sumika 「Chime」 Release Tour @大阪城ホール 2019 6/26

※本記事には現在進行中のツアーのネタバレがございます。この先の閲覧は自己責任でお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月に「Chime」をリリースし、武道館から始まったsumikaのリリースツアー。横浜アリーナなどの大規模なライブを経て、残すは大阪城ホール2daysのみとなった。もちろん大阪でのアリーナ公演は初めて。

 

自分自身の話でいうと、彼らのワンマンは初めてだ。去年のレディクレでのライブ、「誰も置いていかない」という強い信念が感じられる素晴らしいライブだった。どれだけキャパが大きくなっても、彼らはその信念を体現したパフォーマンスを見せてくれるだろうと予感し、参加を決めた。

 

ステージには木造の家のセットが準備されているが、座席の関係上全てを見渡すことはできない。また、大阪城ホールには過去何度も足を運んでいるが、何だかいつもよりステージと客席の距離が近い気がする。

 

開演時間になると、「ピカソからの宅急便」をバックに小川貴之(Key)、荒井智之(Dr)、サポートの井嶋啓介(Ba)、黒田準之介(Gt)、片岡健太(Vo,Gt)が一人ずつ登場し、丁寧に挨拶しながら定位置へ。息を合わせて最初に鳴らされたのは「10時の方角」。

 

「大阪の方角へ!」

 

と歌詞を変えて歌われ、会場全体がパッと明るくなる。これは照明がついたからではなく、音が鳴らされた瞬間、みんなの心に明かりが灯ったような感覚だった。片岡の

 

「飛ばしていくぞ!」

 

の号令から「フィクション」へ流れ込むと、両脇に構えられたスクリーンの横からも明るい光が降ってくる。サビの手拍子がバッチリ決まったメンバーはご機嫌で、前傾姿勢気味にギターをかき鳴らしている黒田はステップを踏んでいるようだ。

 

小川がたっぷり煽ってから始まった「123…456」では

 

「妙な不安感はミラーボールを乱反射」

 

の歌詞に合わせてミラーボールが輝き、ビビッドな音と照明が会場を包んでいく。それがスッと鳴り止むと同時に、片岡のギターストロークだけで歓声が起こった「グライダースライダー」へ。「ふっかつのじゅもん」で更に熱を上げると、メンバー後方の木造住宅に幕が下ろされた。

 

近々開催されるG20について言及されたMCでは(この日は手荷物検査や金属検査などいつもより警備が厳重だったうえ、セキュリティの数もやたらと多かった)、

 

「今日セミファイナルですけど、G20がもし伸びたら6/30のライブなくなるかもしれないからね。今日がファイナルのつもりでやります!」

 

と宣誓してカラフルな「MAGIC」でライブが再開。気づけば後ろのセットは捌けられ、シンプルなものになっていた。

 

片岡がハンドマイクで隅々まで歩きながら「Monday」を丁寧に届けると、「Strawberry Feels」では一転してアダルティな雰囲気に。メンバーのソロ回しも音源より自由度マシマシで披露され、歓声が上がる。荒井はドラムソロでドラムをほぼ叩かず手拍子を煽るという自由っぷり。

 

後のMCで明かされたのだが、このソロ回しは毎公演ごとに全員アドリブでやっているとのことだから驚きだ。よく誤解されがちだが、彼らは決してぽっと出のバンドではない。前身バンド時代から築かれてきた地力の演奏力がよく伝わるワンシーンだった。

 

その後のMCではメンバー紹介も兼ねて一人ずつフリートーク。黒田は

 

「今日は全国のイベンターさんが集まっていて。sumikaにとってのG20みたい」

 

と語り、荒井はオーダーメイドの枕で何故か寝違えたエピソードで笑いを誘う。そして首が後ろに回らなくなったことを踏まえて、

 

「これからも振り返らず進んでいきたいと思います!」

 

とうまく話を締める。めっちゃ喋り上手い。井嶋は

 

「大阪は身が引き締まる思い」

 

と真面目っぷりが伺えるトーク。小川は特にエピソードは離さなかったが、何だか話し方が選挙カーで演説する政治家みたいだった。片岡は2年ほど前に黒田と大阪城ホールにお客さんとしてライブを観に行ったことを明かし、

 

スピッツのイベントだったんだけど、出てたバンドが、MONGOL800Mr.Childrenキュウソネコカミ。で、出演順がミスチル、キュウソ、モンパチ、スピッツだったの。ヤマサキセイヤになりたいと本気で思った」

 

と当時の心境を語り、改めてワンマンでこのステージに立てることを感謝する。このMCの時間が非常に長かった。しかし、彼らにとっては、ライブとは曲を演奏するだけでなく、MCでもお客さんとコミュニケーションを取る場でもあるのだな、と改めて感じたし、話せば話すほど彼らの人のよさがどんどん伝わってくる。

 

再び黒い幕が開き、背景が森っぽい風景になると、「ホワイトマーチ」の鮮麗なサウンドが流れてくる。サビではミラーボールが再登場し、雪のようにアリーナ全体を照らしていった。

 

続けて爽やかなサウンドが駆け抜ける「ファンファーレ」で、片岡はお馴染の左足を蹴り上げるアグレッシブなパフォーマンスを披露。この曲に限らず、片岡は常にどこか一点を見つめて歌うのではなく、しきりに周りを見渡して、お客さんの反応を確かめながら歌っていた。

 

「いったん手拍子とかはお休みしましょう」

 

とお客さんを座らせると、ここからはじっくり聴かせるゾーンへ。「リグレット」は片岡の言っていた通り、目を瞑って聴いていると、より一層曲に込められた温度感が伝わってくる。

 

ゴーストライター」ではこの日唯一、スクリーンが消され、片岡と小川の2名のみがピンスポットに当たる。そんな二人の歌とピアノだけという最小限の情報量で演奏されるが、黒田、荒井、井嶋はその場で身じろぎもせず二人の演奏を聴き入っていた。こういうところがsumikaっぽいなあと思う。

 

最後に披露された「秘密」では、スクリーンに映るメンバーは終始セピア色だった。しかし、「君の膵臓をたべたい」のとびきり美しい場面でこの曲が流れていたことを鮮明に覚えている自分にとっては、この曲はこの日一番の鮮やかさを纏っていた(本当に美味しい場面で流れるので、ぜひ映画の方もチェックしてみてほしい)。

 

「Hummingbird’s port」が流れている間に転換が行われると、「Lovers」で観客は再び総立ち。後ろの幕が開くと、まるでsumikaの隠れ家に招かれたような、大阪にちなんだ小道具が散りばめられた空間が広がる(片岡の後ろに置かれていた「ぼんち揚」がとても目立っていた。ちなみにぼんち揚は関西以外ではあまり流通していないらしい)。

 

歌詞の掛け合いもバッチリ決めると、再びハンドマイクになった片岡が

 

「貴方と一緒じゃなきゃ!」

 

と叫び、「Flower」へ。

 

「大阪のFlower!」

 

と歌詞を変えて歌われたこの曲は、今後のsumikaにとっての新たなアンセムになりそうな曲だ。「ペルソナ・プロムナード」で盛り上がりが最高潮に達すると、

 

「何百回も歌ってきたけど、今一番いい歌が歌えないと意味がない!」

 

と叫んで披露されたのは「「伝言歌」」。そういえば去年、初めてsumikaをレディクレで見たときは、この曲が1曲目だった。たった1曲で会場のハートをガッシリ掴んだだけあって、ワンマンで鳴らされると改めてその説得力に納得させられる。

 

「幸せってどう言葉にしていいのかわからない。何が正解かわからない。けど、どうすれば相手に届くか悩む時間が大事だったんじゃないかなって、このツアーを経て感じました」

 

と最後に語った片岡。その言葉からは、このバンドがどこまでも真摯で、自分たちの音楽にも、自分たちを信じてくれている皆にもひたすらに誠実であろうという姿勢が伝わってきた。

 

最後の「Famillia」では、忙しない「Yes」「No」の掛け合いでピースフルな空間を生みだすと、深々とお辞儀をしてメンバーはゆっくりと去っていった。

 

アンコールでは

 

「新曲やりまーす」

 

といきなり宣言し、「イコール」を披露。「Travelling」は残念ながら披露されなかったが、夏フェスで出番はあるのか。

 

MCでは後ろのセットに組まれた、大阪にちなんだ小道具(くいだおれ人形ビリケンさん、たこ焼き、ぼんち揚、ココアシガレット、阪神タイガースお好み焼きなどなど)を一つずつ説明。投票の結果、大阪らしさNo.1の座に輝いたのはお好み焼きだった。片岡は大阪以外から遠征で来ていた人たちに向けて、

 

「このあと#sumikaと♯お好み焼きで店名だけ呟いておいて」

 

と地元民に促す。今までのツアーでも同じように地域にちなんだ小道具を用意していたのだろうか。彼らが自分たちを待ってくれている人たちの土地まで愛そうとしている姿勢が如実に伝わってきた。つくづくいい人たちだ。

 

「夏だからシュワシュワしたものが飲みたいなあ!」

 

の一言で会場は次の曲を察して大歓声。「ソーダ」が爽やかに届けられると、最後はバンドの原点でもある「雨天決行」で締め括り。メンバーはレフト、センター、ライトの3か所でワッショイジャンプを決め、再会を誓って去っていった。

 

去年のライブでも、とにかく説得力がすごいバンドだという認識はあったが、その説得力がどこから湧いてきているのか、その根源がわかった気がした。ただ上辺だけの綺麗事で取り繕った、世間からの風受けがよさそうな曲にはこんな力は生まれない。そこにバンドとしての肉体性、つまり信念が宿っていることが重要なのだ。

 

だからこそ、流れの速いバンドシーンで、ぽっと出と勘違いされてもおかしくないほど、近年のsumikaは急激な速度で信頼を築いてきたのだろう。

 

今年の夏フェスは、おそらくほとんどの会場でsumikaはメインステージを張ることになるだろうが、どれだけ大きな場所でも、彼らの揺るぎない誠実さはきっと多くの人に響くだろう。

彼らの一層の活躍に今後も目が離せない、と思えた一夜だった。