Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving25 の 感想Part1
2日間にわたってYouTubeで公開される予定のMr.ChildrenのライブDVD「Thanksgiving25」。2017年に行われた25周年ツアーの最終公演の模様をパッケージした映像だ。DVDは持っているのだが、せっかくの機会なのでリアルタイムで視聴することに。こういう映像についてレポを書くことは普段はないのだが、ライブを見ていたら書きたい気持ちが沸々と沸き上がってきたので、2日間の振り返りとして読んでいただけたら嬉しい。
会場となったのは熊本県民総合運動公園。実はこの場所でライブを開催したのはミスチルが初めてだったとのこと。開場と同時にブラスバンドが「ヒカリノアトリエ」で出迎えるという始まりはまるでお祭りのようだ。
オープニングは今までのミスチルの名曲たちが断片的に散りばめられたムービー。シングル曲だけでなく「OVER」など隠れた名曲のフレーズも用いられているのがニクい。
そんな特別かつ大事なライブの幕開けに選ばれたのは、鈴木英哉(Dr)の抜けのいいスネアが開放的なスタジアムに響き渡る「CENTER OF UNIVERSE」。ミスチルのアルバムの中でもかなりマニアックな「Q」収録の1曲であり、つまりシングル曲ではないのだが、今この瞬間が世界の中心であることを高らかに宣言する様は納得のいく選曲だ。曲が進んでいくごとにみるみるスタジアムを飲み込んでゆく光景は凄まじいし、このスケール感は誰にも真似できない。
25周年ツアーということもあり、ここからのセットリストは時代を彩ってきたシングル曲の連発。赤と青のテープが飛び交った「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」では
「ねえ等身大の愛情で挑んでるのに 世間は暗い話題」
と今の社会状況を言い当てたような歌詞が印象的なのだが、そんな暗さをぶっ飛ばそうとこのライブ映像を放出してくれたミスチルには感謝しかない。
さらに今回のライブはホールツアーから続いてヒカリノアトリエメンバーが参加していることもあり、最後のサビ前のサックスは山本拓夫の生演奏。なんて豪華なんだ!
ところでこの曲ではMVがスクリーンに映し出されていたのだが、当時を知らない人からしたらメンバーの尖り具合にビックリしたかも。
桜井和寿(Vo,Gt)がアコギをかき鳴らしながら歌い始めたのは「名もなき詩」。この曲が収録された「深海」は「ミスチル現象」と呼ばれた社会現象を巻き起こしたアルバムとなったのだが、アルバムのセールスに反して桜井の心は深く沈んでいたこともあり、この頃のミスチルは影の濃い曲が多かった。きっとこの曲もそんな孤独の中で生まれた曲なのだが、そんな曲が25周年のタイミングで、スタジアム級の会場で万人に歌われている。なんて感慨深い光景なのだろうか。
セットリストを考える上で「どうしても外せなかった」という「GIFT」は、2008年にオリンピックに向けて書き下ろされた曲。いうなればミスチル流「WE ARE THE WORLD」のような壮大な楽曲なのだが、
「地平線の先に辿り着いても 新しい地平線が広がるだけ」
なんて歌詞が書けるのは地平線の先に実際に辿り着いたミスチルぐらいだろう。「ラララ」のパートをスタジアム全体で歌っている様は既にクライマックスのようなのだが、ここまでまだ4曲。改めてこのツアーがとんでもないスケールで展開されているのがよくわかる。
小春(チャラン・ポ・ランタン)によるアコーディオンが楽曲の新たな色を引き出した「Sign」を終えると、早くもセンターステージに移動するために小休憩が挟まれる。しかし観客を暇にさせまいと、ムードメーカー鈴木が率先して盛り上げようとしているのがとてもいい。しゃべるだけで歓声が上がる中川敬輔(Ba)と田原健一(Gt)にもいじりを仕掛け、その様子を微笑ましく見ているメンバー達からも、バンドがどれだけいい状態なのかが伝わってくる。
センターステージに8人の音楽家が集うと、ホールツアーのテーマソングだった「ヒカリノアトリエ」を披露。自分はこのツアーのドーム側に参加していたのだが、野外で聴くこの曲は何にも代えがたい心地よさがあっただろうなあ、ととても羨ましくなる。小春のコーラスもいい味を出している。
続いてセンターステージに4人だけが残ると、「君がいた夏」へ。デビュー曲であり、ミスチルとしては珍しく季節の歌、という特別な一曲を9月という夏の終わりに聴けた現地の人達はなんて幸せなんだろうか。
ピアノをバックに始まったおなじみの「innocent world」では銀テープがスタジアムを彩り、
「いつの日もこの胸に流れてるメロディー」
をミスチルは25年でどれだけ生み出してきたのだろうか、と思いを馳せてしまう。しかしもうリリースされて25年以上経つのに、なんてエバーグリーンなメロディをしているんだろう。
そしてミスチル最大のヒット曲「Tomorrow never knows」へ続くという豪華すぎる流れ。しかもこの曲もサックスパートは生演奏。今までは小林武史やSUNNYがキーボードでフレーズを代替していて、それもそれで素晴らしかったのだが、やはり生音は比較にならない迫力がある。
センターステージに桜井が一人立ち、
「桜井和寿が作った曲に人格があるとして。25周年を迎えたミスチルに歌ってほしいと言うんです。だから俺が代わりに歌います」
と音楽と対話してるような語りからアコギと共に届けられたのは「Simple」。
「10年先も20年先も 君と生きれたらいいな」
という言葉はMr.Childrenからの真摯なメッセージであると同時に、我々ファンからMr.Childrenへ向けた真摯なメッセージでもある。
その後ステージが暗転し、自然界の求愛行動を英語でナレーションしたドキュメント、家族連れもいるのに「発情」なんて言葉を使いながら髪盛りセットを薦めるテレビショッピング、「恋とは」について外国の少年少女のコメントが紹介されたラジオと謎のムービーが続き、なんか壮大な曲が始まるのでは、と思わせて(実際に「未完」ツアーでは壮大なムービー後に「進化論」が歌われた)、「思春期」というワードと共に牛の鳴き声が聞こえてきた…ところで髪盛りセットを装着した鈴木がスポットを浴びる。
そう、「思春期の夏 ~君との恋が今も牧場に~」だ(なんと22年ぶりの演奏とのこと)。まだミスチルがブレイクする前のアルバム「KIND OF LOVE」に収録されていた、鈴木がリードボーカルを歌うという今となっては貴重すぎる楽曲。まさかこの曲がセットリストに組み込まれると予想できた人は一人もいなかったのではないだろうか。
しかしきっと、何気なくYouTubeを見ていたMr.Childrenをあまり知らない人からしたら、この曲は開いた口が塞がらなかっただろうな、と思ってしまう。
「キュンキュンしてるかー!」
と叫ぶ鈴木の姿はさぞかし強烈なインパクトを残しただろう。
その後、桜井が衣装を変えて帰ってきたところで「365日」へ。当時、詳細を伏せてリリースされた「SENSE」のリードトラックだった楽曲だ。さっきの曲は何だったのか、と思うくらい、演奏も演出も真っ直ぐな形で届けられると、前半の締めくくりはドラマのおかげでリバイバルヒットも起こった「HANABI」。
「臆病風に吹かれて 波風がたった世界を どれだけ愛することができるだろう?」
またも今の状況を言い当て、問いかけたようなフレーズが放たれて、ライブ映像の前半は幕を閉じた。
序盤のMCで桜井は
「過去のどのライブよりもいいやつにしたい」
「みんなの期待を超えてみせる」
と話していたのだが、ここまでの時間でそれを実感させる有言実行っぷりがこのバンドのモンスターっぷりを物語っている。
実際、自分は幸運なことにミスチルのツアーはほぼ毎回参加できているのだが、「前の方がよかった」と感じたことはほとんどない。むしろ最近はどんどん若返っていっているようにも感じさせる。やはりMr.Childrenは唯一無二にして、日本のシーンに君臨すべくして君臨しているバンドなのだなと突きつけられた前半戦だった。
後半戦は明日。