Aimer Hall Tour 19/20 “rouge de bleu” ~bleu de rouge~ @フェスティバルホール 2020/2/14

 

 

※本記事には現在進行中のツアーのネタバレがございます。この先の閲覧は自己責任でお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「rouge de bleu(赤と青)」というタイトルを掲げ、昨年からロングランのツアーを回り続けているAimer。来月には「Fate」の映画との3作連続タイアップとなるシングルを控え、直近のシングルと相まって昨年リリースした傑作アルバム「Sun Dance」「Penny Rain」でたどり着いた到達点のさらに先へ進もうという意思を強く感じられる中でのワンマン。大阪では2days、今日はその初日だ。

 

大阪のホール会場の中でもとりわけゴージャスで上質な音楽が似合う(クラシックやフィルハーモニーのコンサートも行われている)フェスティバルホールという場所もAimerのアーティスト性とピッタリなのだが、そんな場内が暗転し、幻想的なSEが流れ始めると、暗闇の中で先にバンドメンバーがスタンバイ。中央に設けられたスロープの奥から遅れて白と黒のドレスをまとったAimerがゆっくりと現れると、照明が星空のように輝く中で「星が消えた夜に」からライブはスタート。普通ならアーティストが目の前に現れた時点で拍手が起こるものだが、もはやそんな暇すら与えないかのごとく、

 

「多分 君は少し強がりで」

 

という歌い出しから一気に会場を自身の世界へ包み込んでいく。自分はかれこれ1stアルバムの頃から彼女の動向を追いかけ続けていたが、当時の彼女はとにかくバラードを歌えば右に出る者はいないというイメージだった。そのイメージは今でも健在であり、彼女の声で

 

「大丈夫だよ 大丈夫だから」

 

なんて歌われたら自然と涙がこぼれてくる。少し前に移動してきて夜の始まりを告げる「Sailing」と続くあたり、どうやら今日のライブは静から動への転換を一つのコンセプトとしているようだ。

実は今日の公演には「bleu de rouge」という副題がついていたことを明かしたAimer。そんな副題が設けられていたなんて初耳だったが、どうやら2daysならではの試みのようだ。「bleu」サイドでは深い夜の歌を、「rouge」サイドでは熱を帯びた曲をピックアップしたと説明し、

 

「さらに深い青の曲を」

 

と「Blind to you」でさらにディープな世界へ潜っていく。

 

「いつだって傍にいて こらえきれず泣き出したって 闇の中をかすかに照らすよ

 そうやって生きてきた君のためだけの ポラリスになりたい」

 

と歌う「ポラリス」、何度も自分を

 

「ここじゃないどこかへ 誰も知らないどこかへ」

連れ出してくれた「夜行列車~nothing to lose~」と思い出の曲が続く。いや、思い出というより、今現在も自分を救ってくれている曲たちだ。「夜行列車~nothing to lose~」ではAimerがかつて自身の声を失った過去が赤裸々に綴られているが、きっとAimerがそうした体験をしなかったらこの曲は生まれなかっただろうし、自分もAimerと出会うことはなかったのかもしれない。彼女自身が過去にケリをつけるように歌った歌が、自分を、自分だけじゃないたくさんの人を救ってきたのだ。

 

ここでAimerがそれまで座っていた客席を煽り、立ち上がるように促すと、それに合わせて全員がスタンドアップ。ステージ上部には時計が現れ、さらに手拍子を織り交ぜながら、当時は唯一アルバムの中で異色を放っていた「AM○○」シリーズから最もダンサブルな「AM04:00」へ。

「bleu」のパートはずっと座って見ているものだと思っていたので、これには少々驚かされたが、その後の「Stand By You」でも手拍子を促し、サビでは手を掲げさせ、そしてその手を左右に大きく振る、というAimer主導のアクションが続いたことにはまたしても驚かされた。

 

だんだんと楽曲の空気が青から赤に移りゆくのを感じさせる中で、「Sun Dance」に収録されたとびきりポップな「We Two」はバンドメンバーに合わせてジャンプすることを要求し、手は終始Vサインでサビではぐるぐる回すという振り付けを指南したり、曲中は忙しなくあちこちを駆け回るという、かつてのAimerでは考えられないほどアクティブな楽曲だ。本人は曲終わりにゼーゼー言っていたけど、そこまでするのは

 

「楽しかったですか?」

 

という問いかけに笑顔で答える客席が見たいからだろう。かつてバラードばかりを歌っていた人がこんなに能動的に、自身から働きかけるような姿を見せるようになるとは誰が想像しただろうか。前半はコンサートのようだった今日の公演は、気づいたらライブになっていた。

 

そんな前半、青と赤の転換点を担ったのは「Torches」。まさに夜の歌でありながら、光の要素も持ち合わせている、このツアータイトルにピッタリな楽曲だ。物販では今日から新たに松明型のLEDライトが販売されることがアナウンスされており、次々にオレンジのライトが灯されていく景色はとても幻想的だった。しかし今日トーチを掲げていたお客さんは7割ぐらい。残りの公演ではもっとたくさんの人が持ってくれるようになるだろうか。

Aimerも同じく松明を掲げながら静かに、しかし力強く歌い上げると、松明を持ったままスロープの奥へ。するとスロープがどんどんせり上がっていき、Aimerを完全に隠した所で前半パートは終了。

 

スロープはそのまま二面の照明になり、バンドメンバーによる「これ本当にAimerのライブなの?」と思うほどハードなセッションで幕間を繋ぐと、照明が真っ赤に染まったところで再びスロープが下降していき、奥から今度は黒に白と赤のアクセントを加えた衣装のAimerが再登場すると、疾走感のある「STAND-ALONE」で「rouge」パートの始まりを告げる。

そこからはもう全く別人のライブに来たようで、ハードなサウンドの「Black Bird」では目を刺すような真っ赤な照明と同時にステージ全体に炎が点り始める。「Penny Rain」では土砂降りの雨に打たれる様をこれ以上ないくらいに表現していた同曲だが、こうして炎と共に見せられると「rouge」の要素ともピッタリで、つくづく彼女の歌は幅が広いな、と感じさせる(「真っ赤な太陽」というフレーズもあるし)。

 

「あわれみを下さい」

 

という歌い出しから悲鳴のような歓声も上がった「I beg you」もまた、Aimerのダークサイドを極限まで研ぎ澄ませた、業火のような赤さの曲だ。

 

「やがてキラキラ夢の中」

 

の部分で一段とギアを上げて声を張り上げるのもそうだし、

 

「ねえどうか傍にいて」 「愛してる」

 

という使い古されたフレーズすらも狂気的に聴かせる様は全てが圧巻だった。この歌はまさにAimerに歌われるべくして歌われているのだろう。

しかし観客がハンドクラップ担当で参加した「Daisy」、「コイワズライ」では一転して優しい歌を響かせる。直前の「I beg you」とのギャップがすごかったが、この振り幅こそAimerが培ってきた世界に二つとない力だろう。どんな曲を歌っても、Aimerが歌えばAimerの歌になるのだ。

 

再び観客を立たせる動作が「We Two」のデジャヴを感じさせた「3min」ではリズミカルなトラックに乗せてまたしてもステージの隅から隅まで移動し、あちこちに手を振りながら歌う。さらにスキマスイッチが手がけたことでめちゃくちゃ爽やかなアレンジになった「Hz」では

 

「いけますか大阪ー!?」

 

と元気よく煽るばかりでなく、

 

「拳を掲げてください!」

 

とも促す。武道館以降、Aimerのライブがこのようなモードになっているのは知っていたが、正直演者も観客ももっと控えめにやっているものだと思っていた。しかし実際にはそんなことはなく、Aimerはノリノリだしお客さんもノリノリ。まるで武道館よりずっと昔からこのモードでライブしていたかのようだ。ここでもまた、聴かせるパートから参加してもらうパートへ、まさに静から動への移行が如実に表現されていた。

そんな彼女の開放的なムードが会場一体となって表現されていたのが「ONE」。赤というより白というか、まさに太陽のような光あふれる瞬間を経て、Aimerは最後のMCでこう語った。

 

「今、私は新しい夜の中にいます。一度は「DAWN」というアルバムで夜明けを迎えて、光の中で歌っていました。でも心の中では8年前の、眠れない夜に寄り添いたい自分がいたのも事実です。

 光の中で歌うことで、たくさんの「あなた」に力をもらって、昔より強くなれたと思います。だから今度はまた夜を歌うことで、皆のことを守りたい。私にはこれしかないから」

 

「DAWN」リリース時のインタビューで、

 

「夜は明けたけど、いつかまた新しい夜が訪れる時が来る」

 

と彼女は語っていた。なるほど、どうやらその夜の時間が今まさに彼女の中に訪れているらしい。記事の冒頭、「「Sun Dance」「Penny Rain」でたどり着いた到達点のさらに先へ進もうという意思」というのは新しい夜のことだったのだ。

しかし「STAND-ALONE」や「Torches」を聴けば、それがただの原点回帰でないことは明らかだ。たくさんの出会いや別れを経験して、今再び夜に向かおうとしている彼女の姿はどこか勇ましく、かつてのアルバムにあった息を潜めているような感覚は感じられない。

 

「私にはこれしかないから」

 

の「これ」とは音楽のことだ。光の中で、彼女の音楽は見違えるほど頼もしくなった。ライブ本編は、そんな彼女が

 

「初めて強さを与えてくれた曲」

 

と紹介した「RE:I AM」で締め括られた。もちろん今日のライブは楽しかったし、感動した。でもそれ以上に、Aimerのこれからがますます楽しみになった。かつて自分が惹かれたAimerの描く夜の世界に、それもあの頃とはちょっと違う新しい夜の世界に飛び込んでいけるから。これから彼女はどんな歌を紡いでいくのだろう。

 

アンコールではツアーTシャツに着替えたAimerがバンマスの野間康介と共に登場。Aimerに代わって名前を叫ばれるほど愛されている野間の機材が黒い椅子と並列に並べられ、これから二人だけでアンコールに臨もうとしていることがうかがえる。しかしAimerはなかなか曲に行かず、大阪のおススメ料理を訊いたり(どうやら今大阪ではスパイスカレーが流行ってるらしい)、

 

「自転車で来たの?」

 

と地元の人に訊いたりとかなり長く話をしていた。彼女曰く、今日は緊張していていつもよりMCがグダグダだったらしいが、そんな中で彼女は何度も何度も

 

「ありがとうございます」

 

と口にしていた。本編のMCでも、終始丁寧な言葉で自分の思いを届けようとしていた。それはAimer自身がどれだけ真摯に音楽と向き合っているか、どれだけ一つ一つの出会いを大切にしているかを如実に表していた。そして今日まで彼女の歩んだ道筋はそんな誠実さの積み重ねだったのだと。

彼女の紡ぐ世界観や声に惹かれている人が多いと今まで感じていた。でも今日のライブを見て、ここに集まった人はそれだけでなく、みんながAimer自身の人柄に惹かれて集まっていたのだと感じた。ミステリアスなイメージのある彼女のそんな一面を知れたことが、何よりもライブに行ってよかったと思える要因だった。

 

ようやく始まったアンコールでは来月にリリースされるシングルから「marie」を披露。ピアノのみというシンプルなアレンジになったことにより、Aimerの歌の美しさを十二分に堪能できる素晴らしいアレンジだ。ところで「marie」は「RE:I AM」と同じくAimerのアナグラムになっているのだが、これには意味があるのだろうか。

「カタオモイ」もまた、同じくミニマムなアレンジになっただけでなく、アコギのフレーズをピアノが担うことで新たな魅力が引き出されていた。

 

「愛してる」

 

と最後のフレーズは「I beg you」と同じなのに、意味が全く違って聞こえるし、同じ人が歌っているとは思えない。本当に不思議なシンガーだな、とつくづく思う。

最後は

 

「始まりの歌」

 

と紹介された「六等星の夜」をもって、彼女はまた夜の世界へ向かっていった。しかしこれから始まる夜の物語はきっと、Aimer自身が星のない空に輝く光のように、誰かの夜を支えていくものになるのだろう。曲が終わり、最後の挨拶が終わっても、彼女は名残惜しそうにステージの端を何度も行き来していた。これほど音楽に対して、音楽を聴いている誰かに対して誠実に向き合える彼女だからこそ、またライブに来たくなると強く思えるのだろう。そう感じた。

 

Aimerを初めて知ったのは「Sleepless Nights」がリリースされた頃だった。当時の彼女はとにかくアルバムのタイトル通り、眠れない夜へ向けたバラードにおいては右に出る者はいないというイメージだった。

それから「RE:I AM」を始めとした澤野弘之との出会いにより彼女の世界が徐々に開けてきたこと、長い夜が「DAWN」で明けたこと、野田洋次郎やTakaといった凄腕ミュージシャンとの出会いから「daydream」が生まれ、武道館でのライブで「ONE」を初めて歌ったことで彼女が光をまとい始めたこと。その全てを見てきた。楽曲が幅広くなっただけでなく、アニソンシンガーというイメージからも完全に脱却した。今や彼女の名は海外にも響き、名実ともに唯一無二のシンガーとして存在感を放っている。

 

そんな彼女の歴史を知っているからこそ、ワンマンに行くのは今回が初めてだったのだが、最初から最後までずっと感慨深かった。それに、彼女がこれから向かおうとしている先がより明瞭になった。これからも自分の夜には、Aimerがずっと寄り添い続けてくれるのだろう。

ライブ終盤、Aimerは

 

「またAimerのライブに来てやってもいいかな~…って人はどのぐらいいますか?」

 

と問いかけていたが、その答えは迷わず「yes!」だ。

嘘とカメレオン 2MAN TOUR「へのへのもへじ」@梅田Shangri-la 2020/2/10

※本記事には現在進行中のツアーのネタバレがございます。この先の閲覧は自己責任でお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年の初ライブは梅田Shangri-laにて、嘘とカメレオンとネクライトーキーのツーマン。先日ニューシングルをリリースした嘘とカメレオンが、リリースツアーとして東名阪を回っている対バンツアーの中日、大阪公演だ。

嘘とカメレオンは最後にライブを見たのはたしかメジャーデビュー前、オープニングアクトとして炎天下の野外で強烈な印象を残した2017年のMORNING RIVER SUMMIT以来。ちょうど「されど奇術師は賽を振る」のMVが話題となり、初めてのミニアルバムのリリースを控えていた頃か。それからかなり時間が経ったが、バンドはメジャーデビューし、まさに進化の渦中にいる。あれからどれだけ成長しているのだろうか。

 

先攻はネクライトーキー。おなじみのポップなSEに合わせて元気よく飛び出してくると、和やかなムードを切り裂くようなカズマ・タケイ(Dr)のスネアの連打からまずは「ジャックポットなら踊らにゃソンソン」を投下。相変わらず濃い髭と更に長くなった髪の影響でメジャーアーティスト感ゼロの朝日(Gt)はいきなり頭をぶんぶん回しながらギターをかき鳴らし、のっけからエンジン全開なのだが、対照的に客席はまだ様子見状態。想像以上にアウェーな始まりとなったが、それでもイントロで歓声が上がった「めっちゃかわいいうた」では後半のパンキッシュなアレンジで徐々に熱を上げていく。

 

先日リリースされたメジャーデビューアルバム「ZOO!!」からまず披露されたのは「夢みるドブネズミ」。MVや音源はかなりポップな仕上がりとなっているこの曲だが、やはりライブで演奏されると硬派なサウンドとむーさん(Key)が操る曲の随所に散りばめられた効果音たちのギャップがいい意味で面白い。特別なことは特にやっていないはずなのにライブならではのアレンジになっている。

続いてネクライトーキー史上最難度の技術を要する「ぽんぽこ節」はレディクレで演奏した時の手探り感はほぼなくなっており、月末から始まるツアーへ向けてかなり仕上がっていっている印象。それでいていい意味での緊張感が残されており、ツアーを経てどれだけブラッシュアップされていくか楽しみな一曲だ。

 

嘘とカメレオンとはサーキットイベントで一緒になったことはあったが、対バンは初めてと語ったメンバー。特に朝日は以前、渡辺壮亮(Gt)とディープな話題で盛り上がり、もっさ(Vo,Gt)に驚かれたといった関係性を打ち明けていたが、ネクライトーキーは去年も緑黄色社会フレデリックといった初めましてのバンドから対バンに誘われていた。決して社交性が高いバンドではないけれど、それでもこうして対バンに呼ばれるのは5人の音楽が魅力的だから。だからネクライトーキーに声をかけた嘘とカメレオンはすごくセンスがいいと感じるし、自分も嬉しくなる。

 

MC明けの「夕暮れ先生」ではドラムと他の楽器とのズレが気になったが、すぐに持ち直して久しぶりの「がっかりされたくないな」へ。朝日はかつて

 

「ネクライトーキーの真の良さはバラード」

 

とどこかのインタビューで語っていた気がするが、その発言も納得できるほど素晴らしいメロディだし、もっさの歌が更に胸を締めつける。そういえばこの曲を初めてライブで聴いた1年前のワンマンもこの場所だったし、その日のライブではアンコールでむーさんの正式加入が発表された。あれからもう1年が経つのか。

 

静寂の中でもっさが朝日のギターのボリュームを徐々に上げていくというおなじみの始まりで大歓声が上がった「許せ!服部」では1サビ終わりからの急激なギアチェンジでフロアを熱狂させていく。そして間奏では

 

「ワーンツースリーフォー!」

 

といつもより長いタメの後、なんと嘘とカメレオンの「百鬼夜行」のイントロをぶっこんでくるというサプライズ。しかもむーさんによる銅鑼の音の再現まであり、とクオリティもバッチリ。これで一気に火のついた客席はもはや様子見など一切なしであり、もっさに合わせて顔も知らない服部へ向けて声を投げかけるのだった。ちなみに一大サプライズを終えた朝日は

 

「うっす(笑)」

 

と照れ臭そうに笑っていた。

 

またも朝日によって渡辺壮亮のお腹は意外と固いというカミングアウトがされた後、バンドは最新曲「北上のススメ」をドロップ。これもまた「ぽんぽこ節」のように細かなフレーズの多い変則的な曲だが、それらをこなしていっている5人の演奏力は確実に向上してきている。それは次の「こんがらがった!」にもちゃんと反映されており、曲名に反してバンドの演奏はバッチリ噛み合っている。

正直、今の時点でも頭一つ抜いて安定感のある演奏を見せてくれるバンドだと感じるが、それでも

 

「今の私たちの技量でメジャーに上がってもすぐコテンパンにされそうな気がする」

 

とむーさんがインタビューで語っていたりと、バンドは全く油断していないどころか自分たちを過小評価しているようにも感じる。それは5人全員が心のどこかで「自分から音楽を取られたら何も残らない」という危機感を感じているからだろうか。とにかくネクライトーキーが音楽にかける熱量は桁違いであり、だからこそこうして技術の向上にも躍起になっているのだろう。

 

終盤は必殺の「オシャレ大作戦」で梅田をヘヘイヘイさせると、ラストは「遠吠えのサンセット」。たとえどれだけバンドが大きくなってメインストリームに乗っかることがあっても、満たされている人は感じることができない、夕焼けに向かって走り出しながらどうしようもない激情をぶつけるこのマインドがずっとバンドの中にあり続けてほしいな、と願うし、ネクライトーキーならその心配はいらないだろうな、とも思える、そんな一瞬だった。月末からは自分たちのツアーが始まる。ツアーでも、ちょっとイカレテル夢をたくさん見せてくれ。

 

 

 

後攻は嘘とカメレオン。まずは怪しげなSEに合わせてメンバーが現れ、準備万端のフロアを煽っていく。その中でも特に尖った口調でフロアを睨む渡辺壮亮(Gt)と、一人だけファンタジーの世界から飛び出してきたような出で立ちのチャム(.△)(Vo)による

 

チャム(.△)「嘘とカメレオン」

渡辺「始めまぁす!」

 

の掛け合いで口火を切ると、「0」で一気に勢いを加速させていく。斜めに向いて腕を組みながら頭をぶんぶん降るチャム(.△)の佇まいは妖艶さすら感じさせるが、かつては「あの歌い方ではライブで声が聴こえない」と言われたりしていたし、実際に2年半前に見たライブでは、5曲程の持ち時間でも彼女の声はかなりバテていた。

しかしさすがにあれからずっと歌い続けていればもちろん歌は上達するもので、続く「binary」では呪術的なボーカルで追い打ちをかけ、歌メロに特化した「パプリカはポストヒューマンの夢を見るか」ではバンドの音に負けない芯のある歌声を聴かせてくれる。以降も、今日は最初から最後まで安定感のあるボーカルを見せてくれた。

 

渡辺が水分補給と称して2ℓのコーラを掲げる様もなんだか懐かしい(いったいこの人は年間どれだけのコーラを消費しているのか。そろそろタイアップとかしてもいいのでは?)中、ネクライトーキーのメジャーデビューを祝うメンバー。

 

「今一番脂が乗っているこの時期に二つ返事で出演してくれました!ありがとうございます。…今「お前の方が脂乗ってるだろ」って思った奴おるやろ!」

 

と渡辺がセルフツッコミをかまし、「脂が乗っているのはどっちだ」と言わんばかりに彼のキレのあるボーカルが先導する「JOHN DOE」ではコール&レスポンスも鮮やかに決めてみせる。終始攻撃的な姿勢の渡辺だが、

 

「ありがとう!」

 

と声を出してくれた客席への感謝も忘れない。

ミドルテンポな「鳴る鱗」で緩急をつけると、再び疾走感のある「ルイユの螺旋」へ。渡辺はネクライトーキーのことを

 

「珍しく自分から仲良くなりたいと思えたバンドだった」

 

と語っていたが、

 

「どこへ向かうんだろう?出口のないループの輪

 終わりはない 影が迫る」

 

と攻撃的なサウンドの中に深く暗い孤独が根ざしているのを感じさせる嘘とカメレオンの世界が、ネガティブな感情をエネルギーに昇華するネクライトーキーと共鳴していたのかもしれない。そう考えると、この対バンは実に似た者同士が惹かれ合って生まれた必然的な組み合わせだと言える。音楽性だけでなく、両バンド共にリードギターのステージ上での振る舞いも、感情を爆発させるスタイルでかなり共通項が多い。

 

百鬼夜行」のイントロを銅鑼の音も含めて完コピしてくれたことに感激した渡辺は、お返しと言わんばかりにもっさの声まねで「許せ!服部」のコール&レスポンスの部分を歌い、会場を笑わせる。そしてすっかりそれにハマったのか、観客にコール&レスポンスの一部を委ねたまま次の曲へのカウントを始め、「テトラポットニューウラシマ」へ(その後チャム(.△)に「テンポ全然違うじゃん!」と突っ込まれていた)。チャイニーズのカウントが可愛らしい曲だが、

 

「物語の主人公っていつも寂しそう」

 

のフレーズにはついハッとさせられる。そんなチャム(.△)の儚いフレーズが随所に漂う「Lapis」では2年半よりもたくさんの人が手を左右に振っていて、チャム(.△)はそんな光景を愛おしそうに眺めている。こちらまでハッピーなムードが伝わってきそうな一幕だった。

更に「アルカナ」で上質なバラードを聴かせ、嘘カメが勢いだけのバンドではないことを証明すると、

 

「本物見せたるわぁ!!」

 

と渡辺が吠えて「百鬼夜行」でラストスパートへ突入。渋江アサヒ(Ba)は狭い空間の中でもしっかりベースを弾いたまま回転するなど、視覚的にも盛り上げていくと、バンド最大のアンセム「されど奇術師は賽を振る」へ。

間違いなくこのバンドの代表曲だが、今日のライブを見ていると、この曲だけ異様に盛り上がっていた、なんてことはなかった。それはつまり、彼らはこの2年半で「されど奇術師は賽を振る」だけのバンドではないということを証明してきたということ。次に披露された最新曲「モノノケ・イン・ザ・フィクション」もまた、彼らの新たなキラーチューンとなりえるパワーを携えた曲だし、そうして彼らはどんどん過去の自分たちを超えていくつもりなのだろう。2年半ぶりに見た彼らは、メジャーという戦場に揉まれ、より強靭なバンドへと成長していた。

 

アンコールでは彼らは初夏に全国ワンマンツアーを巡ることを発表。さらにロックバンドがツアーをするということは…?と今後の企みを仄めかす一幕も。そんな決意表明も含めて「N氏について」を全力でぶちかまし、ネクライトーキーとの共通項がたくさん見つかった初のツーマンは幕を閉じた。

 

 

 

ライブ前はこの2組の組み合わせが不思議な感じがしていたが、ライブを見てみるとやはりプレイヤーとしても、音楽家としても、マインド的な面で通じている部分がたくさんあった。それはライブを見なければわからなかったことだろう。

何が言いたいかというとやはりロックバンドはライブを見てナンボだということ。というわけで今年もたくさんライブに行けたらいいな。

FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2019 DAY3 @インテックス大阪 2019/12/27

3日目。例年はもう既に終了しているレディクレだが、今年は3日間の開催。長いような短いような。

 

 

 

緑黄色社会(R-STAGE)

 

今日のトップバッターは緑黄色社会。去年はANTENNAのトリとして出演していたが、今年は映画やドラマの主題歌を手がけるなど活躍が認められ、ステージもワンランクアップだ。

これを見るのも最後か、とオープニング映像を見ながらちょっと寂しくなっていると、その間にメンバーが全員スタンバイしており、ジングルの鳴り終わりと同時にpeppe(Key)の紡ぐ美しいピアノの旋律から「想い人」でスタート。「視線」からスタートした去年同様、バラードを1曲目に持ってくるあたりが4人のチャレンジング精神を伺わせる。しかもオープニング映像であれだけ

 

「声を上げよ!拳を上げよ!クレイジーになるのだ…!」

 

と煽っておきながらである。

 

今月まで行われていたツアー同様、真っ白な衣装に身を包んだ4人がじっくりと演奏していくのだが、長屋晴子の歌声はやはり大きな場所であればあるほど力強く響いていると感じさせる。音のバランスも今まで見てきたなかでトップクラスにいい。

 

いつの間にか

 

「ルラララ」

 

のパートで観客の声がたくさん混じるようになった「始まりの歌」とトップバッターらしい選曲から「逆転」では展開の多いサウンドに呼応するかのように照明が目まぐるしく変化する。半年前の緑黄色夜祭でも披露されていたが、やはりツアーを経たことが大きいのか、見違えるほど楽曲が骨太になっているのを感じた。

緑黄色社会の最大の武器は長屋の歌なのだが、それを支えるバンドメンバーも捨て置けない。例えばpeppeのピアノやキーボードはこのバンドにとって切っても切れない存在だし、「想い人」は小林壱誓のギターソロがなければ成立しない楽曲だ。「Bitter」では穴見真吾がベースを使ってDJのスクラッチ音のようなものを加えてアクセントをもたらしているし、「Alice」ではサポートをつとめる比田井修のドラムがかなりアレンジを凝られていて、こちらもまたライブならではの聴かせ方をさせてくれる。あくまでも人懐っこいポップスを貫いているが、バンドらしさは損なわれていない。これが緑黄色社会の最大の持ち味だと自分は感じている。

 

イントロから歓声が上がったのはドラマ主題歌にも抜擢され、4人のブレイク前夜を告げる「sabotage」。力強いストリングスに負けじと声を張り上げる長屋との構図は、さながら豪雨の中を突き進んでいく様を示しているかのようで思わず胸が熱くなる。

そして今日のライブで最も驚かされたのはラストに歌われた「あのころ見た光」だった。新たにライブ版のイントロが付け加えられていたのもそうだが、間奏のコール&レスポンスの部分を長尺にし、しかも色んなレパートリーのコールを要求していたのにも驚かされた。その中にはさらっと「sabotage」のメロディをなぞったものも。これだけ進化と挑戦が詰め込まれていたなら前のツアーに行っておけばよかった。

 

「Bitter」の親指と小指を立てる独特の振り付けが広い会場だといまいち浸透していなかったり、まだまだな部分はあるけれど、いずれ彼女らの歌がもっとたくさんの人に届くようになるまで時間はかからないだろうし、Z-STAGEにたどり着くのも時間の問題だろう。そう感じられた万感のライブだった。

 

 

 

BIGMAMA (L-STAGE)

 

レディクレには常連、かつFM802とも特に縁の深いBIGMAMA。今年はL-STAGEでの出演。レディクレで見るのは2015年以来だ。

荘厳なSEが高揚感と緊張感を高めていく中、スーツをばっちり着こなした5人が登場。バンドの屋台骨であるリアド偉武(Dr)の脱退が発表されてから初めてのライブということもあり、何だか見ている側も固唾を呑んで見守っている感じがする。そんな空気を

 

「RADIO CRAZYにようこそ。ご案内します、新世界へ!」

 

と「荒狂曲 "シンセカイ"」のスリリングな展開で急変させていくと、「ワルキューレの非行」ではさらにヘビーなサウンドを響かせる。序盤のこの2曲、そして先程までライブをしていた緑黄色社会の長屋晴子と共演する予定、ということは今日のBIGMAMAは完全にRoclassickモードのようだ。その予想通り「Swan Song」でレディクレをバウンスさせると、こちらはかつてFM802の番組ともコラボレーションしていた「神様も言う通りに」というレディクレならではの選曲。

 

そして「LEMONADE」のイントロと同時に、緑黄色社会の長屋晴子を呼び込んで同曲を披露。今年、この二組はスペシャの対バン企画で初共演していたのだが、それがきっかけでこのフィーチャリングが実現。長屋の歌声はバイオリン・東出真緒の旋律にぴったりである。 さらにもう一曲、ということで前回の対バンでも長屋を招いて歌われていた「No.9」へ。この曲を聴くと一気に年末という感じが伝わってくるし、来る新年が楽しみになってくる。金井政人と長屋の歌のハマり具合はそんな予感をさらに高めさせてくれる。

 

大阪をはじめとしたご当地バージョンが何通りもリリースされ、ヘビーローテーションにも選ばれた「MUTOPIA」とこれまたFM802ゆかりのナンバーを届けると、「高嶺の花のワルツ」、「誰が為のレクイエム」と駆け抜けるまでMCは一切なし。リアドの件についても全く触れなかった。それは言葉で伝える必要はないとメンバーが判断してのことだろうし、その代わりに彼らは音楽をメッセージとして飛ばしてみせた。

ただただ、今の自分達を焼き付けてほしい。そんな気概がステージから伝わってきた。しばらくBIGMAMAのライブには行っていなかったが、これは来年のツアーに行くしかない。

 

 

 

フレデリック(Z-STAGE)

 

去年に引き続きZ-STAGEに呼び込まれたのはフレデリック。先日には大阪でツアーファイナルを終えたばかりだ。

 

フレデリック、始めます」

 

を合図に、初っ端から大量のレーザーが飛び交う「飄々とエモーション」でライブが始まるのだが、三原健司(Vo,Gt)はもちろん堂々とはしているものの、ワンマンの時よりもかなり感情が昂っている。その姿は歌いながら冷静さと本能の間で葛藤しているかのよう。そしてそんな自身の状態を

 

「みんなさっきのバニラズ見ましたか?(たくさんの手が上がる)すごかったですよね。俺も泣きながら見てました。

あいつらは壁を乗り越えて進化していたんです。だから俺達もこの1年を無駄だったと思わせたくないんです!バニラズ超えたいんですよ!」

 

と、プリティの怪我を乗り越えて復活した盟友、go!go!vanillasへの明らかな対抗心をもって説明していた。

フォーリミやオーラルもそうだが、フレデリックらの世代のバンドはフェス文化の黎明期にデビューし、その文化の中でお互いをリスペクトしながらもライバル視し、切磋琢磨してきた。だからこそどのバンドも「他のバンドには負けたくない」という思いが人一倍強いし、その精神をもって各地のフェスでたくさんの人を巻き込んできた。

 

「切り裂いて切り開いて行けNEW SCENE」

 

というフレーズ通り、そんなフレデリックらの世代の持つ熱量がシーンを変えてきたことを告げる「シンセンス」からは妖しい照明がインテックス大阪に集まった人々を音楽の中へ「逃避行」させていく。そしてワンマン同様に長尺のシンガロングパートが加えられ、今の彼らがやりたいことの中核を担っている「イマジネーション」ではこの日最大級のシンガロングを響かせていく。前回のZeppで聴いたときも圧巻だったのだが、やはりこれだけの人が集まるとさらに楽曲のスケールが大きくなる。横浜アリーナではどんな景色が生まれてしまうのだろう。

 

今年は「フレデリズム2」をリリースし、高速ダンスロックからの脱却と進化をもってフレデリックフレデリックらしさを新たに定義してみせた。前半はそんな新たなフレデリックの様相を濃密に押し出したセットリストだったが、

 

「レディクレ、遊ぶ?遊ばない?遊ぼうぜ!」

 

と「KITAKU BEATS」からは「オンリーワンダー」と、フレデリックの歴史を支えてきたダンスナンバーがずらりと並ぶ。そしてやっぱり最後は

 

「ごめん、さっきはオンリーワンダーとか言ってたけど、今日だけはナンバーワンになりたい!!」

 

と健司が叫んだ「オドループ」。音を止めてもカスタネットパートの手拍子が完璧に決まってしまうのは、彼らがこの曲をもって戦い続けてきた証拠だった。 地元でのライブ、そして同世代に刺激された後のライブということもあり、今日のフレデリックは前編に渡ってイマジネーションを刺激しまくる痛快なライブだった。一体彼らはどこまで進化してしまうんだ。

 

 

 

SUPER BEAVER(Z-STAGE)

 

5年前にANTENNAに初出演して以降、着実に一つずつステージを大きくしていった15年目のインディーズバンド、SUPER BEAVER。今年は遂に最も大きなステージ、Z-STAGEでの出演である。

 

でかでかとバンドのロゴがZ-STAGEに現れると、SEに乗せて4人が登場。今年の彼らを引っ張っていった楽曲といっても過言ではない「27」でライブは幕を開けた。そのまま「閃光」まで一気に駆け抜けると、

 

「LIVE HOUSE ANTENNAからやって参りました15年目のインディーズバンド、SUPER BEAVERでございます!」

 

と「青い春」では手拍子を要求しつつ、瑞々しい衝動を爆発させる。さすがにANTENNAに出演していた頃とはセットリストはガラリと変わっているが、ステージが大きくなっても芯の部分は何も変わっていない。4人全員が一人一人の目を見て歌い、その奥へ訴えかけるように音を届けようとする。ただそのことをバンドはずっと守ってきた。その結果が今日のZ-STAGEなのだろう。

赤と緑の照明がギラギラと瞬く「正攻法」では人差し指をチラチラと左右に振る渋谷龍太を筆頭に、これぞビーバー、というよりこれぞロックバンド、と呼ぶべき鋭利なサウンドが突き抜ける。一転して「予感」ではダンサブルなリズムにとびきりポップなメロディが乗り、会場を楽しい方向へ連れ出していく。決してロックが主流とはいえない昨今のトレンドの中で、これだけ純粋なバンドの音楽がたくさんの人に届いているという事実はそれだけで嬉しくなるし、トレンドがどうとかは関係ないのだな、と思い知らされる。

 

「俺たちの音楽は現実逃避のためにあるんじゃない。現実と向き合うためにあるんだよ。

嫌なことを置いていくんじゃなくて、来年に持っていって、それも全部含めて自分だと思えるようになればいいんじゃないかな」

 

と渋谷は語った。それはこの3日間でどのアーティストも口にしなかった言葉だった。捉えようによっては厳しい言葉にも聞こえるだろう。でもSUPER BEAVERを語る上では至極真っ当な言葉だと感じたし、そんな言葉の後に続いた「人として」の金言に溢れた歌詞の説得力をより強めていた。 そんな時間を締め括ったのはフェスで演奏されるのは珍しいのでは、と感じた「嬉しい涙」だった。

 

「ああ 僕らの歓びは 絶えず歌い続けた歌を あなたまで口ずさんでいる今日で」

 

来年も、ビーバーの歌がたくさん聴けたらいいな。

 

 

 

・[ALEXANDROS](Z-STAGE)

 

こちらもレディクレの常連、[ALEXANDROS]。川上洋平FM802ではMUSIC FREAKSのDJをつとめていたこともあるなど、802とは切っても切れない関係だ。

いきなりユニバーサルミュージックのロゴが出てくるなど、映画が始まるのでは、と思わせるスタートから、楽曲のパーツが散りばめられたエレクトロなSEに合わせて3人とキーボードのRose、ドラムのリアドがスタンバイ。そして始まったのは「Run Away」だ。これまでもフレーズの一部を引用したライブ版のイントロが加えられることが多かったこの曲だが、このままアルバムに収録してほしいぐらい絶妙なアレンジが毎回施されているのがすごい。そして川上の伸びやかな歌声はやはり大きな会場では何倍にも膨れ上がって観客と共鳴していく。スタジアムロックという言葉があるが、[ALEXANDROS]の場合はメンバーの佇まいもスタジアム級だ。

 

シームレスに音を繋げたまま川上が白いジャズマスターを手に取ると「Starrrrrrr」では眩いばかりのメロディと旋律がZ-STAGEを彩る。すると聞き覚えのある音色が用いられた打ち込みから始まったのは久々に聴く「Stimulator」。そのデジタル感を引きずるように、今年から磯部寛之(Ba)のベースも白井眞輝(Gt)と同じフライングVになり、より一層メタルバンド感が増した「Kick&Spin」とアルバム「Me No Do Karate.」のナンバーが続く。当時は雑草魂が投影されまくっていたこの頃の楽曲たちも、今となっては聴こえ方が変わって彼らの清々しいほどのロックスター像を見せつけるかのようなスケール感をまとっている。

 

今年はツアー中に磯部が負傷したり、絶対的なドラマーであった庄村聡泰が持病で離脱するなど、受難が続いた彼ら。だがバンドは歩みを止めることなく、短いスパンで新曲を発表してきた。そんな1年の最後に発表されたのが「Philosophy」。川上はアコギを手に取り、スクリーンには先日行われた「18祭」に書きおろした歌詞が投影されるのだが、

 

「下向きながら 目線上げて睨む方が僕らしいや」

 

というフレーズは誰かを意識したものではなく、[ALEXANDROS]の生き方そのものだ。

 

「Philosophy」もそうだが、今年の彼らの楽曲は青さや刹那性が特に強く表出していたように思える。そんな刹那性が発揮された「あまりに素敵な夜だから」は

 

「どうした? 私はまだこんなとこで終われない」

 

とオシャレなメロディの中に確かな情熱の火を感じる、彼ららしい新境地のナンバーだ。 そんな彼らが

 

「帰りたくないよー!」

 

と叫びながら大阪で最後に鳴らしたのは「ワタリドリ」だった。ここにいる全員を眩い光の先へ導いていくような彼らの力強さと、その裏に見え隠れするパーソナルな葛藤、それでも

 

「傷ついた大阪を笑わせたいから」

 

と歌う彼らの姿に、今年も胸を打たれた。

 

「ロックは優しいものだ」

 

と以前誰かが言っていた気がするが、そういう意味では[ALEXANDROS]はこれからもずっと自分にとって、いつまでも青いメロディを響かせてくれる最強のロックスターだ。 しかし最後の 「アレキサンドロスでした」 とパワポか何かで即興で作ったみたいなフォントの文章はよくわからなかった。

 

 

 

・ネクライトーキー(LIVE HOUSE ANTENNA)

 

3日間の最後、そして今年のライブ納めはネクライトーキー。今年はむーさんが正式加入し、石風呂時代の楽曲をリアレンジしたミニアルバムのリリースもあり、ツアーを行えば全箇所ソールドアウト、と大活躍の1年だった。そんな1年の締め括りとして出演するレディクレには初登場だ。今年はこれまで3本のライブを見てきたが、フェスの場で見るのは初めて。

 

ワンマンのキャパを考えたらANTENNAは場違いだろうと思うほどの人の多さの中で、おもちゃ箱をひっくり返したようなポップなSEに乗せてメンバーが現れるのだが、朝日(Gt)は自身のスマホで満員の会場を撮影していた。コンテンポラリーな生活の頃からずっとホームにしてきた大阪でこんな景色が見られるのは、彼自身も思うところがたくさんあるだろう。

 

タイトルに反して音楽への愛を歌った「音楽が嫌いな女の子」からライブが始まるのだが、相変わらずこのバンドはCD音源とライブでの演奏が桁違いに違う。朝日は叫びまくりながらギターをかき鳴らすし、藤田(Ba)とカズマ・タケイ(Dr)の骨太なリズム隊は安定感と存在感を兼ね備え、その上でむーさんはカラフルなサウンドを自在に操る。そんな個性の洪水のような中で、もっさ(Vo,Gt)の歌声は決してそれらにかき消されることなく、むしろその中でいちばん目立っているのではないか、と思うほど突き刺さってくる。

皆殺しのメロディでANTENNAに爪痕を残しまくった「こんがらがった!」に続いてもっさがお立ち台の上に立ち、

 

「よ~!」

 

とお腹を叩く仕草を見せると、「ポンッ」という抜けのいい音から最新曲「ぽんぽこ節」へ。何度かライブでも披露されているとはいえ、やはり演奏の難易度が高いのか、一人一人がひたすら自分のパートに集中しまくっている。自分達が作った曲を披露しているというよりは、「ぽんぽこ節」という楽曲にネクライトーキーが挑んでいるみたいな構図だ。ツアーが始まる頃にはもう少し余裕のある姿が見られるだろうか。最後のサビ前にお立ち台の上でお腹を拳で叩きまくる藤田がとてもかっこよかった。

 

そしてこちらも最新曲、昨日802で解禁されたばかりの「夢みるドブネズミ」。自分達のことをドブネズミに投影し、ネズミ年となる来年に向けての覚悟や決意が随所に表れていて、サビはめちゃくちゃキャッチャーなのに胸が熱くなる。これからのネクライトーキーを担っていってくれる楽曲になるだろう。

 

前回のツアーでは6分以上に及ぶ一大エンターテイメントとして度肝を抜いた「許せ!服部」がフェスバージョンになるとどうなるか気になっていたが、藤田のうねるベースを合図に楽曲が一気に加速すると、

 

「ワンツースリーフォー!」

 

を観客に委ねてかなり短めにフィニッシュ。この曲単体で楽しませるというよりは、後の流れを重視したことでいい感じの尺に収まっていたように感じる。そして勢いはそのままに今度は

 

「5!」

 

から始まるカウントダウンから必殺のキラーチューン「オシャレ大作戦」へ。

 

「レディクレヘヘイヘイ」

 

と聴くと、改めてネクライトーキーがレディクレに呼んでもらえたという事実がとても嬉しいし、もっと大きな場所でヘヘイヘイしているところを見たい、と思わせてくれる。そして今日もカズマ・タケイのドラムソロ、むーさんのキーボードソロもばっちり決まっていた(リハの時にオーケストラヒットの音を出したら笑いが起きてたけど)。

 

そしていよいよバンドの遠吠えがたくさんの人に聴こえるようになったことを感じさせる「遠吠えのサンセット」で激情を爆発させた5人。初のレディクレの舞台を鮮やかなポップスと鋭利なロッで染め上げてみせた。

ANTENNAステージはL-STAGEと繋がっており、この後のL-STAGEにはキュウソネコカミが待ち構えていたため、アンコールはないかと思われたが、それでもアンコールを求める声にメンバーも大急ぎで登場。

 

「さっさと終わらせてサカナクション見に行こう!(笑)」

 

と朝日があっけらかんと締め括り、「めっちゃかわいいうた」で今年最後の

 

「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈」

 

をバッチリと決めてみせた。

来年はいよいよメジャーデビュー。めちゃくちゃかっこいい5人がメジャーの力を得てしまったらどうなってしまうのか些か末恐ろしくはあるが、きっと5人なら大丈夫だろう。ネクライトーキーがレディクレの、そして日本のロックシーンの天下を獲る日はすぐこそ。これからもイカレテル夢をたくさん見せてくれ。

 

 

 

 というわけで初の3日間開催だったレディクレは終了。今年はL-STAGEとZ-STAGEに巨大ディスプレイが設置され、ビジュアライザ的な映像演出がなされたりしていた。あのステージセットだけを見ればCDJともいい勝負ができそうな豪華さだ。正直うまく使いこなせてないと思えるアーティストもいたが。 3日間の開催、最初は長いかな、と思ったが、やはり終わってみればあっという間。それもそのはず、どのバンドも関西でのライブ納めとあってめちゃくちゃ気合いが入っていて、どのバンドも今年ベストクラスのライブを見せてくれたからだろう。 そしてそんな気合いの入る場所を毎年提供しているFM802は本当に凄い。これだけ大規模なフェスを作り出せるラジオ局はFM802くらいだ。 それはラジオがまだまだ時代遅れなメディアではないことの証明。これからも末永く続いて欲しいから、来年もまたこの場所で。

 

FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2019 DAY2 @インテックス大阪 2019/12/26

レディクレ2日目。今日は雨が降っていていつもよりかなり気温が低い。しかしレディクレは室内フェス、しかも会場は半袖でもいけそうなほど暑いので雨も気にならない。

今日の目玉はもちろんGLAY。そもそもGLAYが何かしらのフェスに出演すること自体が初めてなのではないか、と思うぐらいには貴重。それもこれもJIROがFM802でDJをやっているから。まあGLAY見てないんですけど。

 

 

 

ヤバイTシャツ屋さん(Z-STAGE)

 

4年前にオーラルの裏でANTENNAを真夏の熱狂空間に変え、それから毎年ステージの規模を大きくしてきたヤバイTシャツ屋さん。遂にZ-STAGEに到達である。もう既に規制がかかりそうなほどたくさんの人が集まる中、昨日と同じく飯室大吾が登場した前説では

 

「昨日はロットンのステージ、餅つきとやって、そろそろ自分達の音楽を鳴らしたいんじゃないかとウズウズしております!」

 

と勢いよく紹介され、オープニングムービーを経て元気よく登場。

 

「おはようございまーす!」

 

と挨拶もいいところにさっそく「あつまれ!パーティーピーポー」で満員の会場を踊らせていく。よくヤバTのライブは頭を空っぽにして楽しめると言うが、彼らはそれだけでなく、空っぽになった頭に「楽しい」をぎゅうぎゅうに詰め込んでくる。だからライブを見ているときは邪念が生まれないし、実は数あるバンドの中でも最も集中できるライブをできていたりする。

「Tank-top of the world」からは「鬼POP激キャッチャー最強ハイパーウルトラミュージック」、そして関西のローカルネタだからこそ意味がわかってコール&レスポンスがさらに盛り上がる「喜志駅周辺なんもない」、さらに今年最大級の

 

「キッス!」

 

コールがこやまたくや(Vo,Gt)の声をかき消しそうなほど響く「ハッピーウェディング前ソング」までほぼノンストップ。少しでも多くの曲を詰め込もうとする彼ららしい戦い方だ。

今年はフェスでもトップバッターをつとめることが多かった彼ら(こやまはMCで「楽屋来てもまだ誰も来てないのが悲しい」と愚痴をこぼしていた)。朝一、といってももう時刻は正午を迎えようとしている中、MCになるとしばたありぼぼ(Ba,Vo)はなぜかひそひそ声で話しはじめる。

 

「みんなまだ起きてないから…びっくりさせようや」

 

と寝起きドッキリを計画。しかし

 

「やっほー」

 

も囁き声で言うというボケで会場がいい感じに温まると、

 

「デカい音出すぞ!」

 

と「Tank-top Festival 2019」で再開。

 

「今年のFM802ヤバイTシャツ屋さんの関係は、まさにこんな感じでした!」

 

と最新曲「癒着☆NIGHT」に繋げると、「無線LANばり便利」ではフェスという楽しい場に来ているはずなのに

 

「家 帰りたい Wi-Fiあるし」

 

の大合唱を起こさせるという異様な、しかしだんだんとスタンダードになりつつある光景を生み出す。ヤバTのライブはいつもこんな感じでひたすら楽しいが連発されるのだが、

 

「ヤバTの曲を世界で初めて流してくれたラジオ局がFM802でした!ばんちゃん(DJの坂東さえか)がキュウソのセイヤさんにCD渡してくれて、それで見つけてもらいました。

音楽で受けた恩は音楽で返したいと思います!」

 

という「ヤバみ」前のMCは思わずグッと来た。FM802としても、地元関西で生まれ育ったバンドが今や毎年紅白に出れるのでは、と期待されるほど大成してくれたことが本当に嬉しいだろうし、坂東さえかはこの景色を見てどんなことを感じるのだろうか。

そんなこやまの恩返し宣言の通り、ラストの「かわE」までほぼノンストップ、時間ギリギリまでフルに用いたセットリストを持って、ヤバTは初のZ-STAGEを完遂してみせた。これから何度も立つであろうこのレディクレの舞台で、ヤバTは今年一番の輝きを見せてくれた。

今年は様々なフェスで初のメインステージを経験し、サンリオピューロランドでのワンマンなど彼ららしい挑戦がたくさんあった。そしてそれは来年も続く。次は志摩スペイン村で。

 

 

 

SCANDAL(L-STAGE)

 

今年はプライベートレーベル「her」を設立し、一気にバンドのイメージを刷新したSCANDAL。けたたましいエレクトロなSEに乗せて4人が現れると、新たなSCANDALの方向性を示した「マスターピース」からライブはスタート。さらに「Fuzzy」と繋げていくことで、今の彼女らがやりたいことは何なのか、ということをはっきりと観客に示していく。2年前にも一度レディクレのステージで見たことがあるが、その時とはメンバーの立ち振舞いや楽曲の雰囲気が別物だ。何というか、しがらみから解放されたというか、優等生バンドというイメージから脱却したというか。

 

しかし「瞬間センチメンタル」の間に違和感が生じる。ここまで割と音響がいいはずのL-STAGEでHARUNA(Vo,Gt)の声がなかなか聴こえない。そのことについて、MCでははっきりと

 

「今日は思うように声が出ない」

 

HARUNAは告白。しかし全く出ないというわけでもないのでライブは続行。HARUNA自身も最後まで歌いきることを宣言したが、すぐさまMAMI(Gt)とTOMOMI(Ba)が

 

「(HARUNAがダメなところは)私たちも歌うからね」

「今日はレディクレバージョンということで!」

 

とカバーに入ったのがこのバンドの絆の深さを感じさせた。

 

「みんなが絶対好きそうなやつです!(笑)」

 

と自身を覗かせた「A.M.D.K.J.」からはHARUNAがハンドマイクで堂々と歌う「最終兵器、君」と最新曲が続く。この辺りは今年はひたすら「ロックバンドであること」に振り切り、数々のライブ猛者とも対バンを繰り広げてきた彼女らの経験値がしっかり活かされている。ニューアルバムはかなりパンチの効いた1枚になりそうだ。

思えばこの頃から今のSCANDALの雰囲気に通ずるところがあったなあ、と改めて感じさせた「テイクミーアウト」からは

 

「みんなに任せたー!」

 

と「STANDARD」では散弾銃のように連発されるコール&レスポンスを完璧に決めてみせる。そしてラストは

 

「いつだって思ってたイメージに届かない」

 

と悩みや覚悟が現れた歌詞が今のバンドの現状をよりリアルに刻名している「SCANDAL BABY」。中盤からはメインのマイクをTOMOMIが完全に奪い去り、スペシャルバージョンで届けられた。

 

「本当はいつもあなたにわかってほしいと思ってたよ」

 

というフレーズがあるが、今なおSCANDALに偏見を持っている人は少なからずいるかもしれない。でもそういう人たちも、今のSCANDALのライブを見たらそんな偏見は消し去ることができるだろう。それぐらい今の彼女らは目指す像がはっきりとしている。ライブ後、「可愛かったー」と話していた人がいたけど、もう可愛いだけじゃ終わらない。

 

 

 

04 Limited Sazabys(Z-STAGE)

 

レディクレには2年ぶりの出演となる04 Limited Sazabys。では去年は呼ばれていなかったのかというとそうではなく、去年はHIROKAZとRYU-TAのギター2名が体調不良になってしまい、やむを得ず出演をキャンセルしたのだった。

それだけに今日の彼らはリベンジに燃えていていつも以上にやる気満々。まずは超満員のZ-STAGEに向けて最強のキラーチューン「monolith」をぶちかますと、KOUHEI(Dr)が中指を立てて闘争心を刺激しまくる「fiction」、そしてフェスでやるのは初めてでは?という「Montage」からすっかりフェスのセトリにも定着した「Alien」まで休憩なし。

ラジオ局主催のフェスらしく、DJ風にアレンジされたMCでは昨年のっぴきならない理由で欠場してしまったことを詫び、

 

「某先輩にカバーしていいっすか?って聞いたら快くオーケーもらったんで聞いてください!FM802、2018年のヒットナンバー!」

 

と披露されたのはまさかの「栞」。元々はFM802が毎年やっている春のキャンペーンソング、ということでクリープハイプ尾崎世界観が書き下ろし、それをGEN(Ba,Vo)をはじめとした豪華ボーカリスト達で歌い上げた曲だ(あいみょんUNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介、sumikaの片岡健太なども参加していた)。まさにレディクレでしか聞くことのできないフォーリミアレンジ版に会場が沸き立つと、さらに上を目指して

 

「Crazy Crazy なりたい」

 

と「Warp」、「Kitchen」とフォーリミ流ポップスを盛大に打ち上げると、

 

「続いては~、04 Limited Sazabys2014年のヒットソング!」

 

とこれまたラジオDJっぽい前口上から「swim」へ。本当にテンポが良く、不純物が一切入らないスムーズな流れでライブを進行させていくのは彼らの売りだ。

 

今でもラジオ局はYouTubeでMVが公開されたり、サブスクで先行配信が始まる前からそのアーティストの最新曲をオンエアしていたりするし、特にFM802は世界最速で楽曲が解禁されたりすることも多い。次に披露された久々の「Terminal」も、FM802で初めて解禁された曲だった。ラジオゆかりのMCや選曲から、フォーリミがラジオをどれだけ愛しているかがたっぷり伝わってきた40分だった。

 

自分が今現在好いている音楽は最近こそYouTube経由で知り得たりすることが多いが、ほとんどはスペシャから知り得たバンドだ。しかしフォーリミと出会ったのはどちらでもなく、FM802だった。5年前、たまたまFM802でオンエアされた「monolith」を聴いて彼らに一目惚れした。あの時FM802を聴いていなかったら、もう少し彼らと会うのが遅かったかもしれない。

だからこそ、こうしてFM802を通して出会ったフォーリミを、FM802の主催するフェスの一番大きなステージで見れることがとても嬉しい。来年もこの場所で。

 

 

 

9mm Parabellum Bullet(R-STAGE)

 

今年は久々のアルバム「DEEP BLUE」をリリースした9mm Parabellum Bullet。今年はR-STAGEでの出演だ。

会場に着くとかみじょうちひろ(Dr)のダンサブルなビートと昨日はイエモンをカバーしていた菅原卓郎(Vo,Gt)の歌謡的なメロディが耳を引く「反逆のマーチ」を既に演奏中。ライブを見るのは初めてだったが、15年目を迎えたバンドなだけあって安定感は抜群。特にかみじょうちひろのドラム捌きは目を見張るものがある。

 

しかし驚かされたのは最新アルバムから披露された「Beautiful Dreamer」「名もなきヒーロー」の2曲。音源ももちろんだが、それよりはるかに音圧が凄まじい。やはり自分はロックバンドはライブが良くてなんぼのものだと思っているので、ライブ化けする曲がたくさんあるのはバンドにとって心強い。9mmは最新アルバムの曲でさえそうなのだから、こうして今でもフェスで活躍しているのだろうな、と感じさせた。

 

9mmの放つ音はロックバンドらしいアツさを持っている反面、冷たい刃のように鋭利で冷徹だ。それが特に感じられたのが「太陽が欲しいだけ」、そしてキラーチューン「Black Market Blues」。一つ一つの音が聞き逃せない鋭さを持っているから、オーディエンスも腕を上げたりハンドクラップをしながらも、めちゃくちゃステージに集中している。集中しなければこの音と向かい合えなさそうだからだ。

ラストの狂騒的な「Punishment」も圧巻の一言。遅かったかもしれないが、改めて彼らの地の強さを痛感したライブだった。まだまだ聴けていない曲もたくさんあるから、来年もまた生き延びて会いましょう。

 

 

 

阿部真央(L-STAGE)

 

昨年に引き続きL-STAGEに登場したのは阿部真央。ジングルが鳴ると既にバックバンドはセッティング済み。暗闇の中からふらっと阿部真央が現れると、アコースティックギターを手に取り、荒々しいストロークから始まったのは「デッドライン」。歌というより叫びのような切迫した歌声が、アコギ一本の上に乗っかってL-STAGEを一瞬で支配していく。やはりこの人の歌声は唯一無二だ。

そしてヒリヒリとした空気を持続させたままバンドメンバーが合流して「ふりぃ」に繋げるのだが、昨年のこのステージでの彼女のセットリストは「Believe in yourself」から「ふりぃ」の流れだった。前に来る曲が違うだけでこんなに雰囲気が変わるのか、と驚かされる。

 

「レディクレ、元気ですか?」

 

とMCで問いかけるも、反応はイマイチだったらしくさらっと流すと、来月にニューアルバムをリリースすることを告知。するとハンドマイクになり、そのアルバムから「お前の求める私なんか全部壊してやる」を初披露。彼女は何度かこういう反骨心に溢れたロックナンバーをリリースしてきたが、この曲はまさしく阿部真央史上最もロック、かつ怒りのエネルギーが充満しまくっている。バンドの演奏もさっき見た9mmが手がけたのかと思うぐらいエッジが効いていて、それに合わせて彼女もヒールでピョンピョン跳ねまくる。

 

「すごい…人生で初めて中指立てちゃった」

 

と自身の振る舞いを振り返ると、さっきは

 

「踊ってくれますか?」

 

と煽っていたのに

 

「暑い?だったらじっとしていて下さい」

 

と自由奔放。再びアコギを背負ってポップな「どうしますか、あなたなら」を届けると、弾き語りでは「未だ」をこちらも張り詰めた歌声で歌い上げる。こうして緊張感のある曲が続くのは正直フェスで歓迎されるものではないが、今の彼女はまさに「お前の求める私なんか全部壊してやる」というモードなのだろう。今年はベストアルバムをリリースしたからこそ、こうして振り切ったライブを行えているのかもしれない。

 

しかし張り詰めたムードはここで終わり。ラストは観客に歌詞を委ねる「モットー。」、そして「ロンリー」では笑顔も見せた阿部真央

数年前まで、阿部真央の歌は同年代へ向けた女子の、女子による、女子のための歌、というイメージがあり、どうも近寄りがたい雰囲気にあった。しかし今はフェスの舞台でもたくさんの人に彼女の歌が届いている。それは彼女の歌がまだまだ古いと言われるには早すぎることの証明だ。

 

 

 

THE ORAL CIGARETTES(Z-STAGE)

 

一昨年はB'zなどの大物が多数出演するなかでトリを任され、見事にその役目を全うして見せた。その時期に発足していた「ReI project」の一環として、昨年は一般参加者から公募を募り、ステージの上で「ReI」を歌い上げた。といったように、毎年のようにその年のレディクレのハイライトを築き上げてきたのがTHE ORAL CIGARETTES。個人的には今の日本のシーンで最もすごいライブを見せてくれるのがオーラルだと思っているが、レディクレでのオーラルはいつも以上の力を発揮してくれる。それを知っているから、やはりこのバンドは見逃すことができない。

 

今年は地元・関西の泉大津フェニックスで野外イベント「PARASITE DEJAVU」を開催した彼ら。そのとき同様テンプレート文章になった「一本打って!」を経て、サイレンにも似たSEに乗せてメンバーがゆっくりと定位置に着く。すると仲西雅哉(Dr)の四つ打ちから繰り出されたのは「ワガママで誤魔化さないで」。山中拓也(Vo,Gt)はさっそくタンバリンを手にし、サビでは腕を左右に振るのだが、もう観客全員が山中の一挙手一投足を真似している。次にGLAYが控えているにも関わらず、まるでこのZ-STAGEに集まった全員がオーラル目当てに集まっているかのようだ。

 

スクラップを模した歌詞が投影される「カンタンナコト」で会場を縦に揺らすと、ここで先程まで音波神社でライブをしていたロザリーナを呼び込む。同じ日に出演しているからやるかな、とは思っていたが、やはりロザリーナを迎えて披露されたのは「Don't you think」。山中は

 

「ロックバンドがフィーチャリングとかなかなかやらないっしょ?」

 

と言っていたが、こうしたコラボができるのもフェスならではだ。そしてこれだけのオーディエンスを目の前にしながら自然体で振る舞うロザリーナも度胸が据わっている。

冬フェス前にリリースされた「Shine Holder」からはキラーチューン祭りと言わんばかりに、幾度となくこのフェスをクレイジーに仕立てあげてきた「狂乱 Hey Kids!!」、挑発的な打ち込みサウンドが襲いかかる「容姿端麗な嘘」、この日一番の大合唱が響く「BLACK MEMORY」を連続でドロップ。

本当にオーラルはライブの完成度が高い。それは1曲1曲が死角のないサウンドメイキングを施されているから。ロックバンドのライブにありがちな「荒削りなサウンド」というものが一切なく、それでいて生々しい。楽曲の面でもそうだが、ライブでも完全に「オーラルにしか作れない空間」を作り上げている。他のバンドにはなかなか真似できない所業だ。

 

ラストは関西への感謝も込められた「LOVE(Redone)」。一瞬でピースフルな空気に変えてみせ、やはり今年もオーラルのライブの凄さを実感させた。

来年はニューアルバムのリリースも決定している彼ら。一体どこまで進化してしまうんだ。

 

 

 

打首獄門同好会(R-STAGE)

 

R-STAGEに登場したのは打首獄門同好会。既にその人気はお茶の間にまで浸透しており、CDJでは最大級のEARTH STAGEへの出演が決まっている。しかし意外にもレディクレには初登場。そしてCDJのステージは年越し後なので、実質レディクレが彼らにとってのライブ納めである。

会場の外から流れてくる「島国DNA」を聴き、どんどんステージに向かう人の足が早くなっていくのにも同情しながら会場に着くと、最前列ではやはりマグロが投入され、不規則に跳び跳ねている。スクリーンにはVJ風乃海が操る映像が投影され、ギターの音を聴かせたくてわざとボーカルを抑えている大澤会長(Vo,Gt)に代わって歌詞も見せてくれる親切っぷり。しかしスクリーンを見ずとも歌詞を口ずさんでいる人がめちゃくちゃ多いのにも驚かされる。

ちょうど晩飯時の時間帯に歌われる「ニクタベイコウ!」による魚&肉のコンビで食欲をそそらせた後は、

 

「どうも、この3日間で最もスクリーンの使い方がもったいないバンド、打首獄門同好会です(笑)」

 

と自己紹介。というのもR-STAGEのスクリーンは縦長の長方形なのだが、VJが流す映像ではアスペクト比が足りておらず、スクリーンの大半が真っ黒のままライブが進行していた。しかしMCの時はきっちりメンバーの笑顔が映される。

 

「来年はいよいよオリンピックイヤーということでね、みなさん来年もたくさん頑張って、経済を回して、日本全体を盛り上げていきましょうね!

では次の曲をお聴きください、「はたらきたくない」」

 

と爆笑を誘うと「はたらきたくない」では全国民の思いを代弁するかのように歌う。

 

「さっき働きたくないと言ったが、いやいや俺はむしろ、布団の中から出たくない!」

 

とまたも大澤会長の巧妙なフリから、今度は

 

「さむい」

 

の絶叫が響く「布団の中から出たくない」へ。どちらも否定形から入る曲だが、最後には

 

「はたらきつかれたね」

「布団の中から出てえらい」

 

と優しさを滲ませるのが彼らの人柄のよさを伺わせる。そして大澤会長は喋りがめちゃくちゃ上手い。

しかし

 

「本日12月26日は何の日かご存知ですか?そう、今年最後の二郎の日です!」

 

と「私を二郎に連れてって」、「きのこたけのこ戦争」とまたしても食べ物関連の曲が続いたのはこの後フードコートへ向かわせるレディクレの策略だろうか。

 

まさかのパンクアレンジが高揚感を加速させた「おどるポンポコリン」のカバーを終えたところで、

 

「皆さん、現在時刻は17時50分でございます。そう、もうすぐ隣のZ-STAGEに白でも黒でもないGLAYが出る時間帯でございます!なのでR-STAGEでは白いお米の話をしましょう!」

 

と最後に皆が待ち構えていたあの曲の前フリ。そして

 

「2020年が大豊作な一年になりますように!皆さん、ご唱和下さい!」

 

と「日本の米は世界一」を高らかに響かせ、初のレディクレのステージを大団円に導いてみせた。

みんなが知っている曲をみんなで大きな声で歌う。フェスならではの光景がそこには広がっていた。ライブ中も、ライブが終わったあとも、誰もが笑顔になっていた。

 

そしてライブ後、GLAYに向かう人もたくさんいたが、フードコートに向かう人も負けないぐらいたくさんいた。やっぱりこの時間帯の出演はレディクレの策略だったのではないだろうか。だったら次はお昼時にでも、Z-STAGEで。

 

 

 

東京スカパラダイスオーケストラ(L-STAGE)

 

今年はFM802と同じく30周年を迎えた東京スカパラダイスオーケストラ。これまでも斎藤宏介や横山健といったボーカリストを連れてレディクレのステージに立っていた彼らだが、今日のゲストボーカルは04 Limited SazabysのGEN、そして先程までZ-STAGEでライブを行っていたGLAYのTERUだ。TERUがゲストボーカルで呼ばれるなんてレディクレぐらいではないだろうか。

 

夏フェスではえんじ色のスーツをまとっていたメンバーだが、今日は白いスーツで登場。谷中敦はハットを被っており、相変わらず渋い。

さっそく「DOWN BEAT STOMP」でパーティーを始めると、「スキャラバン」、そして今年リリースされてセットリストにも定着してきた「遊戯みたいにGO」と続けているうちにL-STAGEに次々と人が集まってくる。スカパラのグッズを身につけている人は少ないけれど、色んなアーティストグッズを身につけた人が一堂に介する。これがスカパラだ。

 

「今年のスカパラは30年で一番忙しい1年でした!みなさんへの感謝を込めて、2003年の大ヒットナンバーを!」

 

茂木欣一(Dr)が甘い歌声でも魅せる「銀河と迷路」へ。今年この曲はトリビュートアルバムで04 Limited Sazabysによってカバーされていた。しかしここで披露されたのは茂木がボーカルをつとめるバージョン。ではGENは何を歌うのか…と思っていると、曲の途中でGENが呼び込まれ、そこからフォーリミ版の「銀河と迷路」へ繋げるという新旧メドレー形式。これは予想外であった。

今年はGENのみならず、Official髭男dismなど後輩ともたくさんコラボしてきたスカパラ。こうやって様々な世代と触れ合っていくことが、「PARADISE HAS NO BORDER」という彼らの哲学をより強めているのだろう。

 

まさにスカパラを体現するワードとなった「PARADISE HAS NO BORDER」を経て呼び込まれたのは、ライブを終えたばかりのTERU。そういえばTERUもトリビュートアルバムに参加していたっけ、とここで思い出し(津野米咲亀田誠治ピエール中野と共に参加していた)、披露されたのは「美しく燃える森」。同じ日にはこの曲のオリジナルバージョンを歌っていた奥田民生も出演していたが、TERUの歌はもう色気がすごい。後にも先にも彼の歌が聴けるのはもうこれっきりだろう。最後に抱き合っていたTERUと谷中の絵はとても美しかった。

もう一人ぐらいシークレットゲストがいるかな、とも思ったが、ゲストボーカルはここで終わり。30年目を迎えたからこそ力強く響き渡る「Glorious」、そして「ペドラーズ」を経て大阪での30年目のライブは幕を閉じた。

 

今年はトリビュートアルバムもリリースされ、同じく30年目を迎えたスペシャ習志野高校吹奏楽部とのコラボもあり、桜井和寿チバユウスケといった大物たちとタッグを組んだ新曲やオリジナルアルバムのリリースもあったりと盛りだくさんだった1年。谷中は

 

「30年で一番忙しい1年だった」

 

と語っていたが、来年以降ももっと彼らの描くパラダイスに連れていってほしいものである。

 

 

 

・Saucy Dog(L-STAGE)

 

L-STAGEのトリを託されたのはMUSIC FREAKSの新DJにも就任したばかりの石原慎也(Vo,Gt)擁するSaucy Dog。去年のレディクレはR-STAGEのトップバッター、今年の夏フェスでも割と早い時間帯での出演が多く、爽やかな楽曲からも朝のイメージが強かった彼らだが、まさかトリをつとめることになるとは。

口笛交じりのSEが夜というより日暮れというか、1日の終わりを感じさせる雰囲気の中でバンドのロゴが後ろに現れると、3人がふらっと登場。

 

「Saucy Dog始めます!」

 

と石原が元気よく挨拶すると、「雀ノ欠伸」からライブが始まるのだが、その瞬間、彼らがトリに選ばれた理由がわかった気がした。何せ楽曲から漂ってくるエンディング感がすごい。最後の最後まで盛り上げ続けていく、という今までのフェスの雰囲気とは違い、「1日お疲れ様」とここにいる全員を労うかのような温もりがある。間違いなくこの空気はSaucy Dogにしか作れないものだ。しかもステージに立つ3人の佇まいが見違えるほど頼もしくなっている。

 

昨年のヘビーローテーションナンバー「真昼の月」からはそんな優しさから一転、「ナイトクルージング」、彼らの躍進を決定付けた「ゴーストバスター」とアップテンポな楽曲が続く。そんな流れは

 

「嵐の中を手探りでさ 僕らは走って行くよ」

 

と地元のフェスでトリを任された覚悟を歌ったかのような「Tough」を含めて、

 

ユニコーンとかアジカンとかと並んでて。正直、めちゃくちゃ不安だった」

 

と語った石原たちの不安がそのままセットリストに表されているかのようだ。

「バンドワゴンに乗って」でそんな流れはいったん終わり、「コンタクトケース」では極上のバラードをL-STAGEに響かせる。彼らはフェスの場でもこういったバラードでも勝負できるバンドだ。そういった面では、今の盛り上げ重視なフェスの雰囲気において、彼らの存在はフェスへの新たな価値観を提示してくれそうな予感がしている。

 

ラストはとびきりにアットホームな「スタンド・バイ・ミー」で終わり。「いつか」はやらなかった。でもそれは「いつか」がなくても素晴らしいライブを成立させることができる、というバンドの成長を示すものでもあった。「いつか」をやらなかったからだろうか、今日のサウシーは不完全燃焼だった、とぼやいていた人がいたけれど、今日の彼らは地元でのライブ納めとして素晴らしすぎるライブをしてくれたし、

 

インテックス大阪でワンマンしてみたいなあ」

 

と呟いていた石原の夢が叶う日も、そう遠くないのかもしれない。

 

 

 

というわけで2日目終了。やはりラジオ局主催のフェスだけあって、どのアーティストもラジオへの愛が深いことがたくさん伝わってくるし、誰もがラジオの持つ可能性を信じている。だからこそ、自分ももっとラジオが好きになるし、もっと信じてみたくなるのかもしれない。

そんなことを感じた2日目だった。

FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2019 DAY1 @インテックス大阪 2019/12/25

今年も年間を通じてたくさんのフェスが開催された。その主催者は音楽雑誌であったり、ファッションブランドであったり、アーティスト自身であったり、最近は民放のテレビ番組がその面白さに気づいて開催したりと様々であったが、ラジオ局が主催する大型フェスというのは全国でもRADIO CRAZYぐらいではないだろうか。

大阪のラジオ局・FM802が主催するロック大忘年会、RADIO CRAZY。例年は2日間の開催だったが、今年はFM802が開局から30周年を迎えたこともあり、初の3DAYS開催とパワーアップ。我々関西の人間からすると西のCDJとも呼べる存在であり、毎年豪華なラインナップが集結する一大フェスだ。一年間の総決算ということで、気合いの入っているアーティストもたくさんいるだろう。

ここに参加するのは今年で6年目。毎年のライブ納めはここと決めている。今年も無事、全日で参戦することができた。

 

 

 

・teto(L-STAGE)

 

今年は名作「超現実至上主義」をリリースし、47都道府県を回っている最中のteto。飯室大吾の前説からラグビーを題材にしたオープニング映像が流れ、SEが流れると同時にバンドのロゴがでかでかと現れると、朝早くからL-STAGEに集まったオーディエンスは大声を上げる。先に楽器隊が位置につき、ひときわ大きな歓声に迎えられて登場した小池貞利(Vo,Gt)は早くも客席に突入。山崎陸(Gt)は黒髪に戻っており、小池は綺麗めなジャケットを羽織っているのだが、スタイリッシュな彼がジャケットを着るとさながら2013年に同じステージに立っていたUK.PROJECTの先輩、[ALEXANDROS]の川上洋平のようだ。

開口一番、

 

「何がクリスマスじゃー!!」

 

と絶叫し、轟音をかき鳴らすともうその一瞬だけで今日のベストアクトをかっさらいそうなものなのだが、勢いのままに「高層ビルと人工衛星」でスタートの号砲をぶちかます。続けざまに「蜩」を投下し、「Pain Pain Pain」ではここまで割としっかり歌っていた小池がギターをかなぐり捨てて客席に降りてくる。

 

「戦争よりも革命よりも好きな人とのキスを!」

 

と最新アルバムから、まさにツアーで育っている最中の「ねえねえデイジー」がストレートに届けられると、クリアなギターが「9月になること」のメロディをさらに瑞々しく、切なく彩る。しかし変わらないのは、4人全員が魂を削るように、この一瞬に命を燃やしている姿だ。

 

「今年は大阪に9回来ました。その辺の大阪のバンドより大阪でライブしたんじゃないかなって思います。セットリスト考えてたんですけど、やっぱりこの土地のことを歌いたい。勝手に縁を感じて歌うから、何か勝手にやってくれ!」

 

と彼らしいぶっきらぼうな、でも優しさのある言葉で名曲「光るまち」が届けられる。自分は正直、大阪という土地が大好きってわけではない。でもこういう曲を聴くと、自分がこの曲を聴いている今この場所が途端に愛しく感じてくる。

今日はやたらと気合いが入っているな、と感じた理由は2つ。その一つはもちろん年内の大阪は最後のライブだったから、というのもあっただろうけど、小池はMCで

 

「一週間前に友人が亡くなったと報せが来ました。わかってるけどさ、でも人はいつか死ぬし町もなくなるし、言いたくないけどレディクレもいつか終わるかもしれない!だからいつまでも続くように歌うんです!」

 

と語っていた。きっとそれが今までの、そして今日のtetoの原動力だったのだろうと、最後の「拝啓」を聴いて強く感じた。

 

「浅くていいから息をし続けてくれないか」

 

それはtetoからの願いであると同時に我々リスナーがtetoに、そしてFM802に願っていることだ。今こうしてバンドができることの意味を今一度示したかのような、力強いアクトだった。

今年3月に列伝ツアーでtetoを目撃した時の衝撃は今でも覚えている。色んな人が絶賛しているのも納得な、ロックバンドの刹那性を凝縮させたようなライブに心を奪われた。こうして大阪で出会ったバンドを、年末にまた大阪で見ることができる、これもまた縁なのかもしれない。だから自分も、tetoに勝手に縁を感じている。

 

今年は列伝ツアーに帯同し、「正義ごっこ」のリード曲「夜想曲」はFM802で最速でOAされた。各地のフェスでも確かな爪痕を残し、10月には1年ぶりのアルバムをリリースし、長いツアーを回っている。混沌とした時代の寵児みたいなバンドだから、来年にはもっと多くの人が彼らを支持するようになるだろう。でも何故だろうか、そうなったとしても、彼らが大きなステージ立つ姿が想像できない。もちろんいい意味でだが。

 

 

 

・Hump Back(L-STAGE)

 

こちらも4月まで続く長いツアーの中途にいるHump Back。オレンジのアンプに黄色のドラムセット、林萌々子(Vo,Gt)の赤いパンツと、目に映える色が目立つ3人が今日もリハから絶好調っぷりを披露すると、本編でもいつも通りハナレグミ「ティップティップ」をバックに元気よく飛び出してくる。

 

「クリスマスに家でイチャついてるカップルに負けへんように!でっかい声で歌いに来ました!」

 

とクリスマスを意識しまくった宣誓から「拝啓、少年よ」で伸びやかな歌をL-STAGEに届けていく。今年は彼女らのライブを4度見てきたが、毎度見る度に演奏が強靭になってきていて本当に頼もしい。その中でも特に美咲(Dr)のドラムはどんどんストロングスタイルになっていっている気がする。

林がぴか(Ba)に飛び込もうとハッスルしまくっている中、「高速道路にて」、パンキッシュな「オレンジ」を連続で披露。やはり地元である大阪のフェスだけあって、気合いの入りようが違う。

「生きていく」では

 

「ねえ先生 僕は今歌っています」

 

のフレーズが

 

「802が私たちの曲を流してくれて、お世話になった先生のもとに届いたことがきっかけ」

 

と曲の生まれたエピソードを語る。こうした人との繋がりをそのままの温みをもって曲にしているからこそ、彼女らの歌は響くのだろう。

 

「全然足りないんですけどー!」

 

と煽りまくって「短編小説」ではやっぱり林が客席に突撃。しかしさすがに距離があったからか、ギターの音が鳴らなくなってしまう。でもそんなことはお構い無し、それどころか

 

「これがライブハウスのやり方!」

 

と笑ってみせるのがHump Back。

昨年のR-STAGEからステップアップしてのL-STAGEだが、彼女らはいい意味で大きな会場が似合わない。それはライブハウスで培ってきたスタイルを何一つ変えることなくこのステージに持ち込んでいるからだが、それでもやはり「クジラ」で響かせる林の歌声は、いつかZ-STAGEでも聴けるのではないか、と期待を寄せてしまう。

 

「ぴか、クリスマスプレゼント何がいい?」

「うーん……ももちゃんは?」

「んー、来年も3人でライブできる権」

 

と答える辺りがライブハウス育ちの生粋のバンドマンらしくもあるが、そんな温かいやり取りから「僕らは今日も車の中」が届けられると、すっかり板についた「月まで」「LILLY」のダブルパンチ。ラストは日を追うごとに歌う人が増えていっている気がする「星丘公園」。今日もロックバンドはバチバチにロックバンドだった。

 

今年はtetoらと共に列伝ツアーを回り、結成10年目にして野音ワンマンや地元であるなんばHatchでのワンマンを次々と成功させてきたHump Back。7月には待望の1stフルアルバムがリリースされ、47都道府県ツアーの真っ只中。少々のタイアップもあったものの、曲の力とライブの力だけでL-STAGEまでのし上がってきた。今彼女らの歌をリアルタイムで聴きながら青春を謳歌している10代がすごく羨ましい。来年の彼女らは、もっとたくさんの人の青春になっていることだろう。

 

 

 

グッドモーニングアメリカ(R-STAGE)

 

来年のツアーをもって活動休止することを発表しているグッドモーニングアメリカ。レディクレは久しぶりの出演にして、彼らにとって最後のフェス出演となった。

会場に着くと、毎回楽しみにしているたなしん(Ba)のコスプレはまさかのエルザ。目元まできっちり整えられていてやや怖いが、なぜか様になっているのが彼らしい。

キャッチアンドリリース」から繋いだ「YEAH!!!!」では、サビでたくさんの手が左右に揺れる。近年はワンマンだけでなくフェスの動員も厳しくなってきた彼らだが、そんな中でもこの曲はしっかりと振り付けが浸透している。

 

何度も何度も出演してきたレディクレの舞台もいったんはお預けということで、今まで自分たちを呼んでくれたことを感謝するメンバー。たなしんもドレスを脱ぎ捨て、

 

「俺たちの音楽を精一杯伝えたいんです!」

 

と熱い思いを語るのだが、

 

「ファイヤー!!」

 

に繋ぐ大事なMCを噛んでしまうのが何とも彼らしいというか。

そこからは「言葉にならない」、「フルスロットル」とパンキッシュな楽曲を連続で披露し、「空ばかり見ていた」では金廣真悟(Vo,Gt)はマイクから離れて客席の合唱を受け止める。メンバー全員が、ずっと年末に聴いてきたその声の一つ一つを苦しいほど噛み締めていた。

最後の挨拶を任せられた金廣は、

 

「少し休んだらまたこの場所を目指して頑張っていきますので。「あいつらまだやってるわ」みたいな感じで見守ってくれたら嬉しいです」

 

と丁寧に語って歌い始めたのは「餞の詩」。それを聴いたとき、自分はやっとグドモが活動を止めてしまうという事実を思い知らされ、涙が出そうになってしまった。当時のインディーズチャートで1位を取っていたのがこの曲。バンド名も不思議だったが、教養の足りなかった自分は「餞」の意味も読み方もわからなかった。でも意味を知ってからはたくさん歌った。間違いなく自分とグドモを繋げてくれた最初の曲だった。あの場にいた人達の中にも、この曲でグドモを知った人がたくさんいたことだろう。曲が終わったときは、周りからすすり泣く声がたくさん聞こえてきた。

しかし泣きっぱなしで終わらないのがグドモ。メンバー自身も何度も言っているが、この活動休止はポジティブな活動休止であり、未来を見据えるための準備期間だ。彼らは前を向いている。その証拠が次に歌われた「未来へのスパイラル」、そして「光になって」だった。

 

たなしんのエンターテイメント性も、ペギのワイルドなドラミングも、渡邉幸一のアツい言葉も、金廣の舌足らずな歌もこれからしばらく聴くことはできない。でも彼らはいつか必ずレディクレに戻ってきてくれる。その時におかえり、と言えるように。

何が僕を導いている?それは彼らとの約束だ。また会える日まで。

 

 

 

・ポルノ超特急臨時大増便(Z-STAGE)

 

毎年1組はレディクレならではのコラボレーション企画が用意されているレディクレだが、今年は30周年ということもあってかその特別企画もいつもより多め。その一つが、先日まで開催されていたROTTENGRAFFTY主催の「ポルノ超特急」とのコラボレーションだ。

まずはROTTENGRAFFTYメンバーが登場し、先日のベストアルバムのアンケートでも1位を獲得した「THIS WORLD」から開幕。そのままダンサブルな「D.A.N.C.E.」が始まると、袖から飛び出てきたのはヤバイTシャツ屋さん。先日リリースされたトリビュートアルバムでもヤバTがこの曲をカバーしているが、今日はこやまたくやとしばたありぼぼがロットンの演奏に合わせて歌うスタイルだ。普段は楽器を弾きながら歌っている二人だから、ハンドマイクで歌うのはかなり珍しい光景。遅れて登場したもりもりもとは蝶ネクタイまでバッチリ着こんだスーツ姿で登場。NOBUYAを意識したらしいが、

 

「NOBUYAさん蝶ネクタイなんか付けてるっけ?」

 

とこやまにも本人にも突っ込まれていた。曲終わりにはステージ中央で両腕をぶら下げてゾンビのように痙攣するという、NOBUYAを意識したのかしていないのかよくわからない動作まで。

 

「僕ら明日出番やのに前乗りしてるんすよ。これで帰ったらあと餅つきしかない。だからもう一曲やってもいいですかー!」

 

とこやまがおかわりを求めると、まさかのロットンによる演奏で「あつまれ!パーティーピーポー」。やたらとBPMが上がっているところもヤバTそっくりだ。どうやらこのステージはゲストボーカルがトリビュート先の曲を歌い、更にオリジナル楽曲のコラボもやるという感じで展開していくらしい。

 

続いて大歓声に迎えられたのはcoldrainのMasato。もちろんトリビュートでも演奏していた「エレベイター」が選曲されるのだが、やたらと音響の悪い(個人的な感想)Z-STAGEでもMasatoの声がしっかり聴こえてくる。やはりすごいボーカリストだし、次はcoldrainもこのステージで見てみたくなる。

そしてMasatoももう一曲、とこちらもロットンをバックに従えた「The Revelation」。さすがミクスチャーなサウンドを売りとしているロットンらしく、ハードメタルなこの曲もしっかり本家の味を損なわずに演奏しているのがすごい。もう前方はモッシュダイブの嵐だ。

 

一度場内が暗転し、MVを彷彿とさせる丁寧かつ煽り気味な女性のアナウンスを皮切りに始まったのは最新曲「ハレルヤ」。来年の今頃には既にライブでは欠かせないキラーチューンになっていることが期待される、ロットン史上でもかなりラウド成分多めなナンバーだ。最近は割とポップな曲がシングルリリースされていたロットンだが、やはりこういうラウドな曲はガツンとくるものがある。

 

続いて腰に朱雀を携えた朱雀王子こと北島康雄(四星球)が現れると、こちらもトリビュートに収録されていた「響く都」。ここでは朱雀王子がロットンメンバーにちなんだコール&レスポンスを展開するのだが、

 

「ロットン侑威地一人だけ漢字!」

「ロットンKAZUOMIニット帽でかい!」

 

と一人一人のいじり方が細かい。こういう所まで考え抜かれているのが四星球が愛されている証拠なのだなあ、と。

 

「四星球もレディクレ呼んでくれやー!」

 

と本音を叫び倒すと、

 

10-FEETの時間が無くなるから」

 

とロットンメンバーに諭され、「時間がないときのクラーク博士と僕」をあっさりとやって朱雀王子が退場すると、

 

「20年間応援してくれてありがとうございました!」

 

とメンバーは感謝を告げる。そして「「70㎝四方の窓辺」」をメロディアスに届けると、さっきの出番で「金色グラフィテイー」をやっていた10-FEETへお返しとばかりにロットンもカバー経験のある「その向こうへ」を始めようとする。すると今度は10-FEETメンバーが全員登場。TAKUMAはNOBUYA、NAOKIはN∀OKI(ややこしい)を意識した格好、そしてKOUICHIは何故か某戦場カメラマンみたいにあらゆる方向からメンバーを撮り続けている。共に京都で戦い続けてきた仲間だからこそ生み出せる愛の与え合いが、Z-STAGEを多幸感で満たしいていく(NAOKIと侑威地が揃ってハイキックするのもカッコよかった)。

 

そして最後はやっぱり「金色グラフィテイー」。もちろんヤバT、Masato、北島、10-FEETの全員がステージ上に集結し、客席もろともお祭り騒ぎに。しかもいつの間にかTAKUMAがギターを弾いている。もうこうなったら誰も彼らを止められない。この豪華っぷり、まさにロック大忘年会だ。

 

正直、ROTTENGRAFFTYは20年の全てが順調ではなかった。それでもポルノ超特急は関西の一大フェスにまで成長し、今年はレディクレの一番大きなステージで、しかもたくさんの仲間に囲まれてライブした。人生は何が起きるかわからない。だからこそ本当に面白い。

 

 

 

SHISHAMO(Z-STAGE)

 

夏フェスの時にはなかった大きなバンドロゴのオブジェが用意され、ステージの雰囲気がフェスらしからぬものになったところでSHISHAMOが登場。もうZ-STAGEは常連といったところか。

SEが鳴っている間に宮崎朝子(Vo,Gt)と松岡彩(Ba)はさっそく両脇の花道付近に陣取り、松岡のゴリゴリのベースから「BYE BYE」でスタート。先日、某音楽番組でこの曲のギターを弾ける5歳の女の子とセッションした様子が放送されていたが、それの影響もあって夏の曲であるはずのこの曲を先頭に持ってきたのだろうか。だとしたらかなりクレバーな手口だ。その番組で

 

「難しいからできればやりたくない」

 

とメンバーは言っていたけど。

続いてお馴染みの「タオル」。夏フェスでは松岡が先導してタオルを掲げてくれと促していたが、今回の担当は宮崎。もちろんスクリーンに映るアニメーションはレディクレ仕様だ。今年はDPFラブシャ、レディクレと3バージョンもこの曲のアニメーションを見れた自分はかなりラッキーだったのでは。

しかしこの曲、

 

「持ってないの あなただけかもよ」

 

同調圧力の恐ろしさをつくづく実感する曲である。

 

レディクレには7年連続での出演となった彼女ら。7年前のSHISHAMOはまだデビュー当時の高校生で、一番小さなLIVE HOUSE ANTENNAに出演していた。

 

「あれからもう7年経つんだよ、やばくない?」

 

とメンバーは時の流れの早さに恐々としていたが、自分は7年前のANTENNAのステージを見ていた。それから毎年レディクレで彼女らの成長を見届けてきた自分にとっては、今や紅白にも出演し、Z-STAGEに立っている姿が何だか感慨深く思えてくる。

冬のカラッとした空気が似合う「君が大事にしてるもの」では

 

GTO全15巻」

 

というかなりピンポイントな固有名詞が飛び出すのだが、そんな歌詞と地続きかのような「きっとあの漫画のせい」に繋げる流れは流石、歌詞をストーリーとして立てるのが上手い宮崎ならではである。それにしても「GTO全15巻」なんてどうやったらそんな固有名詞が出てくるのだろうか。

 

おそらく今日という日を気になる人と見に来たであろう人たちをドキリとさせる「君と夏フェス」からは夏フェスと同じく歌詞がスクリーンに映される「明日も」。思えば今年はたくさんライブに行った。週末はほとんどライブ会場にいたし、その度にたくさんのヒーローに楽しさや感動をもらった。来年もたくさんライブに行ける1年になればいいな、と思う。曲中、吉川美冴貴(Dr.)の後ろから客席を捉えた映像がスクリーンに映された。この7年で、SHISHAMOもたくさんの人にとって‘走り方を教えてくれるヒーロー’になった。そう考えるとまた感慨深くなった。

ラストは「OH!」。夏フェスの時と違ってコール&レスポンスの練習はなかったが、そんなのがなくても客席からは大きな声が聴こえていた。1年を通して育ててきた曲。これからも大事な部分を担ってくれる曲になるだろう。

 

来年の彼女らはもちろんアルバムやツアーも控えているが、8月にはオリンピック真っ只中の渦中でリベンジのスタジアム公演を開催する。7年前はANTENNAすらもギリギリ埋まるかどうかだったSHISHAMOの歌が、ついにスタジアムに鳴り響く。来年の夏は違う。きっと違うんだから。

 

 

 

・OKAMOTO'S(L-STAGE)

 

何とレディクレには唯一の皆勤賞、しかもデビュー前から出演し続けているという、もはやこのフェスの顔とも呼べる存在のOKAMOTO'S。ヒゲをたくわえた風貌がフレディ・マーキュリーを彷彿とさせるオカモトショウ(Vo)だが、アコギを抱えて歌い出したのは今年リリースされた「BOYS」の最終トラック、「Dancing Boys」だ。いきなりの名曲スタートに驚いていると、引き続きアコギを弾きながら現在のツアーのタイトルにもなっている「History」、そして「Border Line」では危ない遊びへレディクレを誘っていく。思わず息を呑むセッションタイムでは「Beek」からさらっとBILLIE EILISH「BAD GUY」に繋げるのが、このバンドのスキルの高さを感じさせる。

 

MCではオカモトレイジ(Dr)が次に出てくるKing Gnuのドラム、勢喜遊と同じ髪色ということでハマ・オカモトにいじられたりする。今日のOKAMOTO'Sのステージは超満員だったが、自分の近くにいた人の何人かはおそらくKing Gnu目当てだったのだろう、ずっとスマホをいじっていた。他の場所にもそういう人がたくさんいたと思う。まあフェスの宿命といってしまえば仕方ないのだが、それは勿体ないなあとも思う。現に彼らはKing Gnu好きにも伝わりそうなエッセンスを持っているというのに。

 

今年はたくさんの挑戦をした彼ら。その挑戦の一環として劇伴にも参加した映画「HELLO WORLD」とタイアップした「新世界」では、映像演出も用いてタイトル通りレディクレを新世界へ導いていく。今までのOKAMOTO'Sとは一味違った、メロディへの脚色がめちゃくちゃ強いナンバーだ。

終盤戦は「BROTHER」の跳ねるリズムでL-STAGEを踊らせ、最後の「90'S TOKYO BOYS」まで心地よくL-STAGEを揺らしていった。この辺りはさすがレディクレ11年目の大ベテランだ。King Gnu目当てだった人も満足だったのではないだろうか。

 

今年は初頭に「BOYS」をリリースした彼ら。前作「NO MORE MUSIC」では消費の激しい社会で音楽を鳴らすことの意味を改めて問い質すメッセージ性の高い作品だった。それだけに今回のアルバムはかなりハードルが上がっていたはずだったが、「BOYS」はそれを悠々と超えていった名盤だった。そんなアルバムを携えて武道館のステージにも立ち、映画の劇伴も手掛けるなど今年は盛りだくさんの1年だった。来年も是非、オイラと踊ってくれないか。

 

 

 

 ・MY FIRST STORY(Z-STAGE)

 

リハでは「白日」をやっていたというMY FIRST STORY。Z-STAGEには初出演だ。会場に入ると既に「無告」がものすごい熱量で歌われており、両面のスクリーンにはMVが映されている。今日も攻め攻めのセトリが展開されるのかと思いきや、2曲目からは「ACCIDENT」、さらに「mine」とミドルテンポな楽曲を連発。フェスではもっと尖ったセトリを組んでそうなバンドというイメージが勝手にあったので、この構成には少々驚かされた。

「君がいない夜を越えて」では彼ららしいメロディアスで雄大なメロディが響く。いつの間にか彼らはアリーナワンマンをやる規模にまで成長していたのだが、そんなバンドの現状を体現するかのように、一つ一つのステージ上での動作やサウンドがスケール感をまとっている。

 

「レディクレ、踊ろうぜ!」

 

と「モノクロエフェクター」で再度熱を入れると、Hiro(Vo)の類い希なハイトーンボイスがダイレクトに響き渡る「REVIVER」でテンションは最高潮に。

 

「メリクリ!」

 

と茶目っ気を見せていたHiroは「With You」の曲中、

 

「どんなに願っても手に入れれられない景色がここに広がってます。この景色が僕らにとって最高のクリスマスプレゼントです!どうもありがとう!」

 

と感謝を告げる。いやいやこちらこそ、と思うが、しかしこんなにたくさんの人に迎えられる景色はたしかに願っても手に入れられない。ここに集まった人たちは彼らが積み上げてきた歴史の証明なのだから。

 

MY FIRST STORYのステージを見ると、ONE OK ROCKが海外志向に向かず、国内でラウドロックを研ぎ澄ませまくっていたらこういう景色を作っていたんだろうな、とどうしても思ってしまう。ともすればMY FIRST STORYはただのワンオクのフォロワーで終わっていたかもしれない。

しかし今こうしてライブを見ると、MY FIRST STORYにしか作れない景色がちゃんとあって、MY FIRST STORYにしか生み出せない熱狂とカタルシスが確かに存在しているのだ、という事実に感服させられる。もう兄がどうだろうと関係ない。そりゃアリーナワンマンもできるわけである。

 

 

 

Official髭男dism(Z-STAGE)

 

今年の顔といっても過言ではないほど大車輪の活躍を見せたOfficial髭男dism。昨年のレディクレはR-STAGE、それもヤバTの裏で、位置付けとしてはFM802の名物番組、MUSIC FREAKSの新DJに就任したことやヘビーローテーションに選ばれていたこともあり、ちょっと注目されていたぐらいだった。しかし今年は当然のごとくZ-STAGE。しかもトリを任された。このポジションに着くのも文句なしというものだ。

 

もはやZ-STAGEすらもキャパオーバーな状態で頭文字であるHGDNのロゴを携え、ツアーと同じく「Travelers」のメロが入ったSEをバックに4人が大歓声に迎えられ登場すると、やはりこちらもツアー同様「イエスタデイ」で幕開け。これから始まる音楽の旅へ誘う雄大サウンドスケープがZ-STAGEを飲み込んでいく。

ホーン隊が合流すると「ノーダウト」からはもう歯止めが効かないパーティーの始まりだ。誰もが歌詞を口ずさんでいるし、メンバーの一挙手一投足を逃すまいと集中しまくっている。去年までは考えられなかった景色だ。

初めてライブを見る人が多いからか、重厚なアレンジが加わった「Tell Me Baby」ではいつも以上に会場が沸き立ち、「115万キロのフィルム」では

 

「僕は助演で監督でバンドマン」

 

と夏フェス同様歌詞を変えて歌われる。ワンマンでは歌詞を変えていなかったので、きっとフェスというライブ猛者が集う場所での「バンドマンとして負けるつもりはない」という意思の表れだろう。実際今年の彼らはあまりにも速すぎるスピードでスターダムに駆け上がったことで、「J-POPとしてはいいけどロックバンドとしてはどうなの?」と舐められることも多かったかもしれない。それは売れっ子の性でもあるのだが、そんなマイナスの声をぶっとばすかのように松浦匡希(Dr.)のソロが轟く「ブラザーズ」では楢崎誠(Ba.)がベースをバックに任せてサックスに転じ、大所帯で縦横無尽に駆け回る。

極めつけは炎の特効と共に小笹大輔(Gt.)のメタルバンドばりのギターソロが脳天を突き抜ける「FIRE GROUND」。これだけ見てもなお、ヒゲダンはロックバンドではないと言い切れるだろうか。

 

イントロの1音目から悲鳴にも似た歓声が上がったのは「Pretender」。バックのスクリーンには

 

「飛行機の窓から見下ろした知らない街の夜景みたいだ」

 

という歌詞とリンクしたように夜景の映像が流れるのだが、この曲を聴きながら見る夜景はなんだか他人事のように思えて物悲しい。こんなに打ちひしがれるような切なさをまとった曲が1億回も再生され、ついに年末には紅白で歌われようとしている。なんだか不思議だ。

 

今年は多忙を極める中で2週間に1回の頻度でFM802でレギュラー番組を担当していた藤原聡(Vo,Piano)は改めて大阪への感謝を告げ、最後に鳴らされたのは「Stand By You」。ツアーを経てどんどん音源よりブラッシュアップされている演奏に驚いたが、やはりこれだけの人が集まった中で歌われる合唱も鳥肌もの。いつかはこの大合唱がアリーナ、いやドームやスタジアムでも聴ける未来はそう遠くないだろう。そうなっても、ずっとレディクレに出続けてほしいものである。

 

出番が早かったのでアンコールはないかな?と思っていたら、割とすぐ再登場。もちろん最後に披露するのは「宿命」だ。ここでは火花が上がる特効も見られたが、これは来年からのアリーナツアーに先駆けた演出だろうか。全ての照明が点り、夜明けを迎えたように明るくなった場内に

 

「届け」

 

と叫ぶ藤原の歌は、きっとZ-STAGEに入れなかった人達にまで届いたことだろう。

今年は説明不要の大活躍だったヒゲダン。来年からはいよいよアリーナツアーが始まる。20年代のポップの行く末は、彼らに託されたといっても過言ではない。

 

 

 

・ROCK KIDS 802 EXTRA CRAZY BAND[THE YELLOW MONKEY トリビュートLIVE] (L-STAGE)

 

今日の企画枠2つ目にしてL-STAGEのトリをつとめたのはROCK KIDS 802 EXTRA CRAZY BAND。FM802 と同じく30周年を迎えた​THE YELLOW MONKEYのトリビュートライブを行うべく、キーボードのトオミヨウをバンマスに迎え、ギターに小野武正(KEYTALK)と阪井一生(flumpool)、ベースに辻村勇太(BLUE ENCOUNT)、ドラムに高橋武(フレデリック)と錚々たるメンツが集結したこの日限りのドリームチームだ。

 

そしてTHE YELLOW MONKEYの珠玉の名曲たちを歌うボーカリストもまた豪華。まずは菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)が呼び込まれ、「SPARK」を披露。そもそもの歌い方が吉井和哉の影響を感じさせることもあり、イエモンの楽曲との相性は抜群である。

続いてTOTALFATからJose、Shunが呼び込まれ、デュエットで歌ったのは「プライマル。」。意外なことにこの二人もイエモンをルーツに持っているらしい。

 

「手を振ったキミがなんか大人になってしまうんだ」

 

という一節はどうしてもKubotyを思い出してしまうが、この二人が歌うと底抜けに明るい曲になるのがパンクの陽性っぷりを感じさせる。

GEN(04 Limited Sazabys)を招いて始まったのは「LOVE LOVE SHOW」。エロが大好きなGENにはぴったりの曲だ。背景にはハートがたくさん流れ、今この瞬間も愛し合っているであろうカップル達を象徴するように甘いメロディが響き渡っていった。

 

これで直前に発表されていたボーカリスト吉井和哉を除いて全員登場したわけだが、いったんステージが暗転したのち、

 

「追いかけても 追いかけても」

 

と「バラ色の日々」の歌い出しが。だが吉井和哉の声ではない。しかしどこかで聴いたことのある声・・・と思っていたら、そこに立っていたのはなんと渋谷すばる。まさかまさかのシークレットゲストとしての登場である。これには会場(主に女性陣)が一気に色めき立ち、驚きやら感動やらで物凄い空気になっていく。

まさか渋谷すばるが目の前で歌っているなんて。呆気に取られている間に彼の熱演は終了。すると堰を切ったように会場から惜しみない拍手が送られる。そんな歓声を受けながら、

 

「失礼しまーす」

 

とあくまでも穏やかな口調でさすらいの歌うたいはサラッと去っていった。まるで嵐のような出来事だった。そもそもFM802は独自の選曲基準を持っていて、原則的にジャニーズの曲は流さない。つまり関ジャニ∞の曲も渋谷すばるの曲も、FM802の電波に乗ったことは一度もない。にもかかわらず出演してくれるなんて。最高のクリスマスプレゼントだ。

 

そして満を持して吉井和哉が登場し、「悲しきASIAN BOY」を披露。つまりイエモンのボーカリスト本人の歌唱である。先程のサプライズでめちゃくちゃハードルが上がっていたはずなのに、それをものともしていない。そりゃ本物だからか。

しかしこういうトリビュートライブに本人が出てくるなんて珍しいなあ、と思っていたら、サプライズはまだ残っていた。

 

「トリビュートバンドの皆さんも本当に素晴らしかったのですが、FM802からのささやかなクリスマスプレゼントということで、ここで僕が30年連れ添った仲間も紹介させてください!」

 

と呼び込み、菊地英昭廣瀬洋一菊地英二が登場。そう、THE YELLOW MONKEY本人だ。現在ドームツアーの真っ最中なのにもかかわらず、

 

「バレないように来た」

 

とのこと。レディクレのステージに、あのTHE YELLOW MONKEYが立っている。その事実だけで胸がいっぱいになりそうだ。

しかしあくまでもメンバーはラフに構え、最新曲「DANDAN」をリラックスムードで披露。

 

「ほらDANDAN いいねDANDAN 集まったぜ盟友」

 

というフレーズはまさに今この瞬間のためにあったのではないか、と思うほどの必然性を持っていたし、

 

「始まったばかりで そんな気にしないでいいよ」

 

という肩の力が抜けたフレーズを歌うイエモンはロックスターっぽくなくて、でも紛れもなくロックスターだった。

そしてトオミヨウを迎え、彼を労ったところでキーボードに加えて始めたのは「JAM」。今日のゲストボーカリストの誰かしらは歌うだろうな、と思っていたが、まさかイエモン本人の演奏で歌われるとは思いもしなかった。そしてやはりこの曲を歌えるのは世界で吉井和哉しかいない、とも強く思えた。

 

最後はトリビュートバンドもボーカリストも全員呼び込み(さすがに渋谷すばるは出てこなかったけど、きっと袖で見ていただろう)、銀テープが発射されて「太陽が燃えている」を大合唱。トリビュートバンドと目を合わせながら演奏しているイエモンメンバーは実に楽しそうだったし、全員と肩を組んで歌う吉井和哉もとてもいい表情をしていた。会場にいた全員がハッピーになった、最高のクリスマスだった。

 

本当に渋谷すばるTHE YELLOW MONKEYもよく呼んだなと思ったし、快諾して出演してくれたのも本当にすごい。こんな景色が見れるのはレディクレだけだ。

 

 

 

というわけで初日終了。今日はもう本当に最後のイエモントリビュートに全部持っていかれた。間違いなく今までで最高のクリスマスだった。ただただ、FM802に感謝である。

フレデリック FREDERHYTHM TOUR 2019 ~VISION編~ @Zepp Osaka Bayside 2019/12/14

※本記事には現在進行中のツアーのネタバレがございます。この先の閲覧は自己責任でお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年は2月にフルアルバム「フレデリズム2」、更に10月にはEP「VISION」をリリースしたフレデリック。それらの作品を引っ提げ、1年を通して組まれたツアーのスケジュールはSEASON1~5に割り振られるという大規模なものに。それぞれのSEASON間にブランクはあったものの、それも春フェス、夏フェス、冬フェスで埋まったので、結果としては1年間ライブ尽くしで過ごしてきた。
今日はそんなSEASON4のファイナル公演。2019年、ひいては2010年代最後のワンマンであり、今日のワンマンを終えたら来年はいよいよ大舞台の横浜アリーナに立つ。つまりこの1年の完成形に限りなく近い形の彼らを見れるということで、否が応にも期待値は高まるばかり。

開演時間を少し過ぎて暗転すると、ステージ各所に配置されたモニターに彼らの楽曲が断片的に流される。続いて

「フレデリズムツアー、始めます」

の声が響くと、大歓声に迎えられてメンバーが登場。早くもお立ち台の上に立ち、満員の会場を見渡す三原健司(Vo,Gt)は威風堂々とした風格を漂わせている。彼らのことはメジャーデビュー前から動向を追い続けていたが、いつの間にこんなに頼もしい佇まい をするようになったのか。
SEが止むと同時に健司が合図を出すと、後方のスタイリッシュなオブジェに「VISION」の文字が浮き上がり、オープニングナンバーは「VISION」。色とりどりのレーザーが飛び交う様は、無数の扉をくぐり抜けて未来へ突き進んでいくというEPのアートワークと通じる部分感じさせる。この視覚的演出がフレデリックの持ち味だ。

続いて赤頭隆児(Gt)の鋭いカッティングに歓声が上がる「シンセンス」。フレデリックのライブにおいて締めとしても着火材としても重要なポジションを担い続けている曲だが、この曲は特に高橋武(Dr)の刻むビートがいい。四つ打ちのバスドラムは一発一発がズンズンと重く、高揚感を引き立てる。三原康司(Ba)のうねりまくるベースラインもそうだが、やはりフレデリックの地に足のついた演奏力はこの二人の力が大きいのだとあらためて感じさせる。
そんな「シンセンス」を口火とすると、「パラレルロール」、「逃避行」とほぼシームレスに楽曲を繋ぎ合わせていく様もまた、フレデリックにしか作り得ない流れ。大阪のライブハウスの中でも特に僻地にあるZepp Osaka Baysideは、「逃避行」の世界観と相性もバッチリだ。

短く挨拶をすると、またしてもシームレスな展開が続く。

「大事なことは本人に言えよ」

のフレーズにハッとさせられる「トウメイニンゲン」から地続きの疾走感で「リリピート」、そしてダウナーなイントロから
「今この瞬間を この瞬間を待ち望んでいた」

と我々の思いを代弁するかのような「シンクロック」と、リリースされた時期はバラバラだが、まるで最初からこの3曲がセットでCDに収録されていたのでは?と疑いたくなるような歯車の噛み合いっぷりだ。

一旦ブレイクダウンすると、横ノリのリズムが気持ちいい「ナイトステップ」からは「NEON PICNIC」とディープな楽曲でフレデリック流のサイケワールドへ。以前、レーベルメイトでもあるTHE ORAL CIGARETTES山中拓也

「ミドルテンポの曲で勝負できるようになったら強いと思う」

と発言していたが、今のフレデリックはまさにデビュー当時のダンスロック最盛期の波を越えてこのスタイルを定着させていった感じがする。というか昔からこういうサイケな曲は結構やっていたのだが、それらを「ダンスロック」と一括りにせずに自分たちの流派を貫いてきた結果だろう。

再び健司がハンドマイクになり、フレデリック史上最も歌謡的な部分が強く出ていると感じる「対価」で前半戦は終了。MCでは4人全員にマイクが回されるのだが、

「おかえり~!」

の声を強く求める健司、根拠のない自信を主張する康司、LINE LIVEを配信しているということでカメラに向かってキメ顔をする赤頭(彼はZepp Osaka Baysideを「ポケストップがたくさんあっていい場所」とポケモンGO目線で語っていた)、新しくなったハイハットについて熱弁する高橋(高橋いわく「ミドルレンジがよく出る」とのこと)と、4人とも喋り出すとやっぱり関西人なのだな~と感じる。フェスではこういったMCを一切挟まないだけに、ワンマンならではの貴重な時間だ。

「今回VISION編ということで4箇所のZeppを回ったんですけど。前半のセットリストは固定で、後半のセットリストはそれぞれメンバー1人ずつ考えてきたセットリストでやってきたんです」

と語った健司。そしてファイナルとなる今日のライブの担当は高橋。

「リズム重視の流れになってるかも」

と予言した後半戦は「スキライズム」で再開。EDMチックなエッセンスを感じる「LIGHT」では途中にソロ回しが用意されているのだが、高橋のドラムソロは

「いい音だからいつもより多く叩いてる」

とMCでも熱く語っていたハイハットをフル活用。というかハイハットしか叩いてなかったのだが、それでもちゃんとソロとして成立させるのは流石。
先程のMCもそうだが、以前、彼はドラムマガジンで盟友である04 Limited SazabysのKOUHEIのドラムを理論的に解説していた。そういうドラムに対してのヲタクっぷりがそのままストイックな姿勢に通じているのだろう。

やはり音は繋げたままで「他所のピラニア」へ雪崩れ込むと、

フレデリックのライブはすごいってこと見せてやりましょうよ!」

と煽って必殺ナンバー「オドループ」へ。もうこの会場にいる人で歌えない人はいないだろうという感じのシンガロングっぷりだし、カスタネットのパートでリズムよく起きる手拍子はバンドの音が止まっても完璧。横浜アリーナで歌ったらすごいことになってしまいそうだ。

まさにオンリーワンな存在のフレデリックが歌うからこそメッセージが強く響く「オンリーワンダー」を経て、

「本日はありがとうございました。我々は進化し続けていくバンドですので!最後は新曲で終わろうと思います」

と夏フェスから鍛え上げてきた「イマジネーション」が本編ラスト。「VISION」よりも更にBPMが下がり、音数も削ぎ落とされたソリッドなナンバーだが、音源通りには終わらず長尺のセッションパートへ突入すると、高橋のドラムは更に激しさを増し、そんな演奏に合わせて照明も激しくなってくる。さながら極彩色の時空を高速で駆ける、未来行きのタイムマシンに乗っているかのようだ。
さらに健司が

「声を聴かせてください!」

「さあ イマジネーション」

の部分でシンガロングを要求。完全に夏フェスでこの曲を聴いたときとはイメージが全く違う。こんなに熱量のこもった楽曲だったのか。
最後は両端から幕がステージを包んでいき、完全にステージが見えなくなったタイミングで演奏はフィニッシュ。そして真っ白な幕に「FRDC」のロゴが浮かび上がる、という鮮やかな終幕。改めて彼らが進化し続けていることを照明して見せた。

鳴り止まないアンコールに応えるように、レーザーで照射されたロゴが

「FAB!!」

の文字に変わると、ゆっくりと幕が開いた先には横並びになった4人が座っている。そうして歌い始めたのは「VISION」。FABとはFrederic Acoustic Bandの略称で、つまりこの「VISION」はアコースティックバージョンで披露された。こうして聴くとやはり健司の歌声はどこまでも突き抜けていく爽快感があるし、高橋がカホンとかではなくパッドを駆使しているのがいかにもフレデリックらしい。

「ライブの中で自分達の楽曲をアップグレードしていきたいと考えた結果、この編成になった」

と健司は語る。そしてさっきまで放送していたLINE LIVEも既に終わっていることを告げ、ここからは会場に来た人たちのみのお楽しみということで、続いてもアコースティック編成で「夜にロックを聴いてしまったら」が届けられた。直前のMCと合わせて、まるで自分たちだけしか知らない秘密基地で演奏されているかのような占有感を感じるし、「夜」というこの曲のシチュエーションにもバッチリ合っている。

通常のバンドスタイルに戻ったところで、本当のラストは

「大好きな音楽を思い浮かべて聴いてください。それがフレデリックの音楽じゃなくてもいいから」

と前置きされた「終わらないMUSIC」。ライブ中、健司は何度も

「音楽は好きですか?」

と語りかけていた。やっぱり彼らは音楽が大好きで、音楽から生まれるコミュニケーション、音楽から生まれる想像力を本当に大切にしているバンドなのだな、と改めて感じたし、ここに集まった人やLINE LIVEを見ていた人たちは音楽が好きなことをわかっていて、だからこそ自分たちのビジョンが伝えられるように切実にそれらと向き合っているのだなと実感した。音楽を愛し、音楽に愛されたバンドとは彼らのことを指すのだろう。

冒頭と同じく「MUSIC」の文字が後方に浮き上がった所でライブは終了。これにてライブ尽くしだった1年、ひいては10年代のライブを総括した彼ら。
もはや完全形態と成り得たような凄まじさを見せつけた一夜だったが、彼らは短い期間でもライブや楽曲をアップグレードさせ、ライブ中すらも進化しているバンドだ。一体来年の横浜アリーナはどうなってしまうのか。

SUPER BEAVER『都会のラクダ ″ホール&ライブハウス+アリーナ″ TOUR 2019-2020 ~スーパー立ちと座りと、ラクダ放題~』 @神戸ワールド記念ホール 2019/11/30

※本記事には現在進行中のツアーのネタバレがございます。この先の閲覧は自己責任でお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年はライブMVも公開しつつ、春先からひたすらツアーしまくっているSUPER BEAVER。3月からライブハウスもホールも回ってきた今ツアーは、今日と明日に神戸ワールド記念ホール、来年初頭に代々木体育館でのアリーナクラスのワンマンを迎えて完走となる。武道館以来の大きなハコでのワンマンとなる神戸ワールド記念ホールでのライブは、彼らにとって今年最後のワンマンだ。

 

厳かなワインレッドのカーテンを後ろに控え、開演時間になるとオレンジの後光に照らされながら4人がステージに登場。柳沢亮太(Gt)の爪弾くギターに合わせて渋谷龍太(Vo)がゆっくりと

 

「一寸先が何なのか 一体明日がどうなのか

一瞬なんて一瞬で 考える間もなく過ぎ去ってく」

 

と「世界が目を覚ますのなら」が始まる。その歌声にバンドサウンドが合流すると、一気に視界が開けてステージ両脇のスクリーンに4人が映る。上杉研太(Ba)はじっくりとメロディを支える渋いベースを弾き、藤原"31才"広明(Dr)は時折笑顔を見せている。

 

「ようこそ神戸!ようやく来ることができました!」

 

と渋谷が勢いよく挨拶すると、始まりは「青い春」から。サビ前の手拍子を満足そうに受け止めながら

 

「歌おう!」

 

とシンガロングを求める。バンドが120%で演奏すればお客さんはそれ以上で返してくる。この熱量のキャッチボールが彼らのライブならではだ。

フェスとかでやると渋谷がシーッと口をつぐむように指示することもある「閃光」も、やっぱりワンマンだからしっかりと静寂の空間が生まれ、それによって激しい演奏とのコントラストが際立つ。紆余曲折はあっても彼らにとって15年はあっという間だったんだろうな、とこの曲を聴くと思うし、自分も何か今すぐアクションを起こさなければ、と奮い立たせられる。

 

「今日を楽しみにしてきた人がこれだけいるんですよ!柳沢くんよろしく」

 

とテンションを持続させたまま柳沢の踊るようなギターが耳を引く「ラブソング」では、普段クールな演奏をしているというイメージがあった上杉がお立ち台に立って「俺が手本だ!」と言わんばかりに目一杯ハンドクラップをする。ビーバーの楽曲を手がけているのはほとんど柳沢だが、その楽曲を伝えるためのアツさをバンド全員が共有しているということがよくわかる。

 

「皆さんまだまだ体が硬いようですね!今から神戸をダンスホールに変えますんでしっかり体を動かしてください!

いいですか?ダンスホールの条件はただ一つ。全員が踊っているということです!」

 

と「irony」の跳ねるビートで会場を温め切ると、そこに「正攻法」をぶち込むという秀逸な流れ。ここからは赤いカーテンが降りて鉄骨と照明が剥き出しになったステージ後方に4面のスクリーンが現れ、それらが上下に動きながら時にビジュアライザーとして、時に歌詞をでかでかと叩き出す役割で機能し始める。アリーナならではの演出だし、遠目に見ると「おお、アリーナワンマンっぽい」となるのだが、こういう演出がなくても彼らのサウンドは既にアリーナクラスの会場を掌握する力を持っていることがここまでで十分に伝わってきている。

そのビジュアライザーがバスドラムの四つ打ちと同じビートを刻み出すと、

 

「わかってると思うけどな。束になってかかってくるな、お前一人でかかってこい!」

 

と「秘密」では再びシンガロングを巻き起こす。皆が声を上げるのではなく、一人一人が思い思いの声を上げ、叫び、幸せに手を叩き笑う。彼らのライブはいつだってこうして心をさらけ出してもいいと思えるほど間口が広くて、温かい。

たまたま持ってきたパンツから数年前のCOMIN'KOBEのリストバンドが出てきたという渋谷。今年こそ神戸ワールド記念ホールでやるのは難しくなったカミコベだが、今もなお全国から志をもったバンドが集う場所なのは変わらないし、ビーバーもその一員としてずっと神戸でライブをし続けてきた。

 

「新しい出会いも増えたけど、志半ばで辞めていった人も、もう会えなくなった人もいる」

 

というMCはきっとそんなカミコベの首謀者である松原裕氏のことも指していただろうし、15年目で始めてのアリーナワンマンはきっと彼にも見てもらいたかったことだろう。

そんなMCを経て始まったのは「まわる、まわる」。インディーズに移って以降、彼らはそれまでのほとんどの楽曲に自ら決別を下してきた。そんな彼らが今こうしてメジャー時代の楽曲をやったことについて、渋谷は

 

「時間がたてば昔の曲も受け止められるようになってきた」

 

と語っていた。まさに、

 

「時間が解決してくれる」

 

その言葉通りだ。

ここで多少のごたごたがあったものの、観客を一度席に座らせて(今日はアリーナもスタンディングではなかった)落ち着いた雰囲気で「your song」、「人として」を披露。ツアータイトル通り、立ちだけでなく座りのスタイルでも楽曲の魅力を引き出してみせた。キャッチボールばかりでなく、一人一人が曲を受け止めてそれぞれの形に還元するという作業が丁寧に行えるのがこの座りの時間だったのだろう。

 

中盤のMCではメンバー一人一人に話してもらうつもりが、藤原だけ忘れ去られる展開に。そんな藤原を含めて3人が

 

「気持ちいー!」

 

とアリーナに大声を響かせると、渋谷も負けじと

 

「夢叶えさせてもらっていいですか?」

 

とワクワクした表情で話し、

 

「アリーナ~!」

 

と叫ぶという自らの夢を叶える。明日も同じ会場でワンマンがあるが、これをするのは今日限りだとのこと。そんなお茶目な振る舞いが繰り広げられた後は藤原のパワフルなドラミングから轟音を炸裂させ、「歓びの明日に」から後半戦の火蓋を切ると、

 

「一歩踏み出す勇気を与えたいと思います!」

 

とここで再びビジュアライザーが発動して「予感」のダンサブルなビートでアリーナを揺らす。昨年にリリースされた曲ではあるが、15年目のバンドが作ったとは思えないほどフレッシュな無邪気さや無鉄砲さに溢れている。それはこのバンドの生き様そのものが楽曲に体現されているという証拠だろう。しかしこの曲、よく聴くとどのパートもそれなりに難しいことをやっている。

渋谷がスタンドマイクの前に陣取って歌う渾身の「27」は、最新アルバムの楽曲ではないながらも今年の彼らを引っ張っていった楽曲だったといえる。それは年始にMVが公開され、CMソングに抜擢されたという背景もあっただろうけど、やっぱりバンドが今この曲を届けたいと本気で音を鳴らしているからこそでもあるだろう。

 

「ロックスターは死んだ」

 

と歌う渋谷は、風貌だけじゃなく存在感まで、紛れもなくロックスターだ。

 

ここでステージ上部の照明が降りてくると、客席側を照らすように斜めに傾き、その先頭にミラーボールが降臨する。となれば次の曲はもちろん「東京流星群」だ。

 

「見える?」

 

と渋谷は問いかけていたが、ミラーボールが見たこともないほどの光を反射し、流星群を降らせていた一瞬のシーン、もちろん見えていたとも。

3年前に某冬フェスで彼らを見たときもこの曲をやっていたのだが、ボーカルが籠もりすぎてどんな言葉を叫んでいるのかわからなかった。でも今ははっきりと聴こえる。一人一人の声が星を降らせている。

 

「今日の歓声を絶対に忘れません!」

 

と渋谷は叫んだ。自分も絶対に忘れないと思う。

 

「何のために生きてるのかなんて答えられる人はいないと思うし、俺も何で歌っているのかちゃんと説明できない。でも今日みたいな日のために歌ってきたんじゃないかなって、そう思います」

 

と満員の会場を見渡した渋谷は

 

「あなたは俺たちが歌う理由です。俺たちがステージに立ち続ける理由です。これからもかっこいいバンドであり続けますので安心してついてきてください」

 

と締め括り、「全部」を届けた。こういう大事なことを包み隠さず、背伸びせずに真摯に伝え続けてきたことが、一度はゼロからのスタートを切りながらもバンドがアリーナ2daysを売り切った結果に繋がったんだろう。

 

自分もそうだが、今日この会場にいる人で彼らをメジャーの頃から応援していた、という人はきっと少ないだろうし、きっとここ数年で知ったという人ばかりだろう。だけど、そんな人たちにも積み重ねてきた言葉が響いている。端から見れば遅咲きのバンドだと思われがちだが、これまでの15年の全部が今のビーバーの楽曲を築き上げているのだ。

 

そんな万感の最中で、最後に鳴らされたのは「美しい日」だった。今日までの道のりが最短だったとは微塵も思わないけど、こうして誰もが美しい日を噛みしめいている。そんな瞬間に立ち会えたことを思うと、やっぱり自分は彼らに出会ってよかったな、と思うし、自分ごときが彼らの歌う理由になるのなら、人生捨てたもんじゃないよな、とも思うのである。

 

「秘密」のシンガロングが交錯する中でアンコールとして再び登場した4人は開口一番、

 

「次のアンコールの1曲が終わったらまたそれぞれの人生です。でもその道が太くなったり細くなったり、危うくなったり安全になったり、その先でまたこうして会えたらいいなと思います」

 

「俺らの曲はあなたには届くけど、あなたの大切な人にまでは届かない。そういう風にできてるから。だから後は任せたぜ」

 

と告げ、「ありがとう」へ。常に大切なことは素直に言葉にしてきたバンドだからこそ、そんな彼らが歌う

 

「ありがとう」

 

には本当に説得力がある。今日集まった人たちの、それぞれの大切な人にこの言葉が伝わっていけばいいのにな、と思いを馳せたくなるし、自分も身近な人たちのことを思い浮かべてしまう。そんな想像力を掻き立てる力がこのバンドにはあると、改めて思い知らされた。

 

アリーナ公演はまだ3つ残っているけど、最初のアリーナ公演は今日が最初で最後。そんな一日をあくまでもこれまでの延長線上に置きながら、そのスケール感を見せつけてみせた2時間だった。

今日のライブを見る前は、数年後の彼らはアリーナツアーでも十分やっていけそうなバンドだな、というイメージを持っていた。でも今日のライブを見ると、やっぱり彼らはライブハウス育ちで、ライブハウスで生きていくバンドなんだな、と改めて思えた。アリーナツアーなんてでっかいことは求めなくていいのかもしれない。次はライブハウスで。