Osaka Music DAYS!! day1 ~感染者がまた増えてきてるけどライブに行ってきたよって話

実に4ヶ月ぶりの更新である。というわけでブログっぽい文章を書くのも4ヶ月ぶり。何だか自分が書く文章のリズムが変わった気がして落ち着かない。まあ2月末からライブがことごとく潰れ、書くこともなかったので仕方なかったことではあるのだが(何本か配信ライブも見たが、そのレポは結局書かないことにした)。
もちろんライブがなくなった理由は説明不要。そいつのせいで数々のイベントが犠牲になった。借金を背負うことになったバンドマンやライブハウスも数えきれないことだろう。
しかも我々は特に根拠もなく、夏になればまあ少しはよくなるだろうと高を括っていた。だが訪れた現実はずっと悲惨で、主要都市での感染者は増える一方。各地で開催されるイベントも、収容人数5割以下という条件が付加されることになってしまった。
そんな中で開催されたのが、GREENSや清水温泉などのイベンターやFM802などのラジオ局、つまり地元の有志たちが一同に介して企画した2daysライブ、Osaka Music DAYS。初日となる今日は、今年も各地の夏フェスを盛り上げてくれていたであろうライブバンド達が集結するラインナップとなった。

さて、このブログでは基本的にセトリになぞらえながらこのバンドはどんな振る舞いをしていたか――なるべく鮮明に思い出しながら書くという手法を取っていたのだが、なにせ今日は待望すぎた1日。どうしても生音で鳴らされる曲を聞き入ってしまっていたし、その結果、各バンドがどんな振る舞いをしていたかはぶっちゃけ覚えていない。
だから今回は、会場がどんな様子だったか、といったことにスポットを当てて、今この状況で現場に行くかどうか迷っている人にとっての参考になればいいなと思いながら書いていくことにする。
ついでに、何年か後にこの年のライブのことを思い返す自分や他の誰かのための、タイムカプセル的な役割も果たしてくれたら、と願いながら。

開演30分前。駅から大阪城ホールへ向かって歩いていくと、既にたくさんの人で賑わっている。様々なバンTを着た人、ディッキーズを履いた人、大量のラババンを引っ提げている人。
お客さんだけじゃない。常にメガホン越しに注意事項を読み上げているイベントスタッフ、物販テントで元気よく声を上げる販売スタッフ。そんな人たちを眺めていると、ああ今から本当にライブが始まるんだとワクワクした。
大阪城ホールへ来るのは去年の10月以来。それほど時間が経っていないはずだったのに、久しぶりに見た大阪城ホールは、どこか懐かしさを漂わせていた。まるで5年ぶりくらいに来たみたいな錯覚すらある。それぐらい、今まで自分にとってライブは当たり前な日常だった。
諸々の手続きを済ませ、検温を終え、消毒グッズを受け取っていざホールへ。中に入った瞬間、今までこの場所で見てきたたくさんのライブのことがフラッシュバックして、比較的健康な姿でこの場所に戻ってこれたことが嬉しくて、思わず「ただいま」って叫びそうになった。

スタンド席に座り、アリーナを眺めると、やはり座席は等間隔で区切られていて、人はまばら。やはりこの景色はちょっぴり寂しい。でもよく考えたら大阪に5000人規模のキャパの会場ってないので、これはこれで新鮮。また、これまで見てきたどのライブよりもシンプルなステージ構造をしていた。客席を区切る都合上、今日はスタンド席をほぼ360度開放し、ドラムセットの後ろはいわゆるバックスタンド席として用意されていた。
つまりステージはかなり平坦で、上空と前後にちょっぴり照明がついている程度。ステージ脇には普通に他のバンドのドラムセットが複数スタンバイされていたり、ステージ後方もがら空きになっていてスタッフの動きが一目瞭然だったり…と、短期間で素早く用意された感がすごくて、なんだか大阪城ホールっぽくなくて、かなり新鮮な光景だったといえる。
さて、開演前に改めて注意換気。マスク着用、ソーシャルディスタンス、定期的な消毒を基本として、今日は大声での歌唱も禁止、とアナウンスされた。おいおい甲子園は普通にヤジ飛ばしてる奴いるぞ、と思いつつ、言わずに飲み込み、そして面白い、と感じた。今日の出演者は曲中にシンガロングやコール&レスポンスが巻き起こるのが日常茶飯事で、特にヤバTなんかはそれありきの曲なんかもあったりする。そこで歌うのが禁止、と言われたら。いったいどんなライブになるのか。ステージの構造といい、禁止事項といい、どうやら今日のライブは今まで以上に各バンドの本質を映し出しそうな予感がして、自分はとてもワクワクした。

そんなワクワクと同時に、ライブ前特有の謎の緊張感も合わさってきて、緊張しながらトップバッター、ハルカミライのライブが始まった。

セットリスト↓↓
ハルカミライ
1.PEAK'D YELLOW
2.君にしか
3.ファイト!!
4.俺達が呼んでいる
5.夏のまほろ
6.THE BAND STAR
7.世界を終わらせて
8.アストロビスタ

ヤバイTシャツ屋さん
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.かわE
3.Tank-top of the world
4.癒着☆NIGHT
5.ヤバみ
6.ハッピーウェディング前ソング

Hump Back
1.月まで
2.クジラ
3.拝啓、少年よ
4.ティーンエイジサンセット
5.また会う日まで

ROTTENGRAFFTY
1.金色グラフィティー
2.相殺微量サイレンス
3.This WORLD
4.「70cm四方の窓辺」
5.ハレルヤ

打首獄門同好会
1.88
2.筋肉マイフレンド
3.きのこたけのこ戦争
4.日本の米は世界一
5.明日の計画

サンボマスター
1.ロックンロール イズ ノットデッド
2.忘れないで 忘れないで
3.できっこないをやらなくちゃ
4.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
5.輝きだして走ってく

10-FEET
1.RIVER
2.ハローフィクサー
3.その向こうへ
4.蜃気楼
5.ヒトリセカイ
6.Cherry Blossom

加えてキュウソネコカミも出演予定だったが、残念ながら体調不良により欠席。今年は周年イヤーだったし、何よりも年初にリリースされた「冷めない夢」が彼らの気合いを物語っていた。シャングリラで無観客ライブもやってくれたことだし、地元での久しぶりの有観客ライブ、絶対に出たかったはず。いつか彼らのライブを見るときには、ハッピーな世界になっていればいいなあ。

さて、ライブの様子はどうだったか。
きっと今日出演していたバンドたちがいつか城ホールでワンマンをするようなことがあれば(実際Hump Backは11月にワンマンをするが)、きっとアリーナはオールスタンディングだっただろう。そして演奏中は各地でツーステやモッシュ、ダイブが巻き起こり、さながらライブハウスのような状態になっていただろう。
しかし今日はアリーナも座席形式。声だけでなく派手な動きも制限されたお客さんは、どのようにライブを楽しんでいたか。正直に言うと、ハルカミライの演奏中までは皆、どうもぎこちない雰囲気だった。なんとも手持ち無沙汰というか、戸惑いを隠しきれていなかった。
でも気づいたら、皆思い思いに動いていた。裏拍のリズムに乗せて体を八の字に揺らしている人、その場で疑似的にツーステをやる人、あるいは手拍子に切り替えた人。それはある意味、ここでモッシュピットを作ってサビでドーン、とか、そういった画一的な動きがなかった分、今まで以上に自由な空間が広がっている、という印象を受けた。こういう座席形式がテンプレートになっていくのかはわからないが、少なくともスタンドから見ていた自分からしたら、新鮮で面白い光景だったと思う。

もちろん声を出してはいけなかったので、幕張メッセで鳥肌が立つほど轟いた「PEAK'D YELLOW」の大合唱も聴こえないし、「あつまれ!パーティーピーポー」の「えびばーでぃっ!」の声も聴こえない。それどころかMCの笑いが起こる部分さえも、巻き起こるのは代替の拍手。本当は大きな声で、大好きなバンドの演奏の応えたかっただろう。でもそれができないから、せめて…といった具合の拍手だった。
そんなお客さんを見て、TAKUMA(10-FEET)はは「聴こえてるぞ!」と何度も鼓舞していた。自分も聴こえた気がした。誰も声に出してはいなかったけど、心の底から湧き上がってきた情熱が、見えない声になって会場中に響いている気がした。そして、そんなバンドとお客さんとのコミュニケーションは、本質的には何も変わっていなかったことに気づいた。
そんな中でも印象的だったのは、声を出したくても出せなかった皆のことを配慮してか、コール&レスポンスのパートをわざと小声でささやくように歌っていたヤバTだった。自分たちだって、久しぶりにお客さんの前でライブをするのだ。そりゃでっかい声で歌いたかったところだろう。でもそうしなかった。そこに彼らの優しさが詰まっていた。ハルカミライも言っていたように、パンクロックは優しい音楽なんだ、と再認識することができた瞬間だった。

世界は変わってしまった。ライブの様相も変わってしまった。それでも、そこに生み出されるコミュニケーションの本質は、変わっていなかった。いや、きっと変わらないだろう。変わらないだろうから、これからもそれを求めてライブに足を運ぶ人はいなくならないだろう。そんなことを思った一日だった。

未だにライブを行うことはどこかから冷たい視線を送られている気もする。大阪府の感染者数は日増しに増えていく一方だ。本当は開催しないに越したことはなかったんだろうけど、それでも開催してくれた。しかも収容人数の関係からチケットが高騰してしまったライブも数多くある中で、普段と変わらない値段でチケットを売ってくれた。主催者には本当に感謝しかない。
それに、こんな状況でも大阪に駆けつけてくれるバンドがたくさんいた。本当は不安だっただろうけど、それでも来てくれて、そんな姿は一切見せず、元気を与えてくれた。今日出演してくれたバンドたちにも、精一杯の感謝を送りたい。

また来たい。これさえあれこれさえあればいいもの、たくさん見つけたから。