃないと聞けない言葉たちが突き刺さる。

 

今日の一日の模様は後日スペシャで放送されるが、マイヘアは自身らの意向により、フェスのライブ映像はあまりオンエアされない。たとえオンエアされたとしても、この瞬間の熱量はその場にいた人でなければわかり得ないだろう。

 

「SiMと初めて会ったのは2009年だと思っていて。今年で10年経ちました。これからも長い付き合いになればいいなと思っています。これ以上喋ったらMAHさんにまた「思い出話に頼りすぎ」って怒られそうだからやめておきます」

 

と言って笑いを誘うと、

 

「みんな最後は結婚に行き着くんだなって。羨ましいなと思います。後を追っかけられるように頑張ります」

 

と最後に「いつか結婚しても」を笑顔で歌い、ステージを後にした。

 

 

 

・MOROHA(CHAOSステージ)

 

今日唯一のユニットアクト、MOROHA。アフロ(Vo.)が「乾杯!」と叫んで始まったのは「革命」。地の底から光あふれる天井を見上げるように、アフロは言葉の一つ一つを鋭利な刃物の如くDPFにぶつけていく。

 

UK(Gt.)のアコースティックギターはそんなアフロの言葉と時に戦うように唸りを上げ、時に言葉を盛り立てる武器となる。とにかく音の研ぎ澄まされ方がえげつない。

 

「SiM、そんなに仲良くないのに誘ってくれてありがとう。早くモッシュしたい、ダイブしたいって奴があの辺にいるけど(フォーリミ待ちのCAVEを見ながら)、俺お前らみたいなの大嫌いだよ。でもSiMは、そんな嫌い同士がぶつかり合うことで新しい何かが生まれるんじゃないかって俺らに期待してくれたんだ。壁が壊れるところを見たいか!」

 

と大いに煽り、「俺のがヤバイ」をドロップ。エッジの効いた、なんて言葉ではとうてい言い表せないほどの冷徹な意思を纏った音が、観客を硬直させる。

 

しかし一転、温かくて寂しげな歌声で「拝啓、MCアフロ様」を歌い始めると、すっかり雨が上がった会場に冷たい風が吹きつける。すると、「いなくなった彼女の残した手紙を、ベランダで夜風に当たりながらつらつらと読む」という曲の情景が一瞬で浮かび上がってきて、思わず涙がこぼれそうになった。これはまさに野外の、しかもこの時間のこの気候じゃないと味わえない、美しい時間だった。

 

何せ彼らはボーカルとギターのみのシンプルな編成故に、曲中にはどうしても向かいのステージからフォーリミのサウンドチェックの音が聴こえてくる。それに対して

 

「フォーリミうるせんだよ」

 

とキレ気味に叫んだアフロは、

 

「ジャンルの壁は壊れたか」と観客に問う。観客は手を挙げてそれに応えたが、

 

「嘘だね。ジャンルの壁はそんな簡単には超えられない」と一蹴。それでも、

 

「むしろ俺はジャンルの壁はそこにあってほしいと思う。ロックも、ヒップホップも、パンクも、心のことだから。ジャンルの壁を超えるってのは心を超えるってことだから」

 

と語る。MOROHAは究極のリアリストであり、しかし同時に究極のドリーマーでもあるのだ、と再認識した。

 

「ストロンガ―」「五文銭」を歌っている途中、アフロの瞳は客席にももちろん向けられていたが、さらにその向こう、眼前のCAVEステージを強かに見据えているようにも感じた。高すぎるハードルに真正面から挑みかかった彼らに、気づけば誰もが虜になっていた。

 

 

 

04 Limited Sazabys(CAVEステージ)

 

「MOROHA、俺達のことイジってくれてたけどバリバリ時間押してたからね」

 

とリハから余裕綽々の04 Limited Sazabys。今や「YON FES」を主催するなどシーンに必要不可欠な存在となりつつあるが、今年は満を持してトリ前だ。開始早々、

 

「先輩の庭荒らしにきました」

 

と対抗心剥き出しで「knife」から攻撃開始。KOUHEI(Dr.)の切れ味抜群のドラムにRYU-TA(Gt.)のしゃがれた煽り声が乗り、観客を串刺しにしていく。HIROKAZ(Gt.)の奏でるギターも実にキレキレだ。

 

赤と緑の照明が妖しく舞った「Alien」(この曲は去年のDPFでSiMのAmyをカバーしたのがきっかけで生まれたとのこと。つまり原点回帰)、ヘビーな音像の「Utopia」と最新アルバムの収録曲を次々と投下し、狂気狂乱の空間を生みだしていく。いつも容赦がないセットリストで挑みに来る彼らだが、今日はいっそう気合が入っているようにも感じる。

 

「悪魔祓いに来ました、光属性のバンド04 Limited Sazabysです」

 

と自己紹介すると、GEN(Vo,Ba.)はバックヤードで子供をあやしていたMAHを「ビジネス悪魔」とイジるなど、お互いの主催フェスに呼び合う仲のよさを見せる。

 

しかしその後も攻めの姿勢を緩めることはせず、「fiction」をドロップ。メロウの世界にDPFを誘うと、「My HERO」と繋げる。

 

「未来で合図を待ってて My HERO」という歌詞は、フォーリミが自分たちのヒーローに宛てた歌であると同時に、この会場でフォーリミに憧れを抱いている少年少女たちにとってのフォーリミに宛てた歌でもあるのが、最高にエモーショナルだ。

 

思わず体が動いてしまうポップチューン「Kitchen」で会場を踊らせると、「Galapagos」ではSiMが今年のYON FESに出演した際に、会場を「タンポポ」と揶揄していたのを引き合いに出し、タンポンを出すというパフォーマンス。生理用品すらもネタに用いる怖いもの知らずっぷりを見せつけた。

 

「SiMは出会った時から本当にかっこいいです。尊敬しています」と感謝を告げると、

 

「この異世界魔界村にいる間だけでも、全部忘れて遊んでほしい。それがSiMの望んでることだと思うし、俺達もそう望んでいます」

 

とこのフェスの大切さを語る。自身もフェスを主催する身として、遊び場を作ることへの責任感、その遊び場でたっぷり遊ぶことの大事さをよく理解しているからこその言葉だろう。

 

「どうせみんな平日は考えすぎてるんでしょ!?考えて、考えて、考えすぎて、自分が分からなくなっているあなたに捧げます。自分自身に生まれ変われ!」

 

と「Squall」を畳みかけると、ラストは必殺の「monolith」で締め括った。

 

ライブを見たのは今年2月のツアー以来だったが、「SOIL」の楽曲が更に磨きをかけて誇り高く鳴らされていたのが印象的だった。この曲たちを引っ提げて臨む今年の夏フェスは、フォーリミにとって最強の夏となることだろう。

 

 

 

・SiM(CAVEステージ)

 

いよいよDEAD POP FESTiVALも初日ラスト。もちろん最後に待ち構えるのはこのフェスの首謀者、SiMだ。ライブを見るのは「PANDORA」のリリースツアー以来だから、5年ぶりぐらいだろうか。

 

サイレンが鳴り響き、自然と会場の空気が締まるのを感じる中、PAテントの横にはフェスのロゴマークがプリントされた旗がたなびく。SHOW-HATE(Gt.)、SIN(Ba.)、GODRi(Dr.)が貫禄たっぷりで登場すると(GODRiはゴリラのように仁王立ちでドラミングしていた)、MAH(Vo.)が客席を睨みながらのっしのっしと歩んでくる。既に期待は最高潮だ。

 

そんなMAHが両手で三角を作ると、「A」でライブスタート。この時点で、今日の錚々たるメンツが築いてきた高すぎるハードルを、一瞬で飛び越えてしまう瞬間を目撃してしまった。MAHの佇まいは悪魔とか通り越してもはや魔神だし、4人とも遠目に見ていても威圧的な存在感だ。あまりにセンセーショナルな始まり。この先どうなってしまうのか。

 

間髪入れずに「KiLLiNG ME」で理性を崩壊させると、「TxHxC」では巨大なサークルをあちこちに生みだす。かと思えばMAHに合わせて手を大きく左右に振る。まるでこの会場全てが彼らの手中に収まっているかのように、人々は意のままに動き回る。というか実際、この短時間で彼らは会場を掌握してみせた。圧巻の光景だ。

 

「あんだけのバカみてえな雨を生き延びて、すげえライブをくぐり抜けて、やっとの思いでここまでたどり着いた諸君!安心しろ、俺たちがすっきり、きっちり、トドメを指してやるから!」と語るMCは、主催者としての責任とか、トリとしての重圧なんて屁でもねえ、という気概すら感じる。

 

「てめえらのような下等生物、速い曲で殺すのなんて簡単なんだよ。俺らは少しずつ毒を盛って殺したいわけ。わかる?本当にわかってんのか!」

 

とニタニタ笑うと、ピアノをフィーチャーした初期のレゲエナンバー「Here I am」をプレイ。川崎の空気と非常に相性のよい曲だ。更に

 

「久しぶりにやる曲」

 

と紹介されたのは「Same Sky」。5年前のツアーでも披露していた曲だったこともあり、久々の再会に心が躍る。MAHは時たまサビの歌詞を観客に預けたりしながら、情感たっぷりに歌い上げた。

 

続いても久しぶりに披露された「EXiSTENCE」で、会場は一段とヒートアップ。こうした曲を演奏できるのも、ここが彼らのホームグラウンドだからこそであろう。

 

「DEAD POP FESTiVAL今年もありがとう。毎年少しずつよくしていって、でもまだ未完成な部分も多くて。でもそれはマイナスなことじゃなくて、もっと良くしていけるって思ってるから。主催者がまだ70%ぐらいのフェスですって言うなよって思うかもしれないけどさ、みんなと一緒に成長させていってください」

 

と未来を見据えて語った彼らは、

 

「成長って単純なことで、昨日よりちょっとかっこいい自分で今日を終えればいい。今まで14年間SiMやってきたけどさ、どの瞬間よりも今のSiMがいちばんかっこいいって自信あるんだわ。お前らも人生で一番かっこいい自分でかかってこい!」

 

と、現時点での最新曲「DiAMOND」で冷徹さと熱狂が渦巻くカオス空間をまとめ上げ、本編を締め括った。

 

アンコールでは残ってくれていた出演者を迎え入れ、写真撮影(SHISHAMOがオドオドしながらセンターに呼ばれていた)。そして、

 

「10年に1つのキラーチューン」

 

と題して披露されたのは「Blah Blah Blah」。明日に残す体力すらも使い切らそうというバンドのサディスティックな演奏を経て、ラストはやはり「f.a.i.t.h」。

 

MAHはいつも通り魔界の門をこじ開けるように人々を割っていくが、それがPAテントを突っ切り、出入り口近くまで伸びていたのが圧巻だった。SINの凶悪なベースラインが鳴り響いたのも束の間、人々が中心めがけて突撃していく。DEAD POP FESTiVALだからこそ見れる絶景だった。

 

万感の思いで最後の曲を終えると「帰れー!」と虫を払うようにメンバーはそそくさと捌けていった。

 

 

 

DEAD POP FESTiVALは以前から気になっていたが、何とかスケジュールの都合がうまくいって今年初めて参加することができた。雨はそれなりに覚悟してきたつもりだったが、最終的には上がってくれて本当によかったし、出演するバンドが時間を追うごとにどんどんハードルを上げていく様は壮絶だった。上がったハードルを次々に越えていく姿もとてもかっこよく、頼もしかった。

 

もちろんSiMと親交の深いラウド、パンク系のバンドが多く集うフェスでもあるが、決して仲良しこよしだけで内輪的に完結するフェスで終わるのではなく、SHISHAMOやMOROHAといった存在がいることで、新たな出会いの生まれる現場を作ろうとしている姿勢には本当に頭が下がる。これからもずっと続いてほしいフェスだと思ったし、また帰ってきたいと強く思う。

 

次はちゃんとオープニングアクトから見れるように早起きしないと。あと次来たときは晴れてるといいな。