SPACE SHOWER TV 30th ANNIVERSARY SWEET LOVE SHOWER 2019 DAY1 @山中湖交流プラザきらら 2019/8/30

スペースシャワーTVが夏の終わりに主催する一大イベント、SWEET LOVE SHOWER。今年も8月と9月を挟んで3日間開催される。
このイベント自体は2013年からその存在を知っていたのだが、何だかんだでずっと行けず、昨年ようやく1日だけ参加することができた。もちろん去年がめちゃくちゃ楽しかったから、今年は3日間全てに参加することを早々に決めていた。おそらく3日間も参加できるのは今年が最後かもしれないので、誰よりも満喫してやろうと望んだつもりだ。

同じぐらいの日付に、関西では毎年RUSH BALLが開催されている。何人かから「ラシュボには行かないのか」と問われたが、自分はスペシャが大好きだし、テレビでずっと見ていて憧れの場所だった山中湖が、去年参加したことでさらに大切な場所になったから、今年も夜行バスで向かうことにした。
初日は湖が近づくにつれて雨が増していき、会場に到着した頃にはかなりの雨量。足下もだいぶぬかるんでいて、巨大な水溜まりがあちこちに現れているというかなり厳しいコンディションでの幕開けとなったが、LAKESIDEでのライブが始まると完全に雨は止んでくれた。


ヤバイTシャツ屋さん(LAKESIDE STAGE)

3年連続3度目の出演となったヤバイTシャツ屋さん。今年は多くのフェスでメインステージを任されるようになった彼らだが、ラブシャでもステージを一つずつ着実にステップアップしていき、ついにLAKESIDEに辿り着いた。しかし本人らはリハでは

二度寝すな!」

とCMのセリフを連呼するなど、やっぱりいつも通りのユルさ。

お馴染みの脱力感あるSEに乗せて元気よくメンバーが登場すると、「かわE」で勢いよくライブをスタート。

「一緒に歌おうぜー!」

と朝から大合唱を起こす。ハードな「Tank-top Festival 2019」に続けると、「無線LANばり便利」へ。フェスという場で

「家 帰りたい Wi-Fiあるし」

と大声で叫んでいるのは冷静に考えるとへんてこな空気だが、それが彼ららしくて何度見ても面白い。
初出演時からずっとやってきている「Tank-top of the world」では

「声が小さーい!」

と容赦なく客席を煽り、返ってくるコール&レスポンスを満足そうに受け止めていた。

出番前まで雨が降っていたことで、母から「伝説作ろうな」と謎のLINEが来ていたことを打ち明けたこやまたくや(Vo,Gt)は

「雨降ったとき用のMC用意してたのに」

とぼやきながらも、

「雨降ってなくても伝説作れますか!」

と盛大に煽る。学生時代からずっと見てきたテレビの主催するフェスに出れることは、嬉しいなんて言葉ではいい表せれないだろう。

そんなスペシャとの末永い癒着を願うように「癒着☆NIGHT」を歌うと、「Universal Serial Bus」では音源よりも緩急をつけまくって会場を熱狂させる。心なしかしばたありぼぼ(Ba,Vo)はいつもより笑顔に見えるし、もりもりもと(Dr)はカメラ目線で笑顔を見せる余裕もあるようだ。

「こっからの曲、キラーチューンしかないんですけどー!」

と「ハッピーウェディング前ソング」でラストスパートに突入すると、

「雨やのにこんな朝早くから集まってアホやなー!この曲でもっと偏差値下げようぜー!」

と「ヤバみ」を投下。彼らはまだデビューしてから3年も経っていないが、様々な先輩バンドとの対バンや、憧れの場所での大舞台を経て、最近のライブはもう若手とは言わせない貫禄すら感じさせている。本当に頼もしい存在だ。

ラストは去年と同様、

スペースシャワーTV、2016年11月のパワープッシュソング」

と強調して「あつまれ!パーティーピーポー」で今日のために平日ちゃんと働いてきたパリピ達を踊らせる。一番大きなステージから見える絶景を噛み締めるように演奏し、最後は大ジャンプしてフィニッシュ。ラブシャの幕開けを盛大に飾ってくれた。

今年は令和になって初のラブシャ。別に元号が変わったからどうということはないが、これから先、彼らはLAKESIDEでたくさんの思い出を作っていってくれる。そんな期待をせずにはいられない。


・teto(FOREST STAGE)

去年9月に「溶けた銃口」がパワープッシュに選ばれ、今年は列伝ツアーにも帯同したtetoがラブシャに初出演。開始前からFORESTステージにはただならぬ気配が漂っており、その空気のなかで4人が飛び出すように登場。

「おはよう!」

と一言挨拶すると、さっそく「高層ビルと人工衛星」を投下。緩急とかペース配分とか一切考えていない、本能剥き出しのライブが彼らの真骨頂だ。最初こそ小池貞利(Vo,Gt)がステージから出なかったので、今日は客席には行かないのかな、と思っていたが、

「一度耳にした音楽はあなたのものですからね!」

と始まった「拝啓」ではギターをかなぐり捨て、サイドの鉄骨から客席にダイブ。初めて彼らのライブを見ると思われる人達がかなり驚いていたが、やっぱりtetoはこうでなくっちゃ。

続く「暖かい都会から」は歌い出しから歓声が上がり、客席のテンションゲージも振り切っていく。覚醒した小池は飲みかけのペットボトルをぶっ飛ばしていた。

「この夏いいことがあった」

と語り始めた小池は、父がアルコール中毒で、もう自分の息子の名前を思い出せない状態であると告白。しかしそんな親父さんは、tetoのCDを聴くと「サダくんの曲は本当に良いね」と名前を思い出してくれるそうだ。

「音楽には力があるってよく言うけど、音楽の力は人間の力だと思ってます」

と語り終えた彼はアコギを背負い、

「音楽を聴いてるときは強がりも弱がりもしなくていいんですよ」

と「光るまち」を歌い始める。激しいだけではなく、こんなロマンチックなメロディも歌えるのも、彼らの魅力の一つだ。tetoの4人にとってはどこが光るまちなんだろう。今tetoを見ている人達にとっての光るまちはどこなんだろう。自分にとっての光るまちはどこなんだろう。つい、そう思いを馳せたくなる。

しかしやっぱりtetoに大人しくしろと言うのは無理みたいで、再び客席に飛び込んで帰ってきた小池は身体の左半分が泥だらけになっていた。かっこいい服や態度で着飾るロックスターもカッコいいだろうけど、泥だらけで熱唱するロックスターだって悪くないじゃない。

最後は9月を目前に控えて聴く「9月になること」で夏の終わりを実感させて、初出演のラブシャを終えたteto。緻密な計算の上では絶対に起こり得ない、リアルタイムだからこそ起こるカタルシスが、このバンドにはたくさん秘められている。だから彼らのライブは圧倒的にロックだ。大きなステージよりも、今日のFORESTステージとかの方が似合うんじゃないか、と思えたので、できればまたFORESTで彼らを見たい。


・TRIPLE AXE(LAKESIDE STAGE)

SiM、coldrain、HEY-SMITHの3バンドが合同で毎年ツアーを行っている、ラウドファンにはお馴染みのTRIPLE AXE。まるで高級ホテルのフルコース料理のような豪華絢爛な面子が、今年は3バンド合同の名義で各地フェスを席巻している。毎年個々でラブシャのステージに立っていた彼らだが、今年はこのTRIPLE AXE名義で参戦。coldrainとHEY-SMITHは実質初のLAKESIDEだ。

ドラムセットが3つ並んでいる、ということ以外は前情報を一切遮断して望んだ彼らのライブ、まずはHEY-SMITHが登場して「Dandadan」を演奏。それが終わるとお馴染みのイントロが流れ出し、実に滑らかな動きでSiMにバトンが渡される。「KiLLiNG ME」の間奏でいつものように客席を座らせたところで、今度はcoldrainが登場。「KiLLiNG ME」を中断して「ENVY」に突入する。まるでメドレーを聴いているかのようなスムーズな転換は、この3バンドが強固な信頼関係で結ばれているからこそ成せる所業だ。

続いてまたSiMが登場。「新曲やってもいいかー!」と本邦初公開の「Baseball Bat」を披露。元々彼らが持ち合わせていたパンク・レゲエ的要素がスタジアム級に昇華されたような、メインステージに似合うスケール感のある曲だ。MAH(Vo)は「TRIPLE AXE」の文字が入った真っ黒なバットを掲げ、会場には黒いボールがつぎ込まれる。

代わりばんこで曲を演奏していくのかと思いきや、「Baseball Bat」以降は3バンド全員がオンステージし、それぞれのボーカリストがコーラスに回ったり、「TRIPLE AXE」の紋章が刻まれた旗を振りかざしたり…とお祭り騒ぎ状態なステージから目が離せない。

ラブシャを乗っ取りにきたぜー!」

と高らかに宣言すると、「Radio」ではTask-n(HEY-SMITH Dr)→Katsuma(coldrain Dr)→GODRi(SiM Dr)の鮮やかなソロプレイがリレーされ、「The Revelation」「GUNSHOTS」ではヘイスミのホーン隊がそれぞれのサウンドに華を添える。豪華、という言葉以外浮かんでこない。

しかしここで人の移動が激しくなったため、早めにFORESTへ移動することを決断。できれば最後まで見たかったし、メンバーが言っていたように、こんなの二度と見られない夢の共演だ。


・ハルカミライ(FOREST STAGE)

今年は各地フェスでそのライブバンドとしてのポテンシャルの高さを存分に発揮してきたハルカミライ。その恐ろしさは先輩バンドのお墨付きだ。
定刻になると、既に楽器隊は位置についており、シングルが鳴る間に橋本学(Vo)が堂々と参上。「君にしか」から「カントリーロード」と繋ぐ流れは恒例だが、今日は一段と客席の熱量も高いらしく、いつものように客席に降り立った橋本が

「触るな!離れろ!」

と制するほど。関大地(Gt)はいつの間にかFORESTのステージ横にある鉄骨に登り、誰が見ても危ない状況でギターソロを弾いている。おそらく彼らのライブを初めて見るであろう人達は驚きの声を上げていたが、これこそがハルカミライのライブがヤバいという証明だ。小松謙太(Dr)は上方向の矢印がプリントされたTシャツを着ていたが、「俺を見ろ!」とでもアピールしていたのだろうか。

間髪入れずに「ファイト!!」をぶっ放つと、「俺達が呼んでいる」では須藤俊(Ba)がベースを弾くのを放棄。橋本は客席に吸い込まれてどこにいるのかわからない。

「春のテーマ」では橋本が

「この客席のヤバさを伝えたい」

と泥の中へ突撃。さっきのtetoほどではなかったが、泥を浴びた状態でステージに戻ると、

「最悪だけどサイコーだぜー!」

と高らかに叫んでいた。

「夏だけど春の歌を」と始まった「それいけステアーズ」では伸びやかな歌声が森の中に響き渡る。隣にいた人が「叫んでも普通に歌ってもヤバい」と賞していたが、まさにその通りだ。やっぱり彼らの曲はメロディがいいし、一見するとめちゃくちゃなパフォーマンスをしているようでそのメロディは崩されていない。その歌声に惹かれて、ROTTENGRAFFTYの裏ではあるが人がどんどん集まってきていた。

ショートチューン「Tough to be a Hugh」を届けると、橋本は客席の中から一人の男性を引っ張り出してくる。

「知らなくてもいいから」

と肩を組んで「世界を終わらせて」を歌い出すと、男性は歌詞がわからないのか、その場で突然踊り出す。それを見た橋本は爆笑しながら

「そこでしばらく踊ってて」

と放置して再び客席へ。男性にも盛大な拍手が送られ、ピースフルな空間が広がった。

「ここに集まったみんな、スタッフも合わせてみんな、一等賞だぜー!」

と両手を広げると最後は「見つけてくれてありがとう」と感謝を込めて「アストロビスタ」を熱く、丁寧に届けた。

DPFでも自らを「スーパー晴れバンド」と称して雨を止ませた彼らだが、今日もこの後雨は一切降らなかった。彼らの晴れバンドっぷりは嘘ではないようだ。やっぱり今日も、ハルカミライが一等賞だった。


04 Limited Sazabys(LAKESIDE STAGE)

今やスペシャファミリーの一員としてお馴染みとなった04 Limited Sazabysラブシャには5年連続での出演だ。
否応なくテンションを上げられるSEに乗せて4人が颯爽と登場すると、この日の一曲目に選ばれたのは「Feel」。未だに夢を見続ける、バンドの野心が溢れる一曲が先頭に配置されたのは少し驚いたが、彼らにとってスペシャはたくさんの夢を叶えて、支えてくれた頼れる居場所で、彼らにとって起点となる存在だからこそ選ばれた曲なのかもしれない。休む間もなく

「楽しみたい人手を挙げてー」

とゴキゲンな「Kitchen」でラブシャを躍らせると、「swim」ではサークルモッシュの人達も我を忘れて泥に身体を突っ込んで泳ぎまくっていた。

「あそこ、晴れてきたね」

とGEN(Vo,Ba)はMCで雲間から太陽が現れている様を指差して喜ぶ。紛れもなく、フォーリミの放つ光がこじ開けた穴だ。

「未来から、あの日の自分へのメッセージ」

と「message」を撃ち放つと、「fiction」が昼下がりの会場を更に狂乱させる。「Galapagos」の間奏では、GENが会場に着いて早々に番組用のロケをさせられたことに文句を垂らす。しかし最後には

スペシャ大好きです」

ツンデレっぷりを見せて締め括った。フォーリミとスペシャのラブラブっぷりをまざまざと見せつけるような一幕だったし、その愛に嘘はないことはGENの口振りを見れば明らかだ。

続いてハードな「Alien」と続けたように、やはり今年の夏は「SOIL」の鍛え上げられたゴツい楽曲達がフォーリミを更に武装強化していた。今日は3日間の中でも特にラウドな面子が集まり、バンドの「直属の先輩も後輩も来てる」という日。今も彼らを突き動かしているのは、猛者が集うシーンの中でも「負けたくない」という負けん気だ。

「どうせみんな日頃考えすぎてるんでしょ!?考えすぎて先回りして勝手に落ち込んだりしてるんでしょ!?でも今日はそんなことしなくていい。何者にもならなくていい」

と、「Squall」で雨の代わりに我々の心を洗い流すと、最後に気合いたっぷりの「monolith」をお見舞いする。しかし尚も彼らは飽き足りず、

「俺達が04 Limited Sazabysです!覚えた?心配だなあー」

とオマケに「Remember」を放ってステージを去った。こんなにすごいライブをされたら覚えるに決まってるじゃないか。
最早このフェスに、いやスペシャにとってもフォーリミは欠かせない存在となっている。これからも、たくさんいい景色を見せてくれると信じている。


きゃりーぱみゅぱみゅ(Mt.Fuji STAGE)

時間ができたので、本当は見に行く予定ではなかったきゃりーぱみゅぱみゅへ。この日のラインナップの中ではダントツにポップな存在感を放つ彼女を一目見ようと、様々なTシャツを着た人たちが集まっている。その中には今年のコラボメニューの一つであるペットボトル型のタピオカドリンク、通称きゃりーたぴたぴをぶら下げている人も。

開演時間を迎え、重低音のビートが鳴り出すと、仮面を被った4人のバックダンサーに続いてきゃりーがオンステージ。さっそく客席からは「かわいいー」と声が上がる。
原宿系のド派手なファッションというイメージの強い彼女だが、今日の衣装は上下ともにブラック。しかしゴシックな感じはあまりなく、落ち着いた雰囲気が今の彼女の等身大の姿を映している。

客席が見よう見まねで振り付けを真似した「インベーダーインベーダー」で幕を開けると、「CANDY CANDY」へ。しかし音源と全く違うバキバキのEDMには、中田ヤスタカの今のトレンドが反映されている。

ダンサーと肩を組んで「右!右!左!左!」と反復横跳びを繰り返したきゃりーは

「疲れた…」

と少々息を切らしていたが、毎年ラブシャに出演しているだけあって客席は温かい拍手で迎えた。

「もうすぐ夏が終わりますね。夏が終わったら何がありますか?ハロウィンがありますよね!」

と「Crazy Party Night~ぱんぷきんの逆襲~」で一足早く秋の空気を持ってくると、続く「キズナミ」でも最新型のEDMでMt.Fujiを踊らせる。

続いて「演歌ナトリウム」に入る前にきゃりーは2つの振り付けを紹介したが、「イントロでやる」と言っていた振り付けは実はイントロではなく間奏の振り付けだったので、素直にイントロでポージングをしたお客さんは拍子抜け。それでも笑ってやり過ごしていたのは、この会場の空気や彼女の放つ雰囲気が我々の心を広くしてくれているから。

「音ノ国」と続けた後は、

「みんなで盛り上がれる曲を持ってきました!」

と「原宿いやほい」で終演。SNSなどでもよく用いられているからか、彼女の今日のセトリの中でもかなりお客さんに浸透していたように感じたし、みんなで一緒にいやほいするのはかなり楽しかった。

その独特の歌詞や振り付けや雰囲気から、初めて見る人は彼女のライブに「なんだこれ」と思うかもしれない。でもたしか、彼女のアルバムの中に「なんだこれくしょん」というアルバムがあったはずなので、もしやお客さんに「なんだこれ。よくわからない。でも楽しい」と思わせるのが彼女の狙いだったのではないか。と考えると、彼女が今もしばしば色んなフェスに呼ばれる理由が少しわかった気がした。…なんだこれ。
一挙一動に「かわいいー」と言われていたので、この殺伐とした面子の中で、彼女の存在は多くの人の癒しとなったのではないだろうか。


SUPER BEAVER

ライブ直前に藤原“31才”広明(Dr.)の欠席が発表されたSUPER BEAVER。去年に引き続きMt.Fujiに登場した。
サポートには河村吉宏(実はあの日本を代表するドラマー・カースケ氏の息子。よく見ると演奏しているときの姿勢とか手癖がすごく似ている)を迎え、最近のライブでよく先頭に配置されている「27」で静かに幕を開けると、

SUPER BEAVERです、よろしく」

と短く挨拶。最後のサビでは彼らの熱が一気に爆発し、序盤ながらクライマックスのような展開に持ち込んでいく。

「逆境、悪天候、かかってこいよ。レペゼンジャパニーズポップバンドフロム東京ジャパン、SUPER BEAVER始めます」

と息巻き、

「起きてんのか!」

と「閃光」へ。藤原のいないライブも、きっとあっという間に終わってしまうんだろう。

思い返せば、SUPER BEAVERは一度メジャーに行ったものの、歯車が噛み合わずにインディーズに戻り、そこから近道をせず地道に這い上がってきたバンドだ。数えきれないほどの逆境を乗り越えてきたバンドの結束は簡単には崩れない。急遽決まったサポートであったので、河村の刻むビートはまだ3人と馴染めていない感覚があったが、それもすぐ解消されるだろう。

「藤原がいないなりのライブをやろうと思ってます。3人だけでも何とかしてやるよ」

と尚も強気で「予感」へ。最新曲だが、これから先もずっと彼らのセトリを飾り続けてくれそうな力強さを持った一曲だ。彼らが正解の道を選ぶのではなく、選んだ道を正解にし続けて進んできたように、自分もこの時間に、自分の感性でSUPER BEAVERを選んだことを正解だったと思えた。

日暮れ前の山中湖に手拍子を生んだ「青い春」から、

「束になってかかってくるんじゃねえ、お前一人でかかってこい!」

と「秘密」へ。するとここまでずっと曇っていた空から、太陽の光が差し込んできた。後のMCで渋谷龍太(Vo)は

「自分たちのせいじゃない」

と述べていたが、間違いなくこの光は「SUPER BEAVERとあなた」が生み出したものだった。思わず息が詰まりそうになった。

最後は彼らの実直な姿が赤裸々に歌詞にも表れている「人として」。

「笑われたときが、後ろ指指されたときが勝負です」

と渋谷は言っていた。その勝負に勝ち続けてきたことで、このステージに立っている彼らの言葉に、涙を流している人がスクリーンに映し出された。彼らの言葉が綺麗事ではないことは明白だった。来年は是非ともLAKESIDEで。


THE ORAL CIGARETTES(LAKESIDE STAGE)

おそらく今、日本で最もライブパフォーマンスが素晴らしいバンドである(異論は認める)と思っているTHE ORAL CIGARETTESラブシャに初出演した当時はオープニングアクトで、まだインディーズにいた頃だったが、7年連続の出演を経てメキメキと進化を遂げていき、今年もトリ前の45分を任された。

お馴染みの「一本打って!」がテンプレートのアナウンスになっていたことを少し寂しく思っていたところで、一足先に中西雅哉(Dr)が登場。SEに乗せて重厚なドラムを叩き始めると、鈴木重信(Gt)、あきらかにあきら(Ba)、山中拓也(Vo,Gt)が登場。最近のオーラルはかなりアーティスティックな服装でライブに臨むことが多かった気がしていたが、今日は割とラフめな服装。鈴木はよく見ると革ジャンを着ている。

ライブはヘビーな「PSYCHOPATH」からスタート。よく聴くとそれほどポップでもなく、人懐っこさの欠片もないほどのダークな曲だが、こんなに大勢の人たちに受け入れられているのはひとえに彼らのカリスマ性あってのものだろう。続いて早くも「狂乱Hey Kids!!」「カンタンナコト」のキラーチューン祭りで会場のタガを外していく。

前日から山中湖で家族と過ごしていたというあきらかにあきら(Ba)は、山中に

「親父さんと晩酌したん?」

と訊かれる。そのまま山中の家族の話に移り、彼が親元を離れてから数年ぶりに父親と酒を呑んだというエピソードを語る。

「やっぱり親父は偉大です。みんなも帰ったら親父と晩酌してください。あきらの親父に向けて歌います」

とタンバリンを携えて「ワガママで誤魔化さないで」へ。「自由に楽しめ」というメッセージを常に発信し続けているオーラルには珍しく、サビでは会場に手を振ることを求める。この曲が今後オーラルにとってどんなポジションを担う曲になるのか、まだまだ未知数だ。

「久しぶりにやる曲やります!」

と「What You Want」で会場を揺らすと、アコギを抱えた山中が歌いだしたのは「透明な雨宿り」。今日の天気を考慮してセトリに入ったのだろうが、空はどんよりとした雨雲が徐々に消え、陽は射さずとも赤い色を映していた。

去年のステージでも「エンドロール」をやっていたように、普通ならフェスのセトリに中々組み込まれないであろう曲をこうしてラブシャで披露しているのは、自他ともにこの会場を「ホーム」と認めているからだ(もしくは最近リリースしたベストアルバムにこんな曲も入っているよとアピールしていたのか)。そう考えると、今日のラフな服装も、ホーム感を意識したものだったのだろうか。

「容姿端麗な嘘」の同期音からラストスパートに突入すると、最後は「BLACK MEMORY」。もうどうなったっていい、とオーディエンスも全身全霊でオーラルとぶつかる。このバチバチな、音楽を武器として両者が闘っている景色こそ、オーラルが積み上げてきたものだ。今日もやはり貫禄あふれるステージだったし、こんなにいいライブを見せられたら大阪での野外ワンマンも期待せずにはいられない。


SHISHAMO(Mt.Fuji STAGE)

昨年は自身が夏に大規模ワンマンを控えていたからか、夏フェスへの露出が少なかったSHISHAMOラブシャには2年ぶりに登場する。

フェスでは朝や昼のイメージがある彼女らだが、今回はMt.Fujiのトリ。定刻になると、ラブシャの公式Tシャツを着た吉川美冴貴(Dr.)、ビッグサイズのTシャツを着た松岡彩(Ba)、アロハシャツを着ている宮崎朝子(Vo,Gt)が登場。さっそく「君と夏フェス」 で会場を沸かせると、「恋する」へ繋ぎ、会場を引き込んでいく。DPF同様、スクリーンに手描きのイラストが写し出される「タオル」では、イラストの3人が着ているシャツもラブシャ仕様だ。

夜の時間帯に出演するのが珍しいと思っていたら、

「こういうフェスでトリをやるのは初めて」

と話した宮崎。

「今までは出番終わってからフェスを楽しんでたけど…トリをもらえて嬉しいです」

と意気込むと、「新曲やります。カップリングの方だけど」と「君の大事にしてるもの」を披露。エレキピアノの音が歌詞と合わさってドライな空気を生み出す、SHISHAMOの新たな引き出しを見せる曲だった。

アコギを抱えて歌い出したのは、数ある彼女らの夏の曲の中でも屈指の名曲「夏の恋人」。

「いつまでもここにいたいけど ねえ、だめなんでしょう?」

という歌詞はこの場にいる全員の気持ちを代弁しているようで、 夏の終わり、かつ一日の終わりというこのシチュエーションで聴くにはあまりにも切なくて胸が苦しくなる。だけど、

「あなたも私もきっと このままじゃどこにもいけないから」

と歌うように、それぞれの日常があるから、いつまでも山中湖に居座っているわけにはいかない。だけど、だからこそ毎年、ここに帰ってきたくなるんだろう、そう思えた。

そんな感傷的な空気をイントロから吹き飛ばしたのは「明日も」。スクリーンには歌詞が写し出されるが、みんなスクリーンを見ずともこの曲を口ずさんでいる。紛れもなくSHISHAMOがみんなにとってのヒロインになっていることを証明する一曲だ。今日一日、たくさんの好きなバンドに会えたが、

「週末は僕のヒーローに会いに行く」

と歌うように、明日明後日も、たくさんのヒーローが山中湖にやって来る。

最後はコール&レスポンスが一段と大きく聴こえた「OH!」。この3日間が終われば、また日常が戻ってくる。だけどいつだって、SHISHAMOがイヤホンの中から背中を押してくれる。サビ終わりにニッコリと笑った宮崎を見ると、トリに選ばれたのも納得の頼もしさを感じた。


サカナクション(LAKESIDE STAGE)

初日のトリはやっぱりサカナクション。今やどんなフェスに出ても「サカナクションはトリだろ」と思われるようになったし、それはラブシャも同様だ。

浮遊感のあるSEからメンバーがゆったり登場すると、山口一郎(Vo,Gt)はメンバーの方を向き、指揮者のようにサウンドを操る。やがて耳馴染みのあるイントロが山中湖を駆け抜け、「アルクアラウンド」へ突入すると、会場が一瞬にしてダンスフロアへ変貌した。10時間以上続いた一日の最後なのに、誰もが疲れを忘れて踊りまくっている。

「陽炎」では再びイントロから歓声が上がり、会場の熱は止まるところを知らない。そこから80年代のサウンドが映える彼らの新たなキラーチューン「モス」へ突入する。もはや誰にもこの空間を邪魔することはできない。

ぽつり、

「きっと、忘れられない夜になる」

と呟くと、MVの冒頭が流れて「忘れられないの」が始まる。ここまで見れば明確だが、今日のセトリは最新アルバムの曲がふんだんに盛り込まれている。CDのリリース期間が長いバンドはどうしてもセトリが固定されがちだし、サカナクションもその例に漏れなかった。しかしこうして「モス」「忘れられないの」といった新たなキラーチューンを身に付けたことで、今の彼らからは繭を割って飛び出してきたかのような力強さとフレッシュさを感じる。

ここまで右肩上がりに会場の熱を上げてきたが、「ワンダーランド」でその勢いはいったん落ち着きを見せる。すると音楽は地続きのまま会場が暗転し、5人が横並びでPCの前に立つ「ミュージック」が始まる。ラストのサビ前でも再び暗転し、バンドセットに戻るのは定番の流れだが、何度見ても心を高ぶらせるのが彼らのライブだ。

尚も「アイデンティティ」でボルテージを引き上げると、

「アンコールの時間をもらっているのですが、ハケるのが時間の無駄なのでこのままやります!」

と最後に「新宝島」を投下。再び80年代のサウンドで会場を一つにすると、完全無欠の流れで初日を鮮やかに締め括った。


一部のバンドは雨を考慮したセトリを組んでいたようだったが、本当に雨が降らなくてよかった。足場の泥濘こそ酷かったものの、結果的にあまり暑くならず、どちらかといえば過ごしやすい気候だった。富士山は見えなかったけど、山中湖の涼しい空気はたくさん感じることができた。
忘れられない一日になった。また明日。