SPACE SHOWER TV 30th ANNIVERSARY SWEET LOVE SHOWER 2019 DAY2 @山中湖交流プラザきらら 2019/8/31

2日目。ホテルから移動中には雨がちらつく時もあったが、会場に着いた頃には昨日と同じような曇り模様になり、日中は太陽が射し込んできた。一日中曇りを予想していたので、日焼け対策をしないという痛恨のミスを犯したけど、まあ何とかなるだろう。

 

 

・ズーカラデル(FOREST STAGE)

 

この日はオープニングアクトからスタート。北海道からじわじわとその人気を広げていっているスリーピースバンド、ズーカラデルが初出演だ。

牧歌的なSEに乗せて3人が現れると、「漂流劇団」からライブが始まる。味のある吉田崇展(Vo,Gt)のボーカルと中性的なバンドサウンドは、朝の空気が非常によく似合う。山岸りょう(Dr)のドラムも音源通りの乾いた抜けのいい音で、聴き心地がとてもよい。

 

続いてパワープッシュにも選ばれた「イエス」でピースフルなシンガロングを響かせると、FORESTステージには昨日はあまりいなかったトンボがたくさん集まってきた。まるで北海道の空気がそのまま山中湖に持ち込まれてきたような一幕だった。

 

「ポカリおいしい!」とやたらポカリスエットをアピールしていた吉田は、

 

「今日集まってくれたみなさんと特別な…特別な何かを築けたら」

 

と「友達のうた」へ続ける。じっくりと寝起きの身体に染み込ませるように「前夜」を演奏すると、彼らの代表曲である「アニー」で幕を降ろした。

 

今はまだ「アニー」の印象が強いバンドだが、先月パワープッシュされた「イエス」を聴いたとき、ズーカラデルは一発屋で終わるバンドではない、と確信した。これから先、「アニー」を超えるたくさんの名曲を生み出してくれるだろうし、週明けから始まる取るに足らない日々の中でも、今日出会えた彼らのことを何度も歌うだろう。何度も、何度も。

 

 

the telephones(Mt.Fuji STAGE)

 

活動休止以降、lovefilmやフレンズ、石毛輝(Vo,Gt)とノブ(Key)のクロージングDJなど、色んな形でラブシャと関わり続けてきたが、 バンドとしては実に5年ぶりに、「ディスコ!」の合言葉と共に帰ってきたthe telephones。ステージに着くと既にカウントダウンは終わっており、エレクトロなSEに合わせてメンバーが元気よくステージに現れる。

 

「朝から猿のように踊ろうぜー!」

 

と石毛が仰け反りながらギターソロを弾く「Monkey Discooooooo」を挨拶代わりに叩き込むと、「I Hate Discooooooo」で更に追い打ちをかける。曲名に反して「DISCO!DISCO!」と何度も叫んでいるから、ちっともディスコが嫌いには見えない。

 

ノブのハンドガンが冴え渡る「electric girl」を終えると、石毛は

 

「おはディスコ!」

 

と叫ぶものの、見事にスベってしまい

 

「今のは聞かなかったことにして」と笑いを誘う。

 

「昨日はクロージングDJをやって、今日の出番は朝イチ。鬼か。鬼がここにもいたのか」

 

と悪態をつくも、Mt.Fujiのトップバッターを務めるのは2008年に初出演した時と同じだと知り、

 

「粋なことしてくれるね!」

 

スペシャに感謝を告げていた。

 

「朝からこんな声聴きたくないのはわかってる。でも君らは選んでしまったんだから」

 

と朝から「ディスコ!」のコール&レスポンスを繰り返し、すっかり元気になった客席に投下された「urban DISCO」ではステージ上でひたすら暴れ狂っていたノブが客席に降り立つと、Mt.Fujiの右端へ向けて猛ダッシュ。そこから左端へ向けて、最前列のお客さんとハイタッチをし続けていく。かつてLAKESIDEでもそんなことをやっていたような気がするが、こういうのを見ると、ステージの大きさが変わってもロックバンドが大事にすることはそれほど変わらないのかもしれない、と思う。

 

最後は

 

スペシャに愛とディスコを!」

 

と「LOVE&DISCO」でフィニッシュ。どこかのフェスに出演した時、telephonesはもう集客が厳しい、といったことが言われていたが、今日のライブを見ると、何だ、全然そんなことないじゃん、と思えたし、山中湖で声高らかに「ディスコ!」と叫べることに、感慨深さを感じていた人もそう少なくはなかったはずだ。みんなこのバンドを待っていたのだ。

次に見るときは新曲も。

 

 

NICO Touches the Walls(LAKESIDE STAGE)

 

すっかり常連となったNICO Touches the Walls。telephonesやTHE BAWDIESなど同世代のバンドが多く出演するなか、今年もLAKESIDEで出演。今のシーンでの彼らの立ち位置を考えると、長年ファンである自分でも彼らが毎年ラブシャやロッキンのメインステージに立てているのが不思議なのだが、スペシャからLAKESIDEを任されるに相応しいと思われていると考えると嬉しくなる。

 

リハから「バイシクル」「天地ガエシ」「Mr.ECHO」と名曲を連発すると、

 

「晴れたじゃねえかこのやろー! 」

 

と「手をたたけ」で本編が始まる。光村龍哉(Vo,Gt)はビブラスラップを打ち鳴らすなど、初っぱなからご機嫌なスタートだ。太陽も少しずつ顔を出してきたが、今年も

 

「灼熱の山中湖ー!」のシャウトが響く「THE BUNGY」では

 

ポンコツの太陽 お願い今日は放っといてよ」

 

の歌詞に合わせて太陽が隠れるという一幕も。

 

定番の2曲で会場を沸かせると、古村大介(Gt)の爽やかなアルペジオに合わせて

 

「3秒間」

 

と光村が歌い出すと大歓声が。そのまま風に乗せるように「夏の大三角形」が届けられた。ここまでの3曲は原曲よりも若干テンポが抑えられ、じっくりと噛み締めるような演奏が展開される。これが今の彼らのモードなのだろう。

 

MCで光村は最新アルバム「QUIZMASTER」について触れ、

 

「挑戦の姿勢を示した。ずっと作ってみたかったアルバム」

 

と語る。そのアルバムからは「MIDNIGHT BLACK HOLE?」を披露した。アルバムを聴けばわかると思うが、今の彼らはトレンドに乗っかってもいないし勢いがあるわけでもない。アルバムもシングル曲もタイアップ曲も入っていないから話題性には乏しいし、フェスで盛り上がれる曲も少ない。だけど彼らの豊かな音楽への造詣がそこにはありったけ込められている。スペシャはそこをきちんと理解してくれているから、こうして毎年ラブシャに呼んでくれているのだろう。

 

さらに一段ギアを上げた「Broken Youth」では

 

「壊せない僕らの勝利」

 

の歌詞に合わせて光村は拳を掲げていた。みんなが知ってる曲も最新アルバムの曲もひっくるめて強靭なグルーヴで表現して見せた、今日の彼らの心情が窺えるハイライトだった。

ラストはアコギに持ち変えて「18?」へ。

 

「何度も夢を見るよ 諦めらんないんだ」

 

という歌詞は、先述した「挑戦の姿勢」という言葉と合致する。これだけ多くの引き出しを持っていながら、未だに自分たち自身に秘められた可能性を模索している、そんなバンドのスタンスには敬服してしまう。

 

ライブ終了後、20代ぐらいのお客さんがNICOのことを「懐かしい」と言っていた。たしかに今のシーンの流れから考えると、彼らはそう言われる存在なのかもしれない。だけどQUIZMASTERを聴けば、彼らはまだまだ「懐かしい」と言われるには早いバンドであることがわかるはずだ。これからもずっと、このステージでNICOを見続けたい。

 

 

・Hump Back(FOREST STAGE)

 

今年の列伝ツアーでも熱演を繰り広げたHump Back。何度もライブを見てきているが、フェスで彼女らを見るのは初めてだ。FORESTに着くと既に林萌々子(Vo,Gt)が

 

「ああ もう泣かないで」

 

と歌い出しており、だんだんと集まってくる人の足が早くなっていく。

 

「大阪からHump Backが山梨にやって来たぞー!」

 

と「拝啓、少年よ」で幕開け。後方には手拍子している人の姿がちらほら見えたが、前方の人たちは一様に拳を掲げている。馬鹿みたいに空が綺麗だ。

 

「ライブハウスへようこそー!」

 

と「短編小説」へ繋げると、列伝の時と同様に林がギターソロで客席に飛び込んでいく。列伝を通してtetoに影響されたのだろうか。しかしライブハウスと違い、ステージと客席の距離がやや離れていたので、ダイブしたというよりはもたれかかりに行った感じだった。

 

「光がないなら自分が光ればいい。わたしはみんなの光になりたい!」

 

と叫んだ「クジラ」では、

 

「いっそのこと この空駆け抜けてさ」

 

と晴れ渡った山中湖の空に思いを馳せながら伸びやかな歌声を響かせていた。ぴか(Ba)はいつもより演奏が荒々しい気がする。

 

デビューが最近のことのように思われがちなバンドだが、2009年には既に結成されていたので、今年でバンドは10周年を迎えている。ずっとライブを繰り返し、ライブハウスで育ってきたバンドの心境が綴られた「僕らは今日も車の中」が届けられると、ギターを爪弾きながら林は昼時の空を見上げる。

 

「こんなに空が近かったら、手を伸ばしたら届くんじゃないかって思っちゃう」

 

と呟くと、始まったのは「月まで」。夜の雰囲気をまとっている曲だが、こうして青空の下で歌われるとライブハウスで聴くのとはまた違った、この曲の隠れた一面が垣間見えたようだった。

 

「夜を越え 朝迎え 君に会えたらそれでいいや」

 

という歌詞がラブシャに来ている自分と重なる「LILLY」が届けられると、最後は「星丘公園」。

 

「うちにはスーパードラマーがいるんで」

 

と美咲(Dr)を紹介しながら手拍子を制する姿はいつも通りだ。

 

常々、林は「みんなの青春になりたい」と口にしている。その姿は時にはとても重たくて投げ出せないものを背負って歩いているように見えて、いつか3人が押し潰されしてしまうのではないか、と不安になることもある。その反面、その言葉を心からを信じていて、彼女なら大丈夫なんじゃないか、と思う自分もいる。

 

夏フェスが終わったら、彼女らは半年以上に及ぶ長いツアーに出かける。僕らの夢や足は止まらないのだ。次はライブハウスで。

 

 

あいみょん(LAKESIDE STAGE)

 

ラブシャはタイムテーブルの都合上、トリのアーティストの時は会場にいる全員がLAKESIDEに集まれるようになっている。その景色は圧巻のものだし、トリを任されたアーティストに許された景色である。

 

しかしこの日、LAKESIDEの通路がほとんど塞がれてしまうほどの集客を見せたのはあいみょん。去年出演したFORESTから飛び級でメインステージに到達したのも納得だ。いや、もはや今の彼女にとってはLAKESIDEですらもキャパが足りない状態なのかも。

 

リハーサルで本人が登場したときから既に会場のテンションは最高潮で、あちこちからどよめきの声が上がっている。そんな中でマイペースにリハーサルを終えたあいみょんは、SEを使わずふらっとメインステージに現れた。

 

エレクトーンの穏やかなメロディが流れるなか、

 

あいみょんです、よろしくお願いします」

 

と挨拶すると、「愛を伝えたいだとか」からライブスタート。満員のLAKESIDEにゆったりとした空気を生み出すと、「君はロックを聴かない」では一音目から大歓声が。リリース当初はこんなにみんなが口ずさめる歌になるとは思っていなかった。

 

「やほー」

 

と肩の力が抜けた挨拶をすると、

 

「今日が夏フェス最後なんです」

 

とやや口惜しそうに告げる。彼女にとってこの夏はどんな夏だったのだろうか。

真昼の会場に「今夜このまま」が鳴らされると、「生きていたんだよな」ではピアノのワンフレーズで歓声が上がる。夏フェスの祝祭的な空気のなかでは異端な歌詞だが、やはり口ずさんでいる人がたくさんいる。空を見上げると鳥は飛んでいなかったが、トンボが一匹、彼女の歌に聞き入るように宙を舞っていた。

 

「今年も夏の曲ができました」

 

と「真夏の夜の匂いがする」では、妖艶な歌と爽やかなサビの両方を使い分け、彼女なりのポップセンスを見せつける。タイトル通り、夜の時間帯に聴きたい曲だ。

「貴方解剖純愛歌~死ね~」のストレートなロックサウンドで突き抜けると、

 

「大好きなお花の歌を歌います」

 

とラストはみんなが待ち望んでいた「マリーゴールド」。客席の手が揺れるなか、大切に歌い上げて彼女はまたふらっとステージを去っていった。

 

そういえばホテルから会場に来る間、花の都公園に百日草が咲いていた。これから「マリーゴールド」を聴く度に、その時一瞬過ぎ去っただけだったあの百日草を思い出してしまいそうな気がした。

 

 

KANA-BOON(Mt.Fuji STAGE)

 

メジャーデビュー前からラブシャに出演し続けてきたKANA-BOON。しかし今年はめしだ(Ba)が不在のため、初めて3人で出演する運びとなった。

 

KANA-BOONですよろしくどうぞー!」

 

谷口鮪(Vo,Gt)が元気よく声を張ると、いきなり「シルエット」からスタート。ステージ前方には早くもサークルモッシュの輪が出来上がっている。久しぶりに聴く「盛者必衰の理、お断り」を経て、「彷徨う日々とファンファーレ」では甘酸っぱい夏の匂いがセンチメンタルなメロディと共に届けられる。かつてのKANA-BOONはセトリが固定されがちだったが、今はこうして手札が幅広くなっていっている。

 

「みんなどうする?跳び跳ねる?走り回る?それともゆらゆらする?」

 

を合図に「ないものねだり」が始まり、巨大なコール&レスポンスが繰り広げられると、フルドライブ(鮪はキメで「バルス!」と叫んでいた)でその勢いは更に加速する。歌詞通り、会場の天気は快晴だ。サポートには共にデビューのきっかけとなったオーディションで共演し、スプリット盤をリリースしたこともあるほど親交の深いシナリオアートのヤマシタタカヒサを迎えているが、彼のベースもすっかりバンドに馴染んでいる。

 

「まあ色々ありましたけれども」

 

と初夏の騒動を振り返った谷口は、

 

「楽しいこととか続けてよかったって思うことがたくさんあるから、こうしてギターを弾き続けてバンドを続けている」

 

と現在の心境を語る。デビュー前から一緒に走ってきたメンバーと歩幅を合わせられなくなった時の気持ちは言うまでもない。でもこうしてライブを助けてくれる仲間がいて、毎年ブッキングしてくれるスタッフがいて、ライブを待ってくれているお客さんがいる。

 

「この続けていきたいって気持ちを未来へ向けて、バトンとして渡していきたいと思います」

 

という言葉と共に「バトンロード」が歌われると、

 

「自分たちの今の気持ちも歌っていいですか!」

 

とラストは「まっさら」。言葉を伝えるというより、叫びを伝えるという彼らに合わせて、オーディエンスも最後まで声を張り上げていた。

 

バンドがどんどん過去の思い出になっていく過程を見るのは、とても寂しい。特にKANA-BOONはブレイクが早かったために、音楽性が豊かになってきているのに集客力が減っていっているという状況に陥っている。最近の彼らのライブを見ると、一抹の悲しさを覚えてしまう場面が増えたが、悲しんでいるだけではなにも進歩しない。

 

今日も最初の方は満員だったものの、気づけば多くの人がsumikaへ移動していってしまっていた。しかし、「まっさら」でたくさんの人がサビで叫んでいたのを見ると、彼らはまだまだ過去のバンドと呼ばれるには早すぎると思えた。来年も再来年も、この場所でKANA-BOONと出会いたい。

 

 

sumika(LAKESIDE STAGE)

 

リハーサルから

 

「一人で来てる人、家族で来てる人、恋人と来てる人、たくさんいると思うけど、この後のライブでは絶対に、精神的に一人にしないんで!」

 

と誓ってみせたsumika。初のLAKESIDEだ。

いつものように笑顔でステージに現れた4人は、「「伝言歌」」で口火を切る。サビのフレーズは客席に委ね、メンバーはそれを笑顔でしっかりと受け取る。どれだけステージが大きくなって物理的な距離が離れても、心理的な距離は変わらないことを何度も証明してきたバンドだ。

 

続いて「Lovers」では風に乗せてとびきりピースフルな音を届けると、

 

ラブシャのみんなを元気にする呪文があった気がするなあー?」

 

とお馴染の前振りから「ふっかつのじゅもん」へ。長い一日の中ではどうしても中だるみしてしまいそうな時間帯だが、タイトル通り会場に「ふっかつのじゅもん」を唱えてみせた。

 

片岡健太(Vo,Gt)がハンドマイクになって披露されたのは最新アルバムから「Flower」。片岡は縦横無尽に広いステージを飛び跳ね、あちこちに

 

「Flower!」

 

のコールを求める。今日はsumikaのグッズを身につけている人もたくさん見かけたが、フェスといえば様々なバンドのグッズをまとった人たちが一堂に介するイベント。ステージの上から見える景色も、ワンマンとはまた違ったカラフルな景色だっただろう。メンバーも実に楽しそうで、片岡はもうずっと声が上ずっている。

 

「リラックスして聴いてください」

 

とチルな空気を呼んだのは「Travelling」。「Summer Vacation」もそうだが、こうした横ノリの曲をうまく乗りこなす様も、バンドの器量の広さを表している。

 

スペシャは学校に上手く馴染めなかった自分を救ってくれた」

 

と語った片岡。彼に限らず、今年出演したアーティストの中にはスペシャを聴いて育ったと公言している人がたくさんいる。そんな人たちがこうしてプロのミュージシャンになり、音楽を発信する立場になっている。そして、今日会場にいる、あるいは今後の特番を見る人たちと出会い、音楽のリレーは続いていく。そんなループが、この先もずっと続いていってほしいな、と思えた。

 

「この場所が皆の待ち合わせ場所になりますように。どうせならでっかいこと想像しよう!」

 

と最後に歌われたのは「フィクション」。ストーリーはこれからも続いていく。sumikaスペシャが今後どんなストーリーを紡いでいくのか、そのストーリーを見た我々同士が、どんなストーリーを紡いでいくのか。未来が少しだけ明るくなったような、そんなライブだった。

 

 

クリープハイプ(LAKESIDE STAGE)

 

徐々に落ちてきた陽はLAKESIDE STAGEの後ろに位置し、ステージを向くオーディエンスの顔面に直撃するように光が降り注いでいる。思わず顔をしかめたくなるこの時間にLAKESIDEに登場したのはクリープハイプ尾崎世界観(Vo,Gt)が

 

「雨降ってないね。しょうがないからじっくり濡らしていきます」

 

といきなり「栞」の歌いだしを少しなぞってストップ。

 

「こっちもセットリストが固定されてきてんだよ。出落ちだと思え」

 

と皮肉り、小泉拓(Dr)の力強いビートと共に「栞」からスタート。「鬼」では

 

ラブシャの六畳間」

 

と変わった歌詞に歓声が上がる。

 

長谷川カオナシ(Ba)の曲紹介から彼がボーカルをつとめる「火まつり」が始まると、祝祭的な会場の空気が怪しくオカルトな空気に変わる。ギターソロ中の小川幸慈(Gt)を尾崎が蹴り落とそうとする場面も。

 

「太陽出できたね。曇ってていいのに」

 

と尾崎がぼやき、それに呼応するかのように雲が陽を遮ると、夕方の時間帯が似合う「ラブホテル」へ。1曲目から「尾崎、けっこう髪切ったなあ」と思いながら見ていたら、間奏のブレイクで

 

「髪…切りすぎちゃったなあ」

 

と本人が自虐。見ないで、とか言いながらちゃっかりカメラは彼のおかっぱ頭っぽくなった髪型を映す。

 

「楽しみすぎて切りすぎちゃった。これも…」

 

と夏のせいにしてしまうところがクリープハイプらしい。

再び祝祭的な空気を取り戻した「イト」から「イノチミジカシコイセヨオトメ」で尾崎は、

 

「生まれ変わってもクリープハイプでこのステージに立ちたい」

 

と叫んでいた。去年リリースされたアルバムが素晴らしかったことからも、このバンドが充実期に入っていることが窺えた。

 

「今度じゃなくて今気持ちよくなりたい」

 

と「HE IS MINE」では家族連れもたくさんいる中、いつも通り「セックスしよう!」の大合唱を決めてみせて、彼らはステージを去った。クリープハイプは楽しもうぜ、って空気を自分達からは発信しないし、オーディエンスに媚びるようなことは絶対にしない。下ネタも躊躇せず言うから、家族連れにもあまりよろしくない。

 

それでも毎年これだけの人が集まっている。フェスは皆が皆、一様に盛り上げていこうという雰囲気ではないということが、全国のフェスに常連である彼らのライブを見ればわかるはずだし、このバンドが毎年大きなステージに立てているのは、彼らの地の力あってこそだろう。今日も、しっかり彼らの掌の上で転がされた。

 

 

フレデリック(Mt.Fuji STAGE)

 

2月にリリースしたアルバムを引っ提げ、1年以上に及ぶツアーをじっくり回っている最中のフレデリックラブシャには2014年から6年連続で出演している。

赤頭隆児(Gt)、三原康司(Ba)、高橋武(Dr)がイエローで統一された服装で登場すると、最後に三原健司(Vo,Gt)が登場し、

 

フレデリック、35分一本勝負、始めます」

 

とこの日もMCなしのダンスタイムを宣言すると、まずは「KITAKU BEATS」でMt.Fujiを躍らせる。遊び切っても山中湖からは帰りたくない気持ちだ。シームレスに繋げた「飄々とエモーション」では健司がハンドマイクになり、雄大なビートを響かせていく。野外の会場がよく似合う曲だし、間違いなくこの曲は、彼らの歴史を辿る上でターニングポイントとなり得るだろう。

 

いくつかの夏フェスでも披露されてきた新曲「イマジネーション」はミディアムテンポでじっくりとリズムを身体に刻み付けていく、地に足の着いたサウンドが展開される。彼らの様々な音楽へのリスペクトが、一つ成熟した形と言えるだろう。

 

尚も「シンセンス」のビートを叩きつけると、

 

「もう一曲、新曲をやってもよろしいでしょうか!知ってても知らなくてもいい、音楽が好きならそれでいいんです」

 

とまたも新曲「VISION」を披露。バンドの未来を見据え、更にエレクトロ色が色濃くなった曲だ。今後どのような存在を放つようになるのだろうか。

 

あっという間の35分間は「オンリーワンダー」で終了。ハンドマイクで歌う曲がさらに増え、来年の横浜アリーナに向けてバンドがどんどん新たなフェーズに突入していくのがよくわかる35分だった。まだまだ遊び足りないから、続きは12月のワンマンで。

 

 

Perfume(LAKESIDE STAGE)

 

ステージの骨組みの隙間から夕陽が漏れるLAKESIDE STAGEには、この2日間で初めてステージにバンドセット以外のセットが組まれた。ラブシャ4年ぶりの出演となるのは、もはや説明不用の国民的テクノポップユニット・Perfumeだ。

 

その姿を一目見ようとたくさんの人が集まったLAKESIDEに、機械的なSEを響かせながら3人が登場すると、あちこちから黄色い声が上がる。「Future Pop」からライブが始まると、「FLASH」では手裏剣を投げたり弓を引く和風な振付に加えて、鮮やかなハイキックも披露され、その舞うような姿に誰もが釘づけになる。ご存知の通り、彼女らは常にヒールでパフォーマンスを行っているのだが、こうしてリアルタイムで見てみると3人の凄さを思い知らされる。

 

お馴染の挨拶で会場を虜にした彼女らは、4年ぶりの出演に喜びを見せる。しかし、あれだけキレのいいダンスを、しかもヒールで行っているというのに、MCでは3人とも全く息切れしていない。まるで機械のよう(実際Perfumeは機械っぽくというスタンスで曲に臨んでいる)だが、やはりMCからは彼女らの人柄の良さが伺える。

 

今日限りでお世話になったマネージャーが卒業することを告げた3人は、口惜しそうにしながらも、

 

「挑戦したいことがあるっていう彼(イケメンかつ有能らしい)を応援したいと思った」

 

と二つ返事で送り出したことを語る。

 

「ここに立っているだけでエモい状態」

 

と気合の入りようをアピールした彼女らは、マネージャーへの餞にも聴こえる「ナナナナナイロ」を披露。CMソングとして流れている曲だが、2番で急にドラムンベースのトラックが入るなど、なかなか侮れない曲だ。初期の楽曲「Baby cruising Love」もまた、マネージャーに向けた選曲だったのだろうか。

 

こちらもライブでおなじみのP.T.Aのコーナーでは、まずチャットモンチーが曲提供をした「はみがきのうた」で

 

「恥ずかしがらないで!」

 

とあーちゃんが先導して歯磨きの振り付けを行い、まったりとした空気にすると、

 

「カラオケで歌って楽しかったから採用した」

 

やついいちろうIMALUがSUSHI PIZZA名義でリリースした「あかるいよ!」でもあーちゃんが振り付けをレクチャー。ハッピー注入を自分に向けているのを見て

 

「自分に向けるんかい」

 

とのっちの鋭いツッコミも決まり、もうこの会場が地球で一番平和な空間なのでは、と錯覚するほど。

 

そんな穏やかな空気が「FAKE IT」で豹変すると、重厚なビートに合わせて会場全員がバウンスする。その様子はULTRA JAPANのようだ。会場全体が待ってましたと声を上げた「チョコレイト・ディスコ」では、まさかのこの日2度目となった

 

「ディスコ!」

 

コールが山中湖に鳴り響いた。

 

ラストを飾ったのは「無限未来」。この曲もまた、先程のMCのあとに聴くと、マネージャーに向けて届けられているように感じたし、チームの強い絆が垣間見えてこっちまでエモくなってしまった。楽曲のクオリティも、ダンスの技術も、MCの人懐っこさも、全てがオンリーワンなステージだった。

 

 

・[ALEXANDROS] (LAKESIDE STAGE)

 

毎年のようにラブシャに出演しているイメージがある彼らだが、去年は自身初のスタジアムワンマンがあったからか、山中湖にやって来るのは2年ぶり。すっかりフェスの終わりを締めるにふさわしい貫禄のあるバンドになった。

今年はツアー中に磯部寛之(Ba)の負傷があったり、庄村聡泰(Dr)の難病が発覚したりと踏んだり蹴ったりな彼ら。しかしサマソニ辺りから磯部の傷が癒えて本来のパフォーマンスができるようになったりと、徐々に本来の姿に戻りつつある。

 

夜になってやや肌寒くなった山中湖に、何となく冬の空気を感じさせるSEが流れ出すと、サポートのリアド偉武とROSE、磯部と白井眞輝(Gt)がスタンバイ。少し遅れて川上洋平(Vo,Gt)が大歓声を受け止めながらオンステージ。そのままシームレスに「Run Away」へ繋げると、会場の高揚感は一気にメーター越えの域に到達する。やはりスタジアムワンマンを経験しただけあって、スケール感が桁違いだ。LAKESIDE STAGEが完全掌握される。

 

そのまま音を止めることなく、青と白の照明が明滅して夜空を彩る「Starrrrrrr」を放つ。この時点でもう彼らの完全勝利なのだが、なおも間髪入れずに「アルペジオ」で客席からの叫びを求める。ツアーで聴いた時はやや雑な感じがした曲だったが、リアドのどっしりとしたプレイに支えられてその複雑さは解消されていた。

 

白井に合わせたのか、磯部もフライングVのベースに持ち替えた「Kick&Spin」では完全復帰した磯部がダイナミックに頭を振る。もう既にメンバーも観客もネジが外れてしまっているようで、間奏でヘドバンしている姿は「ワタリドリ」を歌っていたバンドと同じには見えない。

 

ここまで4曲をノンストップで演奏してきた彼らだが、川上が赤いギターを抱えてヘビーなリフをかき鳴らしながら歌いだしたのは「Mosquito Bite」。さらっと髪をかき上げてよりヤンチャな雰囲気の増した川上がコール&レスポンスを求めると、客席も負けじと大声で歌う。2年前はこんな曲がドロスから生まれると思っていなかったから、彼らの進化のスピードにはついていくのが精一杯だ。

 

これで5曲を休み無しで連発した彼ら。その姿はまさにロックスター、という言葉が非常によく似合う。そんな彼らだが、

 

SWEET LOVE SHOWER…PARTY IS OVER」

 

と「PARTY IS OVER」に繋げると、チルなメロディがゆったりと響き渡り、途端に物悲しさが訪れてきた。珍しい曲のはずだが、何故か結構セトリに入っているイメージがある。

 

かつてはスペシャ冠番組も持っていた[ALEXANDROS]。MCでは昔からいち視聴者だったスペシャに、自分がミュージシャンとなって関われていることに感謝を示した彼ら。しかしこの日は言葉数は少なめ。少しでも多くの曲を演奏することが、彼らなりのメッセージの伝え方だったのだろう。

 

夏前に配信リリースされ、既にみんなが歌えるアンセムになっている「月色ホライズン」は、今後彼らの新たな代表曲となっていきそうなポテンシャルを秘めている曲だ。川上がリアドと目を合わせに行くところも、同じレーベルで戦ってきた盟友同士の信頼関係が見える。

聡泰はまだ「月色ホライズン」を1度か2度くらいしかライブで叩いていない。しかしこうしてリアドがいてくれることで、この曲はライブを繰り返すことで更にブラッシュアップされていくだろう。聡泰が帰って来た時、この曲はどんな新たな表情を見せてくれるのだろうか。

 

2日目を締め括ったのは「ワタリドリ」。この2日を通して、自分にとって山中湖は「向かう場所」ではなく「帰る場所」へと変わった。だからこそ、

 

「ワタリドリのようにいつか 舞い戻るよ」

 

という歌詞通り、来年も山中湖に帰ってきたい、と強く思えた。

 

 

昨日はかなりゴツい出演者が集っていただけに、昨日と今日ではガラリと客層が変わっており、このフェスの懐の深さを思い知った。日中は暑い瞬間もあったが、全体的には曇りがちで、今日も過ごしやすい1日だった。明日で最後だなんて考えたくない。まだPARTY IS OVERするには早すぎるよ。