FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2019 DAY2 @インテックス大阪 2019/12/26

レディクレ2日目。今日は雨が降っていていつもよりかなり気温が低い。しかしレディクレは室内フェス、しかも会場は半袖でもいけそうなほど暑いので雨も気にならない。

今日の目玉はもちろんGLAY。そもそもGLAYが何かしらのフェスに出演すること自体が初めてなのではないか、と思うぐらいには貴重。それもこれもJIROがFM802でDJをやっているから。まあGLAY見てないんですけど。

 

 

 

ヤバイTシャツ屋さん(Z-STAGE)

 

4年前にオーラルの裏でANTENNAを真夏の熱狂空間に変え、それから毎年ステージの規模を大きくしてきたヤバイTシャツ屋さん。遂にZ-STAGEに到達である。もう既に規制がかかりそうなほどたくさんの人が集まる中、昨日と同じく飯室大吾が登場した前説では

 

「昨日はロットンのステージ、餅つきとやって、そろそろ自分達の音楽を鳴らしたいんじゃないかとウズウズしております!」

 

と勢いよく紹介され、オープニングムービーを経て元気よく登場。

 

「おはようございまーす!」

 

と挨拶もいいところにさっそく「あつまれ!パーティーピーポー」で満員の会場を踊らせていく。よくヤバTのライブは頭を空っぽにして楽しめると言うが、彼らはそれだけでなく、空っぽになった頭に「楽しい」をぎゅうぎゅうに詰め込んでくる。だからライブを見ているときは邪念が生まれないし、実は数あるバンドの中でも最も集中できるライブをできていたりする。

「Tank-top of the world」からは「鬼POP激キャッチャー最強ハイパーウルトラミュージック」、そして関西のローカルネタだからこそ意味がわかってコール&レスポンスがさらに盛り上がる「喜志駅周辺なんもない」、さらに今年最大級の

 

「キッス!」

 

コールがこやまたくや(Vo,Gt)の声をかき消しそうなほど響く「ハッピーウェディング前ソング」までほぼノンストップ。少しでも多くの曲を詰め込もうとする彼ららしい戦い方だ。

今年はフェスでもトップバッターをつとめることが多かった彼ら(こやまはMCで「楽屋来てもまだ誰も来てないのが悲しい」と愚痴をこぼしていた)。朝一、といってももう時刻は正午を迎えようとしている中、MCになるとしばたありぼぼ(Ba,Vo)はなぜかひそひそ声で話しはじめる。

 

「みんなまだ起きてないから…びっくりさせようや」

 

と寝起きドッキリを計画。しかし

 

「やっほー」

 

も囁き声で言うというボケで会場がいい感じに温まると、

 

「デカい音出すぞ!」

 

と「Tank-top Festival 2019」で再開。

 

「今年のFM802ヤバイTシャツ屋さんの関係は、まさにこんな感じでした!」

 

と最新曲「癒着☆NIGHT」に繋げると、「無線LANばり便利」ではフェスという楽しい場に来ているはずなのに

 

「家 帰りたい Wi-Fiあるし」

 

の大合唱を起こさせるという異様な、しかしだんだんとスタンダードになりつつある光景を生み出す。ヤバTのライブはいつもこんな感じでひたすら楽しいが連発されるのだが、

 

「ヤバTの曲を世界で初めて流してくれたラジオ局がFM802でした!ばんちゃん(DJの坂東さえか)がキュウソのセイヤさんにCD渡してくれて、それで見つけてもらいました。

音楽で受けた恩は音楽で返したいと思います!」

 

という「ヤバみ」前のMCは思わずグッと来た。FM802としても、地元関西で生まれ育ったバンドが今や毎年紅白に出れるのでは、と期待されるほど大成してくれたことが本当に嬉しいだろうし、坂東さえかはこの景色を見てどんなことを感じるのだろうか。

そんなこやまの恩返し宣言の通り、ラストの「かわE」までほぼノンストップ、時間ギリギリまでフルに用いたセットリストを持って、ヤバTは初のZ-STAGEを完遂してみせた。これから何度も立つであろうこのレディクレの舞台で、ヤバTは今年一番の輝きを見せてくれた。

今年は様々なフェスで初のメインステージを経験し、サンリオピューロランドでのワンマンなど彼ららしい挑戦がたくさんあった。そしてそれは来年も続く。次は志摩スペイン村で。

 

 

 

SCANDAL(L-STAGE)

 

今年はプライベートレーベル「her」を設立し、一気にバンドのイメージを刷新したSCANDAL。けたたましいエレクトロなSEに乗せて4人が現れると、新たなSCANDALの方向性を示した「マスターピース」からライブはスタート。さらに「Fuzzy」と繋げていくことで、今の彼女らがやりたいことは何なのか、ということをはっきりと観客に示していく。2年前にも一度レディクレのステージで見たことがあるが、その時とはメンバーの立ち振舞いや楽曲の雰囲気が別物だ。何というか、しがらみから解放されたというか、優等生バンドというイメージから脱却したというか。

 

しかし「瞬間センチメンタル」の間に違和感が生じる。ここまで割と音響がいいはずのL-STAGEでHARUNA(Vo,Gt)の声がなかなか聴こえない。そのことについて、MCでははっきりと

 

「今日は思うように声が出ない」

 

HARUNAは告白。しかし全く出ないというわけでもないのでライブは続行。HARUNA自身も最後まで歌いきることを宣言したが、すぐさまMAMI(Gt)とTOMOMI(Ba)が

 

「(HARUNAがダメなところは)私たちも歌うからね」

「今日はレディクレバージョンということで!」

 

とカバーに入ったのがこのバンドの絆の深さを感じさせた。

 

「みんなが絶対好きそうなやつです!(笑)」

 

と自身を覗かせた「A.M.D.K.J.」からはHARUNAがハンドマイクで堂々と歌う「最終兵器、君」と最新曲が続く。この辺りは今年はひたすら「ロックバンドであること」に振り切り、数々のライブ猛者とも対バンを繰り広げてきた彼女らの経験値がしっかり活かされている。ニューアルバムはかなりパンチの効いた1枚になりそうだ。

思えばこの頃から今のSCANDALの雰囲気に通ずるところがあったなあ、と改めて感じさせた「テイクミーアウト」からは

 

「みんなに任せたー!」

 

と「STANDARD」では散弾銃のように連発されるコール&レスポンスを完璧に決めてみせる。そしてラストは

 

「いつだって思ってたイメージに届かない」

 

と悩みや覚悟が現れた歌詞が今のバンドの現状をよりリアルに刻名している「SCANDAL BABY」。中盤からはメインのマイクをTOMOMIが完全に奪い去り、スペシャルバージョンで届けられた。

 

「本当はいつもあなたにわかってほしいと思ってたよ」

 

というフレーズがあるが、今なおSCANDALに偏見を持っている人は少なからずいるかもしれない。でもそういう人たちも、今のSCANDALのライブを見たらそんな偏見は消し去ることができるだろう。それぐらい今の彼女らは目指す像がはっきりとしている。ライブ後、「可愛かったー」と話していた人がいたけど、もう可愛いだけじゃ終わらない。

 

 

 

04 Limited Sazabys(Z-STAGE)

 

レディクレには2年ぶりの出演となる04 Limited Sazabys。では去年は呼ばれていなかったのかというとそうではなく、去年はHIROKAZとRYU-TAのギター2名が体調不良になってしまい、やむを得ず出演をキャンセルしたのだった。

それだけに今日の彼らはリベンジに燃えていていつも以上にやる気満々。まずは超満員のZ-STAGEに向けて最強のキラーチューン「monolith」をぶちかますと、KOUHEI(Dr)が中指を立てて闘争心を刺激しまくる「fiction」、そしてフェスでやるのは初めてでは?という「Montage」からすっかりフェスのセトリにも定着した「Alien」まで休憩なし。

ラジオ局主催のフェスらしく、DJ風にアレンジされたMCでは昨年のっぴきならない理由で欠場してしまったことを詫び、

 

「某先輩にカバーしていいっすか?って聞いたら快くオーケーもらったんで聞いてください!FM802、2018年のヒットナンバー!」

 

と披露されたのはまさかの「栞」。元々はFM802が毎年やっている春のキャンペーンソング、ということでクリープハイプ尾崎世界観が書き下ろし、それをGEN(Ba,Vo)をはじめとした豪華ボーカリスト達で歌い上げた曲だ(あいみょんUNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介、sumikaの片岡健太なども参加していた)。まさにレディクレでしか聞くことのできないフォーリミアレンジ版に会場が沸き立つと、さらに上を目指して

 

「Crazy Crazy なりたい」

 

と「Warp」、「Kitchen」とフォーリミ流ポップスを盛大に打ち上げると、

 

「続いては~、04 Limited Sazabys2014年のヒットソング!」

 

とこれまたラジオDJっぽい前口上から「swim」へ。本当にテンポが良く、不純物が一切入らないスムーズな流れでライブを進行させていくのは彼らの売りだ。

 

今でもラジオ局はYouTubeでMVが公開されたり、サブスクで先行配信が始まる前からそのアーティストの最新曲をオンエアしていたりするし、特にFM802は世界最速で楽曲が解禁されたりすることも多い。次に披露された久々の「Terminal」も、FM802で初めて解禁された曲だった。ラジオゆかりのMCや選曲から、フォーリミがラジオをどれだけ愛しているかがたっぷり伝わってきた40分だった。

 

自分が今現在好いている音楽は最近こそYouTube経由で知り得たりすることが多いが、ほとんどはスペシャから知り得たバンドだ。しかしフォーリミと出会ったのはどちらでもなく、FM802だった。5年前、たまたまFM802でオンエアされた「monolith」を聴いて彼らに一目惚れした。あの時FM802を聴いていなかったら、もう少し彼らと会うのが遅かったかもしれない。

だからこそ、こうしてFM802を通して出会ったフォーリミを、FM802の主催するフェスの一番大きなステージで見れることがとても嬉しい。来年もこの場所で。

 

 

 

9mm Parabellum Bullet(R-STAGE)

 

今年は久々のアルバム「DEEP BLUE」をリリースした9mm Parabellum Bullet。今年はR-STAGEでの出演だ。

会場に着くとかみじょうちひろ(Dr)のダンサブルなビートと昨日はイエモンをカバーしていた菅原卓郎(Vo,Gt)の歌謡的なメロディが耳を引く「反逆のマーチ」を既に演奏中。ライブを見るのは初めてだったが、15年目を迎えたバンドなだけあって安定感は抜群。特にかみじょうちひろのドラム捌きは目を見張るものがある。

 

しかし驚かされたのは最新アルバムから披露された「Beautiful Dreamer」「名もなきヒーロー」の2曲。音源ももちろんだが、それよりはるかに音圧が凄まじい。やはり自分はロックバンドはライブが良くてなんぼのものだと思っているので、ライブ化けする曲がたくさんあるのはバンドにとって心強い。9mmは最新アルバムの曲でさえそうなのだから、こうして今でもフェスで活躍しているのだろうな、と感じさせた。

 

9mmの放つ音はロックバンドらしいアツさを持っている反面、冷たい刃のように鋭利で冷徹だ。それが特に感じられたのが「太陽が欲しいだけ」、そしてキラーチューン「Black Market Blues」。一つ一つの音が聞き逃せない鋭さを持っているから、オーディエンスも腕を上げたりハンドクラップをしながらも、めちゃくちゃステージに集中している。集中しなければこの音と向かい合えなさそうだからだ。

ラストの狂騒的な「Punishment」も圧巻の一言。遅かったかもしれないが、改めて彼らの地の強さを痛感したライブだった。まだまだ聴けていない曲もたくさんあるから、来年もまた生き延びて会いましょう。

 

 

 

阿部真央(L-STAGE)

 

昨年に引き続きL-STAGEに登場したのは阿部真央。ジングルが鳴ると既にバックバンドはセッティング済み。暗闇の中からふらっと阿部真央が現れると、アコースティックギターを手に取り、荒々しいストロークから始まったのは「デッドライン」。歌というより叫びのような切迫した歌声が、アコギ一本の上に乗っかってL-STAGEを一瞬で支配していく。やはりこの人の歌声は唯一無二だ。

そしてヒリヒリとした空気を持続させたままバンドメンバーが合流して「ふりぃ」に繋げるのだが、昨年のこのステージでの彼女のセットリストは「Believe in yourself」から「ふりぃ」の流れだった。前に来る曲が違うだけでこんなに雰囲気が変わるのか、と驚かされる。

 

「レディクレ、元気ですか?」

 

とMCで問いかけるも、反応はイマイチだったらしくさらっと流すと、来月にニューアルバムをリリースすることを告知。するとハンドマイクになり、そのアルバムから「お前の求める私なんか全部壊してやる」を初披露。彼女は何度かこういう反骨心に溢れたロックナンバーをリリースしてきたが、この曲はまさしく阿部真央史上最もロック、かつ怒りのエネルギーが充満しまくっている。バンドの演奏もさっき見た9mmが手がけたのかと思うぐらいエッジが効いていて、それに合わせて彼女もヒールでピョンピョン跳ねまくる。

 

「すごい…人生で初めて中指立てちゃった」

 

と自身の振る舞いを振り返ると、さっきは

 

「踊ってくれますか?」

 

と煽っていたのに

 

「暑い?だったらじっとしていて下さい」

 

と自由奔放。再びアコギを背負ってポップな「どうしますか、あなたなら」を届けると、弾き語りでは「未だ」をこちらも張り詰めた歌声で歌い上げる。こうして緊張感のある曲が続くのは正直フェスで歓迎されるものではないが、今の彼女はまさに「お前の求める私なんか全部壊してやる」というモードなのだろう。今年はベストアルバムをリリースしたからこそ、こうして振り切ったライブを行えているのかもしれない。

 

しかし張り詰めたムードはここで終わり。ラストは観客に歌詞を委ねる「モットー。」、そして「ロンリー」では笑顔も見せた阿部真央

数年前まで、阿部真央の歌は同年代へ向けた女子の、女子による、女子のための歌、というイメージがあり、どうも近寄りがたい雰囲気にあった。しかし今はフェスの舞台でもたくさんの人に彼女の歌が届いている。それは彼女の歌がまだまだ古いと言われるには早すぎることの証明だ。

 

 

 

THE ORAL CIGARETTES(Z-STAGE)

 

一昨年はB'zなどの大物が多数出演するなかでトリを任され、見事にその役目を全うして見せた。その時期に発足していた「ReI project」の一環として、昨年は一般参加者から公募を募り、ステージの上で「ReI」を歌い上げた。といったように、毎年のようにその年のレディクレのハイライトを築き上げてきたのがTHE ORAL CIGARETTES。個人的には今の日本のシーンで最もすごいライブを見せてくれるのがオーラルだと思っているが、レディクレでのオーラルはいつも以上の力を発揮してくれる。それを知っているから、やはりこのバンドは見逃すことができない。

 

今年は地元・関西の泉大津フェニックスで野外イベント「PARASITE DEJAVU」を開催した彼ら。そのとき同様テンプレート文章になった「一本打って!」を経て、サイレンにも似たSEに乗せてメンバーがゆっくりと定位置に着く。すると仲西雅哉(Dr)の四つ打ちから繰り出されたのは「ワガママで誤魔化さないで」。山中拓也(Vo,Gt)はさっそくタンバリンを手にし、サビでは腕を左右に振るのだが、もう観客全員が山中の一挙手一投足を真似している。次にGLAYが控えているにも関わらず、まるでこのZ-STAGEに集まった全員がオーラル目当てに集まっているかのようだ。

 

スクラップを模した歌詞が投影される「カンタンナコト」で会場を縦に揺らすと、ここで先程まで音波神社でライブをしていたロザリーナを呼び込む。同じ日に出演しているからやるかな、とは思っていたが、やはりロザリーナを迎えて披露されたのは「Don't you think」。山中は

 

「ロックバンドがフィーチャリングとかなかなかやらないっしょ?」

 

と言っていたが、こうしたコラボができるのもフェスならではだ。そしてこれだけのオーディエンスを目の前にしながら自然体で振る舞うロザリーナも度胸が据わっている。

冬フェス前にリリースされた「Shine Holder」からはキラーチューン祭りと言わんばかりに、幾度となくこのフェスをクレイジーに仕立てあげてきた「狂乱 Hey Kids!!」、挑発的な打ち込みサウンドが襲いかかる「容姿端麗な嘘」、この日一番の大合唱が響く「BLACK MEMORY」を連続でドロップ。

本当にオーラルはライブの完成度が高い。それは1曲1曲が死角のないサウンドメイキングを施されているから。ロックバンドのライブにありがちな「荒削りなサウンド」というものが一切なく、それでいて生々しい。楽曲の面でもそうだが、ライブでも完全に「オーラルにしか作れない空間」を作り上げている。他のバンドにはなかなか真似できない所業だ。

 

ラストは関西への感謝も込められた「LOVE(Redone)」。一瞬でピースフルな空気に変えてみせ、やはり今年もオーラルのライブの凄さを実感させた。

来年はニューアルバムのリリースも決定している彼ら。一体どこまで進化してしまうんだ。

 

 

 

打首獄門同好会(R-STAGE)

 

R-STAGEに登場したのは打首獄門同好会。既にその人気はお茶の間にまで浸透しており、CDJでは最大級のEARTH STAGEへの出演が決まっている。しかし意外にもレディクレには初登場。そしてCDJのステージは年越し後なので、実質レディクレが彼らにとってのライブ納めである。

会場の外から流れてくる「島国DNA」を聴き、どんどんステージに向かう人の足が早くなっていくのにも同情しながら会場に着くと、最前列ではやはりマグロが投入され、不規則に跳び跳ねている。スクリーンにはVJ風乃海が操る映像が投影され、ギターの音を聴かせたくてわざとボーカルを抑えている大澤会長(Vo,Gt)に代わって歌詞も見せてくれる親切っぷり。しかしスクリーンを見ずとも歌詞を口ずさんでいる人がめちゃくちゃ多いのにも驚かされる。

ちょうど晩飯時の時間帯に歌われる「ニクタベイコウ!」による魚&肉のコンビで食欲をそそらせた後は、

 

「どうも、この3日間で最もスクリーンの使い方がもったいないバンド、打首獄門同好会です(笑)」

 

と自己紹介。というのもR-STAGEのスクリーンは縦長の長方形なのだが、VJが流す映像ではアスペクト比が足りておらず、スクリーンの大半が真っ黒のままライブが進行していた。しかしMCの時はきっちりメンバーの笑顔が映される。

 

「来年はいよいよオリンピックイヤーということでね、みなさん来年もたくさん頑張って、経済を回して、日本全体を盛り上げていきましょうね!

では次の曲をお聴きください、「はたらきたくない」」

 

と爆笑を誘うと「はたらきたくない」では全国民の思いを代弁するかのように歌う。

 

「さっき働きたくないと言ったが、いやいや俺はむしろ、布団の中から出たくない!」

 

とまたも大澤会長の巧妙なフリから、今度は

 

「さむい」

 

の絶叫が響く「布団の中から出たくない」へ。どちらも否定形から入る曲だが、最後には

 

「はたらきつかれたね」

「布団の中から出てえらい」

 

と優しさを滲ませるのが彼らの人柄のよさを伺わせる。そして大澤会長は喋りがめちゃくちゃ上手い。

しかし

 

「本日12月26日は何の日かご存知ですか?そう、今年最後の二郎の日です!」

 

と「私を二郎に連れてって」、「きのこたけのこ戦争」とまたしても食べ物関連の曲が続いたのはこの後フードコートへ向かわせるレディクレの策略だろうか。

 

まさかのパンクアレンジが高揚感を加速させた「おどるポンポコリン」のカバーを終えたところで、

 

「皆さん、現在時刻は17時50分でございます。そう、もうすぐ隣のZ-STAGEに白でも黒でもないGLAYが出る時間帯でございます!なのでR-STAGEでは白いお米の話をしましょう!」

 

と最後に皆が待ち構えていたあの曲の前フリ。そして

 

「2020年が大豊作な一年になりますように!皆さん、ご唱和下さい!」

 

と「日本の米は世界一」を高らかに響かせ、初のレディクレのステージを大団円に導いてみせた。

みんなが知っている曲をみんなで大きな声で歌う。フェスならではの光景がそこには広がっていた。ライブ中も、ライブが終わったあとも、誰もが笑顔になっていた。

 

そしてライブ後、GLAYに向かう人もたくさんいたが、フードコートに向かう人も負けないぐらいたくさんいた。やっぱりこの時間帯の出演はレディクレの策略だったのではないだろうか。だったら次はお昼時にでも、Z-STAGEで。

 

 

 

東京スカパラダイスオーケストラ(L-STAGE)

 

今年はFM802と同じく30周年を迎えた東京スカパラダイスオーケストラ。これまでも斎藤宏介や横山健といったボーカリストを連れてレディクレのステージに立っていた彼らだが、今日のゲストボーカルは04 Limited SazabysのGEN、そして先程までZ-STAGEでライブを行っていたGLAYのTERUだ。TERUがゲストボーカルで呼ばれるなんてレディクレぐらいではないだろうか。

 

夏フェスではえんじ色のスーツをまとっていたメンバーだが、今日は白いスーツで登場。谷中敦はハットを被っており、相変わらず渋い。

さっそく「DOWN BEAT STOMP」でパーティーを始めると、「スキャラバン」、そして今年リリースされてセットリストにも定着してきた「遊戯みたいにGO」と続けているうちにL-STAGEに次々と人が集まってくる。スカパラのグッズを身につけている人は少ないけれど、色んなアーティストグッズを身につけた人が一堂に介する。これがスカパラだ。

 

「今年のスカパラは30年で一番忙しい1年でした!みなさんへの感謝を込めて、2003年の大ヒットナンバーを!」

 

茂木欣一(Dr)が甘い歌声でも魅せる「銀河と迷路」へ。今年この曲はトリビュートアルバムで04 Limited Sazabysによってカバーされていた。しかしここで披露されたのは茂木がボーカルをつとめるバージョン。ではGENは何を歌うのか…と思っていると、曲の途中でGENが呼び込まれ、そこからフォーリミ版の「銀河と迷路」へ繋げるという新旧メドレー形式。これは予想外であった。

今年はGENのみならず、Official髭男dismなど後輩ともたくさんコラボしてきたスカパラ。こうやって様々な世代と触れ合っていくことが、「PARADISE HAS NO BORDER」という彼らの哲学をより強めているのだろう。

 

まさにスカパラを体現するワードとなった「PARADISE HAS NO BORDER」を経て呼び込まれたのは、ライブを終えたばかりのTERU。そういえばTERUもトリビュートアルバムに参加していたっけ、とここで思い出し(津野米咲亀田誠治ピエール中野と共に参加していた)、披露されたのは「美しく燃える森」。同じ日にはこの曲のオリジナルバージョンを歌っていた奥田民生も出演していたが、TERUの歌はもう色気がすごい。後にも先にも彼の歌が聴けるのはもうこれっきりだろう。最後に抱き合っていたTERUと谷中の絵はとても美しかった。

もう一人ぐらいシークレットゲストがいるかな、とも思ったが、ゲストボーカルはここで終わり。30年目を迎えたからこそ力強く響き渡る「Glorious」、そして「ペドラーズ」を経て大阪での30年目のライブは幕を閉じた。

 

今年はトリビュートアルバムもリリースされ、同じく30年目を迎えたスペシャ習志野高校吹奏楽部とのコラボもあり、桜井和寿チバユウスケといった大物たちとタッグを組んだ新曲やオリジナルアルバムのリリースもあったりと盛りだくさんだった1年。谷中は

 

「30年で一番忙しい1年だった」

 

と語っていたが、来年以降ももっと彼らの描くパラダイスに連れていってほしいものである。

 

 

 

・Saucy Dog(L-STAGE)

 

L-STAGEのトリを託されたのはMUSIC FREAKSの新DJにも就任したばかりの石原慎也(Vo,Gt)擁するSaucy Dog。去年のレディクレはR-STAGEのトップバッター、今年の夏フェスでも割と早い時間帯での出演が多く、爽やかな楽曲からも朝のイメージが強かった彼らだが、まさかトリをつとめることになるとは。

口笛交じりのSEが夜というより日暮れというか、1日の終わりを感じさせる雰囲気の中でバンドのロゴが後ろに現れると、3人がふらっと登場。

 

「Saucy Dog始めます!」

 

と石原が元気よく挨拶すると、「雀ノ欠伸」からライブが始まるのだが、その瞬間、彼らがトリに選ばれた理由がわかった気がした。何せ楽曲から漂ってくるエンディング感がすごい。最後の最後まで盛り上げ続けていく、という今までのフェスの雰囲気とは違い、「1日お疲れ様」とここにいる全員を労うかのような温もりがある。間違いなくこの空気はSaucy Dogにしか作れないものだ。しかもステージに立つ3人の佇まいが見違えるほど頼もしくなっている。

 

昨年のヘビーローテーションナンバー「真昼の月」からはそんな優しさから一転、「ナイトクルージング」、彼らの躍進を決定付けた「ゴーストバスター」とアップテンポな楽曲が続く。そんな流れは

 

「嵐の中を手探りでさ 僕らは走って行くよ」

 

と地元のフェスでトリを任された覚悟を歌ったかのような「Tough」を含めて、

 

ユニコーンとかアジカンとかと並んでて。正直、めちゃくちゃ不安だった」

 

と語った石原たちの不安がそのままセットリストに表されているかのようだ。

「バンドワゴンに乗って」でそんな流れはいったん終わり、「コンタクトケース」では極上のバラードをL-STAGEに響かせる。彼らはフェスの場でもこういったバラードでも勝負できるバンドだ。そういった面では、今の盛り上げ重視なフェスの雰囲気において、彼らの存在はフェスへの新たな価値観を提示してくれそうな予感がしている。

 

ラストはとびきりにアットホームな「スタンド・バイ・ミー」で終わり。「いつか」はやらなかった。でもそれは「いつか」がなくても素晴らしいライブを成立させることができる、というバンドの成長を示すものでもあった。「いつか」をやらなかったからだろうか、今日のサウシーは不完全燃焼だった、とぼやいていた人がいたけれど、今日の彼らは地元でのライブ納めとして素晴らしすぎるライブをしてくれたし、

 

インテックス大阪でワンマンしてみたいなあ」

 

と呟いていた石原の夢が叶う日も、そう遠くないのかもしれない。

 

 

 

というわけで2日目終了。やはりラジオ局主催のフェスだけあって、どのアーティストもラジオへの愛が深いことがたくさん伝わってくるし、誰もがラジオの持つ可能性を信じている。だからこそ、自分ももっとラジオが好きになるし、もっと信じてみたくなるのかもしれない。

そんなことを感じた2日目だった。