京都大作戦2019 ~倍返しです!喰らいな祭~ @京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ 2019 6/29

10-FEETが毎年京都で開催している恒例イベント「京都大作戦」。今や後続が断たないアーティスト主催フェスの先駆けであり、夏フェスの始まりを告げる存在でもあり、10-FEETを慕う多くのアーティストにとっての夢の舞台でもある。

 

毎年スペシャの特番で見ているだけだった自分がこのイベントに行こうと思ったきっかけは、一昨年の3日目の模様を見たからだ。一昨年の最終日は、マキシマム ザ ホルモンの途中で激しい雷雨に見舞われ、公演の中断を余儀なくされた。何とか再開できたものの、音出し終了時間まであとわずか。そのわずかな時間をホルモン、ROTTENGRAFFTY10-FEETで何とかリレーし、終演までこぎつけることができた。あの時、転換中も声を上げて応援していた会場を見て、胸が熱くなったのを覚えている。

 

本当は去年初めて行く予定だったのだが、未曾有の大雨に出くわして2日とも中止。しかし、去年の出演者が再び勢揃いし、今年は4日間の開催に。出演者がそうであるように、自分自身もリベンジを兼ねての参戦となった。

 

 

 

ヤバイTシャツ屋さん〈源氏ノ舞台〉

 

MOBSTYLES田原氏の前説を終え、4日間の口火を切るべく登場したのはヤバイTシャツ屋さん。源氏ノ舞台に立つのは初めてだ。お馴染の気の抜けるSEをバックに3人が登場すると、

 

「ここからまた新しい10年が始まります。1番手、任せてください」

 

と胸を張って宣言し、「Tank-top of the world」へ。休む間もなく「あつまれ!パーティーピーポー」「Universal Serial Bus」「かわE」となだれ込み、キラーチューンの応酬に歓声が上がる。

 

京都大作戦201!9!」

 

と微妙なコール&レスポンスを決めると、こやまたくや(Vo,Gt)は初年度から観客として京都大作戦に来続けていた、と古参アピール。そして

 

「アーティストの中では10-FEETの次に大作戦のこと知り尽してます。知り尽してるってことは、どうすればお客さんが盛り上がるかも知ってるんです!」

 

と強気に叫ぶと「L.O.V.E タオル」へ。もりもりもと(Dr.)は指揮者のようにスティックを振って観客を煽り、しばたありぼぼ(Ba,Vo.)が歌う部分では目の前に立ったこやまに

 

「セイセ…前立つな」

 

と突っ込んで爆笑を誘う。「とりあえず噛む」では縦乗りでグラウンドを揺らし、「無線LANばり便利」の大合唱にはこやまも満足そうだった。終盤、

 

「ちょっとだけ個人的な話をしてもいいですか」

 

と切り出したこやまは、

 

「2008年にここで10-FEETのライブを見たせいで人生狂わされました。衝撃を受けて、僕もバンドをしなくちゃいけないと思って、一緒に行った友達と10-FEETコピーバンド組んで。大学で今の仲間を見つけて、このバンドを組みました。そして今、このステージに立ってます。今めちゃくちゃ幸せです!」

 

と語る。11年前、ここで10-FEETに影響されたこやま少年は、バンドを組み、やがてオリジナル曲を作るようになり、それがたくさんの人に認められて、今では10-FEET直属の後輩になっている。ドラマのようなストーリーだが、遡れば10-FEETだって、Hi-STANDARDに影響されているし、大規模なアーティスト主催のイベントとしてAIR JAMの存在は切っても切れない。

 

バンドの歴史は、そうやって連綿と今日まで繋がっている。次はこの会場にいる誰かが、ヤバTのコピーバンドを組んで(というか実際、高校生や大学生でヤバTのコピーをしている人はかなり多い)、やがてヤバTとの共演や京都大作戦のステージを目標に掲げて成長していく。そんな新しいドラマの始まりを告げるかのようなアクトだった。

 

最後の「ハッピーウェディング前ソング」では、こやまとしばたがドラムの前に集まり、ジャンプして締めたのだが、その時の3人は、まるで少年少女のような無邪気さを纏っていた。

 

 

 

・四星球〈源氏ノ舞台〉

 

京都大作戦にコミックバンドがやって来たぞー!」

 

と元気よく現れた四星球。4日間の開催を祈り、楽器隊がてるてる坊主で登場するのだが、顔面が白塗りのモリス(Dr.)は遠目から見るとゴールデンボンバー樽美酒研二みたいだ。

 

「みんなリベンジ言うてるけど、僕ら去年呼ばれてないんですよ。この苦しみわかるか!?」

 

と、北島康雄は勝手に時を巻き戻し、京都大作戦2018の開催を宣言。

 

「平成最後の京都大作戦、いきますよー!」

 

と無理矢理すぎる幕開けだ。そうして「クラーク博士と僕」が終わると、まさやん(Gt.)が

 

「俺らいつも「時間がない時のRIVER」やってるけど、そろそろ本当のRIVERが弾きたい」

 

と不服そうにぼやく。それを受けてバンドは、「RIVER」に乗せて「クラーク博士と僕」を歌うというマッシュアップみたいな妙技を繰り広げる。歌詞のはまりっぷりに、思わずメンバーも観客も「すごい」と感嘆する。

 

「鋼鉄の段ボーラ―まさゆき」では、まさやんがダンボールで舞妓を作るつもりがマイケルジャクソンになってしまったことを告白。罰として、ギターソロの時に観客に耳を塞がせて下を向かせるのだが、前半部分で北島が

 

「もういいよー!」

 

と言ったので、後半の部分はちゃんと聴いてもらえていた。しかも舞妓もちゃんと作ってある。こういう所も含めて、彼らの笑いは誰かを貶めるものではないし、観客もそれをちゃんとわかっているから受け入れている。

 

「言うてますけども」では前日にスタバで打首獄門同好会と間違えられたエピソードで会場を笑わせる。更に「ぶっ生き返す!!」や「金色グラフティー」をやる振りを見せて曲に戻るというしつこさを発揮。どんなライブでも、いくらでも応用の効かせられるナンバーだ。

 

さらに「Mr.Cosmo」ではいつものようにUFOを呼ぶが、BRAHMANTOSHI-LOWにやられてUFOはボロボロに。それでも構わず北島は五重塔を持ち出すと、嵯峨野さやさや「たんぽぽ」に乗せて客席の中へ移動(選曲は京都を意識してか)し、PAテントの後ろまで駆け回った。

 

このように、挙げればキリがないほど、四星球のライブは盛りだくさんだ。35分の間に、これだけのギミックが仕込まれている。普段はおちゃらけているが、彼らのライブにかける情熱は真剣だ。だからこそ、最後に

 

「40になるまでに10-FEETの一つ前をやります!」

 

と願望を叫んで放たれた「SWEAT 17 BLUES」は、何だかこっちまでジーンときてしまった。最後はモリスが牛若ノ舞台まで運ばれて終了。北島は

 

「SHIMAが待ってるよー」

 

と最後まで配慮を忘れなかった。

 

 

 

昼過ぎにはDragon Ashの櫻井誠がプロデュースする桜井食堂でチキンカレーを食した。ほどよい辛さでおいしかったし、これぞチキンカレーって味だった。隣に出店していたACIDMAN浦山一悟のラーメンも食べてみたかったので、次に見かけたらぜひ食べたい。

 

 

 

・ハルカミライ〈牛若ノ舞台〉

 

ついに京都大作戦初登場となるハルカミライ。定刻になり、先に楽器隊が登場。少し遅れて橋本学が登場し、彼は早速客席に足をかける。この辺はDPFと同じだ。というか、結論から言うとセットリストはDPFと同じだった。

 

しかし先週と明らかに違ったのはダイバーの数。その数は普段ならよく見える橋本がどこにいるかわからなくなるほどで、「君にしか」「カントリーロード」の時点で既に最前列はカオスな空間となっている。しかし

 

「振るはずだった雨、降らせてやったぜ」

 

と手にしたペットボトルの水を目の前にぶっかけるなど、やんちゃっぷりは健在。

 

「正直ちょっとは降るかなーと思ってたんだけど、晴れたな!俺達スーパー晴れバンドだけどよ、ここにいるお前ら全員、晴れ男、晴れ女だぜー!」

 

と盛り上げると、「ファイト!!」「俺達が呼んでいる」で更にヒートアップ。ダイバーも増え続けていくし、関大地(Gt.)も客席に飛び込んでいる。

 

「さっきそこの女の子がさ、ダイブしたら前見えないんだよねって愚痴ってたからさ、あんまりダイブすんなよー」

 

とか言いながら再び「ファイト!!」をかますと、客席中央に移動した「春のテーマ」では壮大なシンガロングを響かせた。

 

10-FEETが自分たちの曲を聴いてくれたことに感謝を告げると、

 

10-FEETだけじゃない。色んな人たちのプッシュがあってここに立たせてもらっています」

 

と橋本は語る。そんな期待を一身に背負うかのように、「世界を終わらせて」を高らかに歌い上げると、「Tough to be a Hugh」「エース」で勢いづける。

 

先週はよく見えなかった小松謙太(Dr.)は橋本より先に上半身裸になり、全身でドラムを打ち鳴らしているし、須藤俊(Ba.)は時々客席に歩み寄りながら、ステージ上で跳ねるように動き回っている。

 

「出れたよー!」と初出演を喜んだ橋本は、

 

「いつか10-FEETを対バンに呼びたい!いや、俺らが呼ばれたい!次はライブハウスで会おうぜ!」

 

と再会を誓い、「アストロビスタ」みんなで歌うと、最後は

 

「俺たちを見つけてくれてありがとう」

 

と優しく語りかけ、ライブを終えた。

 

楽しい時間は早く過ぎるとはよく言うが、今日のハルカミライのライブは、30分以上あったんじゃないかと錯覚するほど濃密だった。先週のDPF終了後、SiMのMAHはブログで

 

「先輩でよかった。同世代でこんなライブされたらバンド辞めたくなってる」

 

と彼らを称賛していた。もはや彼らは同世代ナンバーワンどころか、先輩すら食う勢いで突き進んでいる。源氏ノ舞台に呼ばれるのも時間の問題だろう。

 

 

 

東京スカパラダイスオーケストラ〈源氏ノ舞台〉

 

フェス界きってのお祭り男集団、東京スカパラダイスオーケストラ。今や様々なボーカリスト、バンドとジャンルレスにコラボを続ける、まさに「Paradise Has No Border」を体現し続けるバンドだ。

 

いきなりのキラーチューン「DOWN BEAT STOMP」で幕を開けると、直前までステージに立っていたBRAHMANTOSHI-LOWを召喚。グレーのスーツに身を通し、任侠感が凄まじい彼を迎えて「野望なき野郎どもへ」を披露。

 

直前のステージではBRAHMANスカパラホーン隊を呼び込んだりしていたし、こうした持ちつ持たれつなコラボが繰り広げられるのもフェスならでは。

 

瞬く間に彼らの代表曲となった「Paradise Has No Border」では10-FEETメンバー全員が登場。自由に振る舞ったり、キメに合わせて扇のポーズをとったりと楽しそうだ。そんな両者だが、KOUICHI

 

「欽ちゃん、一回どこうか」と茂木欣一(Dr.)のドラムセットを横取りし、NAOKI

 

「川上!…さん、貸してもらっていいですか」と川上つよし(Ba.)のベースを拝借したところで始まったのは「HONE SKA」。

 

TAKUMAと一緒に茂木と川上も楽しそうにステージ上を動き回っている。わざと呼び捨てにする冗談が通じるほどの、2バンドの絆の深さが伺えた。TAKUMAだけが残ったところで、久々の「閃光」も披露。

 

スカパラは今年で30周年になりました。この30年の間に10-FEETみたいな楽しい友達もできたけど、苦しい時期もたくさんありました」

 

谷中敦(B.Sax)は語る。そもそもスカという当時では斬新だったジャンルを世に広めたのは彼らだし、様々なアーティストをフィーチャリングゲストに迎えることで活躍の場を広げてきた歴史も、彼らの挑戦的なスタイルを表現している。

 

そんな30年の光を集めて歌われた「Glorious」は、彼らならではの説得力に満ち溢れていた。フロントで歓声を受け止める谷中も実に頼もしい。

 

最後は鮮やかなソロ回しが耳を引く「ペドラーズ」で締め括り、後半3バンドへのバトンを繋いだ。

 

 

 

マキシマム ザ ホルモン〈源氏ノ舞台〉

 

2013年に「予襲復讐」で知って以来、ずっとライブを見たかったマキシマム ザ ホルモン。ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)も完全復活し、2年ぶりに京都大作戦に帰ってきてくれた。何を隠そう、ここからのホルモン、ロットン、10-FEETの流れは、伝説として語り草にもされている2017年と同じ流れ。これには否応なしにテンションが上げられる。会場の入りも今日トップクラスだ。

 

SPACE COMBINEのSEに乗せて4人が貫禄たっぷりで登場すると、待ってましたと言わんばかりに腹ペコで溢れ返った会場は大爆発。凶悪なサウンドが一音鳴らされる度に身体が昂る。

 

「恋のメガラバ」で勢いよくスタートすると、もうそこからは彼らの独壇場だ。源氏ノ舞台には際限なく人が押し寄せ、前も後ろも関係なく踊り狂っている。それが終わると、一糸乱れぬヘドバンタイム。これはもう笑うしかない。今日ってホルモンの野外ライブでしたっけ?

 

丘から聴いていても、上ちゃん(4弦)のバキバキのベースラインが響いてくるし、マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)の歌は狂気的かつメロディアスだ。

 

「ずっと言いたかったことを言ってもいいですか。京都大作戦にようこそー!」

 

とブチ上げた4人は、「maximum the hormone Ⅱ ~これからの麺カタコッテリの話をしよう~」でハードなサウンドだけでなく、随所に挟まれるデジタルロックな一幕を乗りこなす。ナヲ(ドラムと女声と姉)は前に出てきてダイスケはんと一緒にポーズをとったりするなど、フロントに負けない存在感を放っている。

 

「「F」」では一音目から悲鳴のような歓声が上がり、フリーザ様が降臨したこともあってグラウンドは戦場と化す。ホルモンじゃないと見られない景色だ。

 

「このステージに来るまで2年かかりました」

 

と誰かのMCを拝借して源氏ノ舞台に帰ってこれた喜びを語ると、不謹慎なネタを披露したり、珍しく喋った上ちゃんを一蹴したりと自由奔放。しかし「G’old~en~Guy」で本編に戻ると、2号店のDANGER×DEERのフレーズを用いて「包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ」で再び会場を狂乱の渦に落とし込む。

 

最後の曲の前に行われた恋のおまじないで、ダイスケはんは

 

「来年の京都大作戦の成功も願って恋のおまじないやりませんか!?」

 

と叫んだ。どうしても苦しかった一昨年、昨年のことばかりが思い出されがちな京都大作戦だが、ホルモンは未来を見据えていた。この舞台に立つことを目標にしている人もたくさんいるし、この場所で会う約束をしている人もたくさんいる。毎年悪天候に怯えながら、きっと京都大作戦は来年以降も続いていく。ロックバンドはいつだって前を向いている。

 

セキュリティも一緒に体を反って、明日や来週、来年への願いを込めたおまじないが掛けられたところで、「恋のスペルマ」が盛大に鳴らされ、ホルモンのライブは幕を閉じた。

 

それにしても、家族連れもたくさんいるのに「スペルマ」というワードを連発するのが実に彼ららしい。会場の腹ペコ達は、最後には「復活おめでとう」という満たされた表情で源氏ノ舞台を後にし、牛若で待つSHANKへと走っていっていた。

 

 

 

ROTTENGRAFFTY〈源氏ノ舞台〉

 

少し雨がぱらついてきたのが気になる中、10-FEETと同じく京都出身で、10-FEETと同じくらい京都を愛するバンド、ROTTENGRAFFTYが登場。

 

N∀OKI(Vo)が開口一番、

 

「粛清された夢の続きをおっぱじめようぜ!」

 

と言って歌い出したのは、もはやこの会場で歌えない人はいないのではないかと思わせるほどの必殺アンセム「金色グラフティー」。

 

10-FEETの思いはここ、太陽が丘に」

 

と歌詞を変えて歌われ、いきなり訪れたクライマックスに、会場は狂気狂乱。雨なんて気にならない、と言わんばかりにあちこちでモッシュ・ダイブが炸裂する。

 

NOBUYA(Vo)とN∀OKIの戦うような掛け合いがボルテージを引き上げていく「PLAYBACK」で会場を揺らすと、「D.A.N.C.E.」では座らせてからの大ジャンプ。一瞬の隙も油断もないグルーヴが京都大作戦を包んでいく。

 

続いて

 

「俺らの町の歌歌ってもいいですか!」

 

から「響く都」へ。ロットンの京都愛が歌詞だけでなく、和風なメロディにも込められている。

 

すると一転、サイレンが鳴り響く中、KAZUOMI(Gt.)が

 

「ここにいる全員、音で殺す。音で、ぶち殺す」

 

とけしかけると、「零戦SOUNDSYSTEM」へ。一音一音が、この会場で、この時間にならされるべき説得力を持っていた。

 

「京都のバンドは10-FEETだけちゃうぞ!俺らを忘れんな!」

 

というN∀OKIの言葉からは、京都出身のバンドとして源氏ノ舞台に立てる喜び、しかしだからと言って負ける気はサラサラ無い、という対抗心の両方を内包していた。

 

先週のDPFでも感じたことだが、アーティスト主催フェスだからといって、どのアーティストもただ主催者を持ち上げるためにライブをするような真似は絶対にしていない。ともすれば主催者に食って掛かろうという、貪欲な熱意を抱えている。今日のロットンは、特にその熱が前面に出たライブだった。

 

「一人残らずかかってこい!」

 

と始まった「THIS WORLD」ではKAZUOMIがギターを放棄して客席に突っ込んでいく一幕も。グラウンドではもちろん、ステージ上でも限界突破のパフォーマンスが繰り広げられていく。いったいどこまで突き抜けるのか。

 

彼らが何故ここまで本気で、命を燃やさんとする勢いでライブをするのか。その理由が少しわかった気がしたのが次のMCだった。

 

「俺たちも気づけば1999年にデビューして、たくさんの屍を越えて、20年目を迎えました。後ろに道はないから、これからも前に進んでいきます」

 

屍を越えて、とは、おそらく近いところで言えば松原裕氏のことだろう。氏も大好きだったという最後の「「70㎝四方の窓辺」」は、涙なしでは見れなかった。

 

彼らは人生の短さを知っている。知っているというよりは、この20年で思い知った、という表現の方が正しいだろうか。そんな彼らでないと歌えない歌が、太陽が丘を包み込み、ロットンの2年ぶりのステージは幕を下ろした。雨は知らぬ間にどこかへいったようだ。

 

 

 

10-FEET〈源氏ノ舞台〉

 

色とりどりのタオルが会場を埋め尽くす中、開口一番に

 

「ありがとう」

 

と呟いたTAKUMA(Vo,Gt)。

 

「行くぞー!行くぞー!!行くぞー!!!」

 

とたっぷり溜めてから「蜃気楼」へ。DPFの時はダイブしたり聴き入ったりと三者三様の聴き方をしていたが、今日はダイバーが少ないように感じる。みんな、この会場で彼らの歌が聴ける日を心待ちにしていたのだろう。

 

続く「VIBES BY VIBES」でスイッチが入ると、NAOKI(Ba.)は踊るようにステージを舞い、KOUICHI(Dr.)の刻むビートにも熱が入る。フェスでは珍しい選曲に歓声が上がった「LITTLE MORE THAN BEFORE」では死ぬのが怖い、と弱さを隠さない。こうした一糸纏わぬ感情を曝け出すのが彼らのスタンスだ。

 

「時間がない時のRIVER」をサクッと決めると、

 

「友達呼んでいいですか!?」

 

スカパラホーン隊を招き入れ、「hammer ska」を披露。スリーピースでも十分なほど重厚なサウンドにホーンセクションが追い打ちをかけ、さらに武装強化されたサウンドが鳴り響く。

 

会場内のポカリスエットブースでもたくさん流れていた新曲「ハローフィクサー」を経て「1sec.」で後半戦へ差し掛かると(今日は中断とかはしなかった)、

 

「開催できて嬉しいです」

 

とTAKUMAは安堵の表情を見せる。続いて

 

「忙しい人らばっかやのに、スケジュール空けといてくれてほんまにありがとう」

 

と去年の出演者全員に感謝を告げた。日程こそ違えど、去年出る予定だったアーティストほぼ全員が今年も続投してくれたことで実現した4日間開催。これもひとえに彼らの人柄あってこそだ。

 

「今日ばっかりは、今まで一番、大人げも、恥ずかしさも、プライドも捨ててやる」

 

と叫び、「その向こうへ」へ。続いて呼び出したのはROTTENGRAFFTYのNOBUYAとN∀OKIだ。京都×京都のバイブスがバッチリ交錯したところで、本編ラストは「ヒトリセカイ」が届けられた。

 

アンコールではKOUICHI

 

「この感じ、久しぶりやわ」

 

の言葉で、そういえばこの場所でアンコールを行うのも2年ぶりなのか、と気づく。「SHOES」「RIVER」では京都大作戦ではお馴染のドクター長谷川のトランペットが加わり、さらにカラフルなサウンドが届けられた。

 

「2年前を思い出すあの曲を」

 

の振りから最後にドロップされたのは「DO YOU LIKE…?」。2年前のライブで1曲目に届けられていた曲だった。先週のDPFでTAKUMAは、

 

「忘れたくて仕方がないことを、ええ感じの気持ちで今日は思い出してみようかなって気持ちにさせてくれるのも、音楽のええところや」

 

と語っていた。この曲で、2年前のあの日を思い出して、「そんなこともあったな」って笑い合えたら、それもまたいいな、と思った。

 

全体を通して、DPFと似たようなセットリストだったが、不思議なことにこの会場で聴くとこんなに一曲一曲が胸に刺さるのか、と感慨深くなった。それだけ10-FEETはこの場所にかける思いが段違いだし、そんな彼らから放たれる音も言葉にしがたい厚みを持って鳴らされていたのだな、と改めて気づかされた。これが主催者の底力だ。

 

 

 

これにて初日は終幕。源氏ノ舞台はまだぬかるみが残っていたものの、結局雨はほとんど降らず、それどころか昼間はかなり暑かった。おかげで日焼け対策を怠っていて顔がヒリヒリするのだが、何はともあれ、本当に晴れてよかった。

 

あと、噂には聞いていたが、本当にゴミが落ちていなかった。落ちていても、みんな拾って所定の場所へ捨てに行っていた。今更言うまでもないが、お客さんと10-FEETとの信頼関係があるからこそ、このような景色が生まれているのだろう。

 

心残りだったのは、源氏と牛若が意外と離れていたこともあってあまり牛若に足を運べなかったこと。それと鞍馬の間にも行けなかった。次はぜひ足を運んでみたい。

 

何よりも、どのバンドからも、10-FEETへの愛をひしひしと感じたことが素敵だった。去年の悔しさを晴らすかの如く(去年呼ばれてないバンドもいたが)、どのアーティストも気合が入っていたし、その強い思いは我々にもきっと届いたはずだ。

また一つ、帰ってきたい場所が増えた一日だった。来年も、太陽が昇るあの場所で。