FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2019 DAY1 @インテックス大阪 2019/12/25

今年も年間を通じてたくさんのフェスが開催された。その主催者は音楽雑誌であったり、ファッションブランドであったり、アーティスト自身であったり、最近は民放のテレビ番組がその面白さに気づいて開催したりと様々であったが、ラジオ局が主催する大型フェスというのは全国でもRADIO CRAZYぐらいではないだろうか。

大阪のラジオ局・FM802が主催するロック大忘年会、RADIO CRAZY。例年は2日間の開催だったが、今年はFM802が開局から30周年を迎えたこともあり、初の3DAYS開催とパワーアップ。我々関西の人間からすると西のCDJとも呼べる存在であり、毎年豪華なラインナップが集結する一大フェスだ。一年間の総決算ということで、気合いの入っているアーティストもたくさんいるだろう。

ここに参加するのは今年で6年目。毎年のライブ納めはここと決めている。今年も無事、全日で参戦することができた。

 

 

 

・teto(L-STAGE)

 

今年は名作「超現実至上主義」をリリースし、47都道府県を回っている最中のteto。飯室大吾の前説からラグビーを題材にしたオープニング映像が流れ、SEが流れると同時にバンドのロゴがでかでかと現れると、朝早くからL-STAGEに集まったオーディエンスは大声を上げる。先に楽器隊が位置につき、ひときわ大きな歓声に迎えられて登場した小池貞利(Vo,Gt)は早くも客席に突入。山崎陸(Gt)は黒髪に戻っており、小池は綺麗めなジャケットを羽織っているのだが、スタイリッシュな彼がジャケットを着るとさながら2013年に同じステージに立っていたUK.PROJECTの先輩、[ALEXANDROS]の川上洋平のようだ。

開口一番、

 

「何がクリスマスじゃー!!」

 

と絶叫し、轟音をかき鳴らすともうその一瞬だけで今日のベストアクトをかっさらいそうなものなのだが、勢いのままに「高層ビルと人工衛星」でスタートの号砲をぶちかます。続けざまに「蜩」を投下し、「Pain Pain Pain」ではここまで割としっかり歌っていた小池がギターをかなぐり捨てて客席に降りてくる。

 

「戦争よりも革命よりも好きな人とのキスを!」

 

と最新アルバムから、まさにツアーで育っている最中の「ねえねえデイジー」がストレートに届けられると、クリアなギターが「9月になること」のメロディをさらに瑞々しく、切なく彩る。しかし変わらないのは、4人全員が魂を削るように、この一瞬に命を燃やしている姿だ。

 

「今年は大阪に9回来ました。その辺の大阪のバンドより大阪でライブしたんじゃないかなって思います。セットリスト考えてたんですけど、やっぱりこの土地のことを歌いたい。勝手に縁を感じて歌うから、何か勝手にやってくれ!」

 

と彼らしいぶっきらぼうな、でも優しさのある言葉で名曲「光るまち」が届けられる。自分は正直、大阪という土地が大好きってわけではない。でもこういう曲を聴くと、自分がこの曲を聴いている今この場所が途端に愛しく感じてくる。

今日はやたらと気合いが入っているな、と感じた理由は2つ。その一つはもちろん年内の大阪は最後のライブだったから、というのもあっただろうけど、小池はMCで

 

「一週間前に友人が亡くなったと報せが来ました。わかってるけどさ、でも人はいつか死ぬし町もなくなるし、言いたくないけどレディクレもいつか終わるかもしれない!だからいつまでも続くように歌うんです!」

 

と語っていた。きっとそれが今までの、そして今日のtetoの原動力だったのだろうと、最後の「拝啓」を聴いて強く感じた。

 

「浅くていいから息をし続けてくれないか」

 

それはtetoからの願いであると同時に我々リスナーがtetoに、そしてFM802に願っていることだ。今こうしてバンドができることの意味を今一度示したかのような、力強いアクトだった。

今年3月に列伝ツアーでtetoを目撃した時の衝撃は今でも覚えている。色んな人が絶賛しているのも納得な、ロックバンドの刹那性を凝縮させたようなライブに心を奪われた。こうして大阪で出会ったバンドを、年末にまた大阪で見ることができる、これもまた縁なのかもしれない。だから自分も、tetoに勝手に縁を感じている。

 

今年は列伝ツアーに帯同し、「正義ごっこ」のリード曲「夜想曲」はFM802で最速でOAされた。各地のフェスでも確かな爪痕を残し、10月には1年ぶりのアルバムをリリースし、長いツアーを回っている。混沌とした時代の寵児みたいなバンドだから、来年にはもっと多くの人が彼らを支持するようになるだろう。でも何故だろうか、そうなったとしても、彼らが大きなステージ立つ姿が想像できない。もちろんいい意味でだが。

 

 

 

・Hump Back(L-STAGE)

 

こちらも4月まで続く長いツアーの中途にいるHump Back。オレンジのアンプに黄色のドラムセット、林萌々子(Vo,Gt)の赤いパンツと、目に映える色が目立つ3人が今日もリハから絶好調っぷりを披露すると、本編でもいつも通りハナレグミ「ティップティップ」をバックに元気よく飛び出してくる。

 

「クリスマスに家でイチャついてるカップルに負けへんように!でっかい声で歌いに来ました!」

 

とクリスマスを意識しまくった宣誓から「拝啓、少年よ」で伸びやかな歌をL-STAGEに届けていく。今年は彼女らのライブを4度見てきたが、毎度見る度に演奏が強靭になってきていて本当に頼もしい。その中でも特に美咲(Dr)のドラムはどんどんストロングスタイルになっていっている気がする。

林がぴか(Ba)に飛び込もうとハッスルしまくっている中、「高速道路にて」、パンキッシュな「オレンジ」を連続で披露。やはり地元である大阪のフェスだけあって、気合いの入りようが違う。

「生きていく」では

 

「ねえ先生 僕は今歌っています」

 

のフレーズが

 

「802が私たちの曲を流してくれて、お世話になった先生のもとに届いたことがきっかけ」

 

と曲の生まれたエピソードを語る。こうした人との繋がりをそのままの温みをもって曲にしているからこそ、彼女らの歌は響くのだろう。

 

「全然足りないんですけどー!」

 

と煽りまくって「短編小説」ではやっぱり林が客席に突撃。しかしさすがに距離があったからか、ギターの音が鳴らなくなってしまう。でもそんなことはお構い無し、それどころか

 

「これがライブハウスのやり方!」

 

と笑ってみせるのがHump Back。

昨年のR-STAGEからステップアップしてのL-STAGEだが、彼女らはいい意味で大きな会場が似合わない。それはライブハウスで培ってきたスタイルを何一つ変えることなくこのステージに持ち込んでいるからだが、それでもやはり「クジラ」で響かせる林の歌声は、いつかZ-STAGEでも聴けるのではないか、と期待を寄せてしまう。

 

「ぴか、クリスマスプレゼント何がいい?」

「うーん……ももちゃんは?」

「んー、来年も3人でライブできる権」

 

と答える辺りがライブハウス育ちの生粋のバンドマンらしくもあるが、そんな温かいやり取りから「僕らは今日も車の中」が届けられると、すっかり板についた「月まで」「LILLY」のダブルパンチ。ラストは日を追うごとに歌う人が増えていっている気がする「星丘公園」。今日もロックバンドはバチバチにロックバンドだった。

 

今年はtetoらと共に列伝ツアーを回り、結成10年目にして野音ワンマンや地元であるなんばHatchでのワンマンを次々と成功させてきたHump Back。7月には待望の1stフルアルバムがリリースされ、47都道府県ツアーの真っ只中。少々のタイアップもあったものの、曲の力とライブの力だけでL-STAGEまでのし上がってきた。今彼女らの歌をリアルタイムで聴きながら青春を謳歌している10代がすごく羨ましい。来年の彼女らは、もっとたくさんの人の青春になっていることだろう。

 

 

 

グッドモーニングアメリカ(R-STAGE)

 

来年のツアーをもって活動休止することを発表しているグッドモーニングアメリカ。レディクレは久しぶりの出演にして、彼らにとって最後のフェス出演となった。

会場に着くと、毎回楽しみにしているたなしん(Ba)のコスプレはまさかのエルザ。目元まできっちり整えられていてやや怖いが、なぜか様になっているのが彼らしい。

キャッチアンドリリース」から繋いだ「YEAH!!!!」では、サビでたくさんの手が左右に揺れる。近年はワンマンだけでなくフェスの動員も厳しくなってきた彼らだが、そんな中でもこの曲はしっかりと振り付けが浸透している。

 

何度も何度も出演してきたレディクレの舞台もいったんはお預けということで、今まで自分たちを呼んでくれたことを感謝するメンバー。たなしんもドレスを脱ぎ捨て、

 

「俺たちの音楽を精一杯伝えたいんです!」

 

と熱い思いを語るのだが、

 

「ファイヤー!!」

 

に繋ぐ大事なMCを噛んでしまうのが何とも彼らしいというか。

そこからは「言葉にならない」、「フルスロットル」とパンキッシュな楽曲を連続で披露し、「空ばかり見ていた」では金廣真悟(Vo,Gt)はマイクから離れて客席の合唱を受け止める。メンバー全員が、ずっと年末に聴いてきたその声の一つ一つを苦しいほど噛み締めていた。

最後の挨拶を任せられた金廣は、

 

「少し休んだらまたこの場所を目指して頑張っていきますので。「あいつらまだやってるわ」みたいな感じで見守ってくれたら嬉しいです」

 

と丁寧に語って歌い始めたのは「餞の詩」。それを聴いたとき、自分はやっとグドモが活動を止めてしまうという事実を思い知らされ、涙が出そうになってしまった。当時のインディーズチャートで1位を取っていたのがこの曲。バンド名も不思議だったが、教養の足りなかった自分は「餞」の意味も読み方もわからなかった。でも意味を知ってからはたくさん歌った。間違いなく自分とグドモを繋げてくれた最初の曲だった。あの場にいた人達の中にも、この曲でグドモを知った人がたくさんいたことだろう。曲が終わったときは、周りからすすり泣く声がたくさん聞こえてきた。

しかし泣きっぱなしで終わらないのがグドモ。メンバー自身も何度も言っているが、この活動休止はポジティブな活動休止であり、未来を見据えるための準備期間だ。彼らは前を向いている。その証拠が次に歌われた「未来へのスパイラル」、そして「光になって」だった。

 

たなしんのエンターテイメント性も、ペギのワイルドなドラミングも、渡邉幸一のアツい言葉も、金廣の舌足らずな歌もこれからしばらく聴くことはできない。でも彼らはいつか必ずレディクレに戻ってきてくれる。その時におかえり、と言えるように。

何が僕を導いている?それは彼らとの約束だ。また会える日まで。

 

 

 

・ポルノ超特急臨時大増便(Z-STAGE)

 

毎年1組はレディクレならではのコラボレーション企画が用意されているレディクレだが、今年は30周年ということもあってかその特別企画もいつもより多め。その一つが、先日まで開催されていたROTTENGRAFFTY主催の「ポルノ超特急」とのコラボレーションだ。

まずはROTTENGRAFFTYメンバーが登場し、先日のベストアルバムのアンケートでも1位を獲得した「THIS WORLD」から開幕。そのままダンサブルな「D.A.N.C.E.」が始まると、袖から飛び出てきたのはヤバイTシャツ屋さん。先日リリースされたトリビュートアルバムでもヤバTがこの曲をカバーしているが、今日はこやまたくやとしばたありぼぼがロットンの演奏に合わせて歌うスタイルだ。普段は楽器を弾きながら歌っている二人だから、ハンドマイクで歌うのはかなり珍しい光景。遅れて登場したもりもりもとは蝶ネクタイまでバッチリ着こんだスーツ姿で登場。NOBUYAを意識したらしいが、

 

「NOBUYAさん蝶ネクタイなんか付けてるっけ?」

 

とこやまにも本人にも突っ込まれていた。曲終わりにはステージ中央で両腕をぶら下げてゾンビのように痙攣するという、NOBUYAを意識したのかしていないのかよくわからない動作まで。

 

「僕ら明日出番やのに前乗りしてるんすよ。これで帰ったらあと餅つきしかない。だからもう一曲やってもいいですかー!」

 

とこやまがおかわりを求めると、まさかのロットンによる演奏で「あつまれ!パーティーピーポー」。やたらとBPMが上がっているところもヤバTそっくりだ。どうやらこのステージはゲストボーカルがトリビュート先の曲を歌い、更にオリジナル楽曲のコラボもやるという感じで展開していくらしい。

 

続いて大歓声に迎えられたのはcoldrainのMasato。もちろんトリビュートでも演奏していた「エレベイター」が選曲されるのだが、やたらと音響の悪い(個人的な感想)Z-STAGEでもMasatoの声がしっかり聴こえてくる。やはりすごいボーカリストだし、次はcoldrainもこのステージで見てみたくなる。

そしてMasatoももう一曲、とこちらもロットンをバックに従えた「The Revelation」。さすがミクスチャーなサウンドを売りとしているロットンらしく、ハードメタルなこの曲もしっかり本家の味を損なわずに演奏しているのがすごい。もう前方はモッシュダイブの嵐だ。

 

一度場内が暗転し、MVを彷彿とさせる丁寧かつ煽り気味な女性のアナウンスを皮切りに始まったのは最新曲「ハレルヤ」。来年の今頃には既にライブでは欠かせないキラーチューンになっていることが期待される、ロットン史上でもかなりラウド成分多めなナンバーだ。最近は割とポップな曲がシングルリリースされていたロットンだが、やはりこういうラウドな曲はガツンとくるものがある。

 

続いて腰に朱雀を携えた朱雀王子こと北島康雄(四星球)が現れると、こちらもトリビュートに収録されていた「響く都」。ここでは朱雀王子がロットンメンバーにちなんだコール&レスポンスを展開するのだが、

 

「ロットン侑威地一人だけ漢字!」

「ロットンKAZUOMIニット帽でかい!」

 

と一人一人のいじり方が細かい。こういう所まで考え抜かれているのが四星球が愛されている証拠なのだなあ、と。

 

「四星球もレディクレ呼んでくれやー!」

 

と本音を叫び倒すと、

 

10-FEETの時間が無くなるから」

 

とロットンメンバーに諭され、「時間がないときのクラーク博士と僕」をあっさりとやって朱雀王子が退場すると、

 

「20年間応援してくれてありがとうございました!」

 

とメンバーは感謝を告げる。そして「「70㎝四方の窓辺」」をメロディアスに届けると、さっきの出番で「金色グラフィテイー」をやっていた10-FEETへお返しとばかりにロットンもカバー経験のある「その向こうへ」を始めようとする。すると今度は10-FEETメンバーが全員登場。TAKUMAはNOBUYA、NAOKIはN∀OKI(ややこしい)を意識した格好、そしてKOUICHIは何故か某戦場カメラマンみたいにあらゆる方向からメンバーを撮り続けている。共に京都で戦い続けてきた仲間だからこそ生み出せる愛の与え合いが、Z-STAGEを多幸感で満たしいていく(NAOKIと侑威地が揃ってハイキックするのもカッコよかった)。

 

そして最後はやっぱり「金色グラフィテイー」。もちろんヤバT、Masato、北島、10-FEETの全員がステージ上に集結し、客席もろともお祭り騒ぎに。しかもいつの間にかTAKUMAがギターを弾いている。もうこうなったら誰も彼らを止められない。この豪華っぷり、まさにロック大忘年会だ。

 

正直、ROTTENGRAFFTYは20年の全てが順調ではなかった。それでもポルノ超特急は関西の一大フェスにまで成長し、今年はレディクレの一番大きなステージで、しかもたくさんの仲間に囲まれてライブした。人生は何が起きるかわからない。だからこそ本当に面白い。

 

 

 

SHISHAMO(Z-STAGE)

 

夏フェスの時にはなかった大きなバンドロゴのオブジェが用意され、ステージの雰囲気がフェスらしからぬものになったところでSHISHAMOが登場。もうZ-STAGEは常連といったところか。

SEが鳴っている間に宮崎朝子(Vo,Gt)と松岡彩(Ba)はさっそく両脇の花道付近に陣取り、松岡のゴリゴリのベースから「BYE BYE」でスタート。先日、某音楽番組でこの曲のギターを弾ける5歳の女の子とセッションした様子が放送されていたが、それの影響もあって夏の曲であるはずのこの曲を先頭に持ってきたのだろうか。だとしたらかなりクレバーな手口だ。その番組で

 

「難しいからできればやりたくない」

 

とメンバーは言っていたけど。

続いてお馴染みの「タオル」。夏フェスでは松岡が先導してタオルを掲げてくれと促していたが、今回の担当は宮崎。もちろんスクリーンに映るアニメーションはレディクレ仕様だ。今年はDPFラブシャ、レディクレと3バージョンもこの曲のアニメーションを見れた自分はかなりラッキーだったのでは。

しかしこの曲、

 

「持ってないの あなただけかもよ」

 

同調圧力の恐ろしさをつくづく実感する曲である。

 

レディクレには7年連続での出演となった彼女ら。7年前のSHISHAMOはまだデビュー当時の高校生で、一番小さなLIVE HOUSE ANTENNAに出演していた。

 

「あれからもう7年経つんだよ、やばくない?」

 

とメンバーは時の流れの早さに恐々としていたが、自分は7年前のANTENNAのステージを見ていた。それから毎年レディクレで彼女らの成長を見届けてきた自分にとっては、今や紅白にも出演し、Z-STAGEに立っている姿が何だか感慨深く思えてくる。

冬のカラッとした空気が似合う「君が大事にしてるもの」では

 

GTO全15巻」

 

というかなりピンポイントな固有名詞が飛び出すのだが、そんな歌詞と地続きかのような「きっとあの漫画のせい」に繋げる流れは流石、歌詞をストーリーとして立てるのが上手い宮崎ならではである。それにしても「GTO全15巻」なんてどうやったらそんな固有名詞が出てくるのだろうか。

 

おそらく今日という日を気になる人と見に来たであろう人たちをドキリとさせる「君と夏フェス」からは夏フェスと同じく歌詞がスクリーンに映される「明日も」。思えば今年はたくさんライブに行った。週末はほとんどライブ会場にいたし、その度にたくさんのヒーローに楽しさや感動をもらった。来年もたくさんライブに行ける1年になればいいな、と思う。曲中、吉川美冴貴(Dr.)の後ろから客席を捉えた映像がスクリーンに映された。この7年で、SHISHAMOもたくさんの人にとって‘走り方を教えてくれるヒーロー’になった。そう考えるとまた感慨深くなった。

ラストは「OH!」。夏フェスの時と違ってコール&レスポンスの練習はなかったが、そんなのがなくても客席からは大きな声が聴こえていた。1年を通して育ててきた曲。これからも大事な部分を担ってくれる曲になるだろう。

 

来年の彼女らはもちろんアルバムやツアーも控えているが、8月にはオリンピック真っ只中の渦中でリベンジのスタジアム公演を開催する。7年前はANTENNAすらもギリギリ埋まるかどうかだったSHISHAMOの歌が、ついにスタジアムに鳴り響く。来年の夏は違う。きっと違うんだから。

 

 

 

・OKAMOTO'S(L-STAGE)

 

何とレディクレには唯一の皆勤賞、しかもデビュー前から出演し続けているという、もはやこのフェスの顔とも呼べる存在のOKAMOTO'S。ヒゲをたくわえた風貌がフレディ・マーキュリーを彷彿とさせるオカモトショウ(Vo)だが、アコギを抱えて歌い出したのは今年リリースされた「BOYS」の最終トラック、「Dancing Boys」だ。いきなりの名曲スタートに驚いていると、引き続きアコギを弾きながら現在のツアーのタイトルにもなっている「History」、そして「Border Line」では危ない遊びへレディクレを誘っていく。思わず息を呑むセッションタイムでは「Beek」からさらっとBILLIE EILISH「BAD GUY」に繋げるのが、このバンドのスキルの高さを感じさせる。

 

MCではオカモトレイジ(Dr)が次に出てくるKing Gnuのドラム、勢喜遊と同じ髪色ということでハマ・オカモトにいじられたりする。今日のOKAMOTO'Sのステージは超満員だったが、自分の近くにいた人の何人かはおそらくKing Gnu目当てだったのだろう、ずっとスマホをいじっていた。他の場所にもそういう人がたくさんいたと思う。まあフェスの宿命といってしまえば仕方ないのだが、それは勿体ないなあとも思う。現に彼らはKing Gnu好きにも伝わりそうなエッセンスを持っているというのに。

 

今年はたくさんの挑戦をした彼ら。その挑戦の一環として劇伴にも参加した映画「HELLO WORLD」とタイアップした「新世界」では、映像演出も用いてタイトル通りレディクレを新世界へ導いていく。今までのOKAMOTO'Sとは一味違った、メロディへの脚色がめちゃくちゃ強いナンバーだ。

終盤戦は「BROTHER」の跳ねるリズムでL-STAGEを踊らせ、最後の「90'S TOKYO BOYS」まで心地よくL-STAGEを揺らしていった。この辺りはさすがレディクレ11年目の大ベテランだ。King Gnu目当てだった人も満足だったのではないだろうか。

 

今年は初頭に「BOYS」をリリースした彼ら。前作「NO MORE MUSIC」では消費の激しい社会で音楽を鳴らすことの意味を改めて問い質すメッセージ性の高い作品だった。それだけに今回のアルバムはかなりハードルが上がっていたはずだったが、「BOYS」はそれを悠々と超えていった名盤だった。そんなアルバムを携えて武道館のステージにも立ち、映画の劇伴も手掛けるなど今年は盛りだくさんの1年だった。来年も是非、オイラと踊ってくれないか。

 

 

 

 ・MY FIRST STORY(Z-STAGE)

 

リハでは「白日」をやっていたというMY FIRST STORY。Z-STAGEには初出演だ。会場に入ると既に「無告」がものすごい熱量で歌われており、両面のスクリーンにはMVが映されている。今日も攻め攻めのセトリが展開されるのかと思いきや、2曲目からは「ACCIDENT」、さらに「mine」とミドルテンポな楽曲を連発。フェスではもっと尖ったセトリを組んでそうなバンドというイメージが勝手にあったので、この構成には少々驚かされた。

「君がいない夜を越えて」では彼ららしいメロディアスで雄大なメロディが響く。いつの間にか彼らはアリーナワンマンをやる規模にまで成長していたのだが、そんなバンドの現状を体現するかのように、一つ一つのステージ上での動作やサウンドがスケール感をまとっている。

 

「レディクレ、踊ろうぜ!」

 

と「モノクロエフェクター」で再度熱を入れると、Hiro(Vo)の類い希なハイトーンボイスがダイレクトに響き渡る「REVIVER」でテンションは最高潮に。

 

「メリクリ!」

 

と茶目っ気を見せていたHiroは「With You」の曲中、

 

「どんなに願っても手に入れれられない景色がここに広がってます。この景色が僕らにとって最高のクリスマスプレゼントです!どうもありがとう!」

 

と感謝を告げる。いやいやこちらこそ、と思うが、しかしこんなにたくさんの人に迎えられる景色はたしかに願っても手に入れられない。ここに集まった人たちは彼らが積み上げてきた歴史の証明なのだから。

 

MY FIRST STORYのステージを見ると、ONE OK ROCKが海外志向に向かず、国内でラウドロックを研ぎ澄ませまくっていたらこういう景色を作っていたんだろうな、とどうしても思ってしまう。ともすればMY FIRST STORYはただのワンオクのフォロワーで終わっていたかもしれない。

しかし今こうしてライブを見ると、MY FIRST STORYにしか作れない景色がちゃんとあって、MY FIRST STORYにしか生み出せない熱狂とカタルシスが確かに存在しているのだ、という事実に感服させられる。もう兄がどうだろうと関係ない。そりゃアリーナワンマンもできるわけである。

 

 

 

Official髭男dism(Z-STAGE)

 

今年の顔といっても過言ではないほど大車輪の活躍を見せたOfficial髭男dism。昨年のレディクレはR-STAGE、それもヤバTの裏で、位置付けとしてはFM802の名物番組、MUSIC FREAKSの新DJに就任したことやヘビーローテーションに選ばれていたこともあり、ちょっと注目されていたぐらいだった。しかし今年は当然のごとくZ-STAGE。しかもトリを任された。このポジションに着くのも文句なしというものだ。

 

もはやZ-STAGEすらもキャパオーバーな状態で頭文字であるHGDNのロゴを携え、ツアーと同じく「Travelers」のメロが入ったSEをバックに4人が大歓声に迎えられ登場すると、やはりこちらもツアー同様「イエスタデイ」で幕開け。これから始まる音楽の旅へ誘う雄大サウンドスケープがZ-STAGEを飲み込んでいく。

ホーン隊が合流すると「ノーダウト」からはもう歯止めが効かないパーティーの始まりだ。誰もが歌詞を口ずさんでいるし、メンバーの一挙手一投足を逃すまいと集中しまくっている。去年までは考えられなかった景色だ。

初めてライブを見る人が多いからか、重厚なアレンジが加わった「Tell Me Baby」ではいつも以上に会場が沸き立ち、「115万キロのフィルム」では

 

「僕は助演で監督でバンドマン」

 

と夏フェス同様歌詞を変えて歌われる。ワンマンでは歌詞を変えていなかったので、きっとフェスというライブ猛者が集う場所での「バンドマンとして負けるつもりはない」という意思の表れだろう。実際今年の彼らはあまりにも速すぎるスピードでスターダムに駆け上がったことで、「J-POPとしてはいいけどロックバンドとしてはどうなの?」と舐められることも多かったかもしれない。それは売れっ子の性でもあるのだが、そんなマイナスの声をぶっとばすかのように松浦匡希(Dr.)のソロが轟く「ブラザーズ」では楢崎誠(Ba.)がベースをバックに任せてサックスに転じ、大所帯で縦横無尽に駆け回る。

極めつけは炎の特効と共に小笹大輔(Gt.)のメタルバンドばりのギターソロが脳天を突き抜ける「FIRE GROUND」。これだけ見てもなお、ヒゲダンはロックバンドではないと言い切れるだろうか。

 

イントロの1音目から悲鳴にも似た歓声が上がったのは「Pretender」。バックのスクリーンには

 

「飛行機の窓から見下ろした知らない街の夜景みたいだ」

 

という歌詞とリンクしたように夜景の映像が流れるのだが、この曲を聴きながら見る夜景はなんだか他人事のように思えて物悲しい。こんなに打ちひしがれるような切なさをまとった曲が1億回も再生され、ついに年末には紅白で歌われようとしている。なんだか不思議だ。

 

今年は多忙を極める中で2週間に1回の頻度でFM802でレギュラー番組を担当していた藤原聡(Vo,Piano)は改めて大阪への感謝を告げ、最後に鳴らされたのは「Stand By You」。ツアーを経てどんどん音源よりブラッシュアップされている演奏に驚いたが、やはりこれだけの人が集まった中で歌われる合唱も鳥肌もの。いつかはこの大合唱がアリーナ、いやドームやスタジアムでも聴ける未来はそう遠くないだろう。そうなっても、ずっとレディクレに出続けてほしいものである。

 

出番が早かったのでアンコールはないかな?と思っていたら、割とすぐ再登場。もちろん最後に披露するのは「宿命」だ。ここでは火花が上がる特効も見られたが、これは来年からのアリーナツアーに先駆けた演出だろうか。全ての照明が点り、夜明けを迎えたように明るくなった場内に

 

「届け」

 

と叫ぶ藤原の歌は、きっとZ-STAGEに入れなかった人達にまで届いたことだろう。

今年は説明不要の大活躍だったヒゲダン。来年からはいよいよアリーナツアーが始まる。20年代のポップの行く末は、彼らに託されたといっても過言ではない。

 

 

 

・ROCK KIDS 802 EXTRA CRAZY BAND[THE YELLOW MONKEY トリビュートLIVE] (L-STAGE)

 

今日の企画枠2つ目にしてL-STAGEのトリをつとめたのはROCK KIDS 802 EXTRA CRAZY BAND。FM802 と同じく30周年を迎えた​THE YELLOW MONKEYのトリビュートライブを行うべく、キーボードのトオミヨウをバンマスに迎え、ギターに小野武正(KEYTALK)と阪井一生(flumpool)、ベースに辻村勇太(BLUE ENCOUNT)、ドラムに高橋武(フレデリック)と錚々たるメンツが集結したこの日限りのドリームチームだ。

 

そしてTHE YELLOW MONKEYの珠玉の名曲たちを歌うボーカリストもまた豪華。まずは菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)が呼び込まれ、「SPARK」を披露。そもそもの歌い方が吉井和哉の影響を感じさせることもあり、イエモンの楽曲との相性は抜群である。

続いてTOTALFATからJose、Shunが呼び込まれ、デュエットで歌ったのは「プライマル。」。意外なことにこの二人もイエモンをルーツに持っているらしい。

 

「手を振ったキミがなんか大人になってしまうんだ」

 

という一節はどうしてもKubotyを思い出してしまうが、この二人が歌うと底抜けに明るい曲になるのがパンクの陽性っぷりを感じさせる。

GEN(04 Limited Sazabys)を招いて始まったのは「LOVE LOVE SHOW」。エロが大好きなGENにはぴったりの曲だ。背景にはハートがたくさん流れ、今この瞬間も愛し合っているであろうカップル達を象徴するように甘いメロディが響き渡っていった。

 

これで直前に発表されていたボーカリスト吉井和哉を除いて全員登場したわけだが、いったんステージが暗転したのち、

 

「追いかけても 追いかけても」

 

と「バラ色の日々」の歌い出しが。だが吉井和哉の声ではない。しかしどこかで聴いたことのある声・・・と思っていたら、そこに立っていたのはなんと渋谷すばる。まさかまさかのシークレットゲストとしての登場である。これには会場(主に女性陣)が一気に色めき立ち、驚きやら感動やらで物凄い空気になっていく。

まさか渋谷すばるが目の前で歌っているなんて。呆気に取られている間に彼の熱演は終了。すると堰を切ったように会場から惜しみない拍手が送られる。そんな歓声を受けながら、

 

「失礼しまーす」

 

とあくまでも穏やかな口調でさすらいの歌うたいはサラッと去っていった。まるで嵐のような出来事だった。そもそもFM802は独自の選曲基準を持っていて、原則的にジャニーズの曲は流さない。つまり関ジャニ∞の曲も渋谷すばるの曲も、FM802の電波に乗ったことは一度もない。にもかかわらず出演してくれるなんて。最高のクリスマスプレゼントだ。

 

そして満を持して吉井和哉が登場し、「悲しきASIAN BOY」を披露。つまりイエモンのボーカリスト本人の歌唱である。先程のサプライズでめちゃくちゃハードルが上がっていたはずなのに、それをものともしていない。そりゃ本物だからか。

しかしこういうトリビュートライブに本人が出てくるなんて珍しいなあ、と思っていたら、サプライズはまだ残っていた。

 

「トリビュートバンドの皆さんも本当に素晴らしかったのですが、FM802からのささやかなクリスマスプレゼントということで、ここで僕が30年連れ添った仲間も紹介させてください!」

 

と呼び込み、菊地英昭廣瀬洋一菊地英二が登場。そう、THE YELLOW MONKEY本人だ。現在ドームツアーの真っ最中なのにもかかわらず、

 

「バレないように来た」

 

とのこと。レディクレのステージに、あのTHE YELLOW MONKEYが立っている。その事実だけで胸がいっぱいになりそうだ。

しかしあくまでもメンバーはラフに構え、最新曲「DANDAN」をリラックスムードで披露。

 

「ほらDANDAN いいねDANDAN 集まったぜ盟友」

 

というフレーズはまさに今この瞬間のためにあったのではないか、と思うほどの必然性を持っていたし、

 

「始まったばかりで そんな気にしないでいいよ」

 

という肩の力が抜けたフレーズを歌うイエモンはロックスターっぽくなくて、でも紛れもなくロックスターだった。

そしてトオミヨウを迎え、彼を労ったところでキーボードに加えて始めたのは「JAM」。今日のゲストボーカリストの誰かしらは歌うだろうな、と思っていたが、まさかイエモン本人の演奏で歌われるとは思いもしなかった。そしてやはりこの曲を歌えるのは世界で吉井和哉しかいない、とも強く思えた。

 

最後はトリビュートバンドもボーカリストも全員呼び込み(さすがに渋谷すばるは出てこなかったけど、きっと袖で見ていただろう)、銀テープが発射されて「太陽が燃えている」を大合唱。トリビュートバンドと目を合わせながら演奏しているイエモンメンバーは実に楽しそうだったし、全員と肩を組んで歌う吉井和哉もとてもいい表情をしていた。会場にいた全員がハッピーになった、最高のクリスマスだった。

 

本当に渋谷すばるTHE YELLOW MONKEYもよく呼んだなと思ったし、快諾して出演してくれたのも本当にすごい。こんな景色が見れるのはレディクレだけだ。

 

 

 

というわけで初日終了。今日はもう本当に最後のイエモントリビュートに全部持っていかれた。間違いなく今までで最高のクリスマスだった。ただただ、FM802に感謝である。