フレデリック FREDERHYTHM TOUR 2019 ~VISION編~ @Zepp Osaka Bayside 2019/12/14

※本記事には現在進行中のツアーのネタバレがございます。この先の閲覧は自己責任でお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年は2月にフルアルバム「フレデリズム2」、更に10月にはEP「VISION」をリリースしたフレデリック。それらの作品を引っ提げ、1年を通して組まれたツアーのスケジュールはSEASON1~5に割り振られるという大規模なものに。それぞれのSEASON間にブランクはあったものの、それも春フェス、夏フェス、冬フェスで埋まったので、結果としては1年間ライブ尽くしで過ごしてきた。
今日はそんなSEASON4のファイナル公演。2019年、ひいては2010年代最後のワンマンであり、今日のワンマンを終えたら来年はいよいよ大舞台の横浜アリーナに立つ。つまりこの1年の完成形に限りなく近い形の彼らを見れるということで、否が応にも期待値は高まるばかり。

開演時間を少し過ぎて暗転すると、ステージ各所に配置されたモニターに彼らの楽曲が断片的に流される。続いて

「フレデリズムツアー、始めます」

の声が響くと、大歓声に迎えられてメンバーが登場。早くもお立ち台の上に立ち、満員の会場を見渡す三原健司(Vo,Gt)は威風堂々とした風格を漂わせている。彼らのことはメジャーデビュー前から動向を追い続けていたが、いつの間にこんなに頼もしい佇まい をするようになったのか。
SEが止むと同時に健司が合図を出すと、後方のスタイリッシュなオブジェに「VISION」の文字が浮き上がり、オープニングナンバーは「VISION」。色とりどりのレーザーが飛び交う様は、無数の扉をくぐり抜けて未来へ突き進んでいくというEPのアートワークと通じる部分感じさせる。この視覚的演出がフレデリックの持ち味だ。

続いて赤頭隆児(Gt)の鋭いカッティングに歓声が上がる「シンセンス」。フレデリックのライブにおいて締めとしても着火材としても重要なポジションを担い続けている曲だが、この曲は特に高橋武(Dr)の刻むビートがいい。四つ打ちのバスドラムは一発一発がズンズンと重く、高揚感を引き立てる。三原康司(Ba)のうねりまくるベースラインもそうだが、やはりフレデリックの地に足のついた演奏力はこの二人の力が大きいのだとあらためて感じさせる。
そんな「シンセンス」を口火とすると、「パラレルロール」、「逃避行」とほぼシームレスに楽曲を繋ぎ合わせていく様もまた、フレデリックにしか作り得ない流れ。大阪のライブハウスの中でも特に僻地にあるZepp Osaka Baysideは、「逃避行」の世界観と相性もバッチリだ。

短く挨拶をすると、またしてもシームレスな展開が続く。

「大事なことは本人に言えよ」

のフレーズにハッとさせられる「トウメイニンゲン」から地続きの疾走感で「リリピート」、そしてダウナーなイントロから
「今この瞬間を この瞬間を待ち望んでいた」

と我々の思いを代弁するかのような「シンクロック」と、リリースされた時期はバラバラだが、まるで最初からこの3曲がセットでCDに収録されていたのでは?と疑いたくなるような歯車の噛み合いっぷりだ。

一旦ブレイクダウンすると、横ノリのリズムが気持ちいい「ナイトステップ」からは「NEON PICNIC」とディープな楽曲でフレデリック流のサイケワールドへ。以前、レーベルメイトでもあるTHE ORAL CIGARETTES山中拓也

「ミドルテンポの曲で勝負できるようになったら強いと思う」

と発言していたが、今のフレデリックはまさにデビュー当時のダンスロック最盛期の波を越えてこのスタイルを定着させていった感じがする。というか昔からこういうサイケな曲は結構やっていたのだが、それらを「ダンスロック」と一括りにせずに自分たちの流派を貫いてきた結果だろう。

再び健司がハンドマイクになり、フレデリック史上最も歌謡的な部分が強く出ていると感じる「対価」で前半戦は終了。MCでは4人全員にマイクが回されるのだが、

「おかえり~!」

の声を強く求める健司、根拠のない自信を主張する康司、LINE LIVEを配信しているということでカメラに向かってキメ顔をする赤頭(彼はZepp Osaka Baysideを「ポケストップがたくさんあっていい場所」とポケモンGO目線で語っていた)、新しくなったハイハットについて熱弁する高橋(高橋いわく「ミドルレンジがよく出る」とのこと)と、4人とも喋り出すとやっぱり関西人なのだな~と感じる。フェスではこういったMCを一切挟まないだけに、ワンマンならではの貴重な時間だ。

「今回VISION編ということで4箇所のZeppを回ったんですけど。前半のセットリストは固定で、後半のセットリストはそれぞれメンバー1人ずつ考えてきたセットリストでやってきたんです」

と語った健司。そしてファイナルとなる今日のライブの担当は高橋。

「リズム重視の流れになってるかも」

と予言した後半戦は「スキライズム」で再開。EDMチックなエッセンスを感じる「LIGHT」では途中にソロ回しが用意されているのだが、高橋のドラムソロは

「いい音だからいつもより多く叩いてる」

とMCでも熱く語っていたハイハットをフル活用。というかハイハットしか叩いてなかったのだが、それでもちゃんとソロとして成立させるのは流石。
先程のMCもそうだが、以前、彼はドラムマガジンで盟友である04 Limited SazabysのKOUHEIのドラムを理論的に解説していた。そういうドラムに対してのヲタクっぷりがそのままストイックな姿勢に通じているのだろう。

やはり音は繋げたままで「他所のピラニア」へ雪崩れ込むと、

フレデリックのライブはすごいってこと見せてやりましょうよ!」

と煽って必殺ナンバー「オドループ」へ。もうこの会場にいる人で歌えない人はいないだろうという感じのシンガロングっぷりだし、カスタネットのパートでリズムよく起きる手拍子はバンドの音が止まっても完璧。横浜アリーナで歌ったらすごいことになってしまいそうだ。

まさにオンリーワンな存在のフレデリックが歌うからこそメッセージが強く響く「オンリーワンダー」を経て、

「本日はありがとうございました。我々は進化し続けていくバンドですので!最後は新曲で終わろうと思います」

と夏フェスから鍛え上げてきた「イマジネーション」が本編ラスト。「VISION」よりも更にBPMが下がり、音数も削ぎ落とされたソリッドなナンバーだが、音源通りには終わらず長尺のセッションパートへ突入すると、高橋のドラムは更に激しさを増し、そんな演奏に合わせて照明も激しくなってくる。さながら極彩色の時空を高速で駆ける、未来行きのタイムマシンに乗っているかのようだ。
さらに健司が

「声を聴かせてください!」

「さあ イマジネーション」

の部分でシンガロングを要求。完全に夏フェスでこの曲を聴いたときとはイメージが全く違う。こんなに熱量のこもった楽曲だったのか。
最後は両端から幕がステージを包んでいき、完全にステージが見えなくなったタイミングで演奏はフィニッシュ。そして真っ白な幕に「FRDC」のロゴが浮かび上がる、という鮮やかな終幕。改めて彼らが進化し続けていることを照明して見せた。

鳴り止まないアンコールに応えるように、レーザーで照射されたロゴが

「FAB!!」

の文字に変わると、ゆっくりと幕が開いた先には横並びになった4人が座っている。そうして歌い始めたのは「VISION」。FABとはFrederic Acoustic Bandの略称で、つまりこの「VISION」はアコースティックバージョンで披露された。こうして聴くとやはり健司の歌声はどこまでも突き抜けていく爽快感があるし、高橋がカホンとかではなくパッドを駆使しているのがいかにもフレデリックらしい。

「ライブの中で自分達の楽曲をアップグレードしていきたいと考えた結果、この編成になった」

と健司は語る。そしてさっきまで放送していたLINE LIVEも既に終わっていることを告げ、ここからは会場に来た人たちのみのお楽しみということで、続いてもアコースティック編成で「夜にロックを聴いてしまったら」が届けられた。直前のMCと合わせて、まるで自分たちだけしか知らない秘密基地で演奏されているかのような占有感を感じるし、「夜」というこの曲のシチュエーションにもバッチリ合っている。

通常のバンドスタイルに戻ったところで、本当のラストは

「大好きな音楽を思い浮かべて聴いてください。それがフレデリックの音楽じゃなくてもいいから」

と前置きされた「終わらないMUSIC」。ライブ中、健司は何度も

「音楽は好きですか?」

と語りかけていた。やっぱり彼らは音楽が大好きで、音楽から生まれるコミュニケーション、音楽から生まれる想像力を本当に大切にしているバンドなのだな、と改めて感じたし、ここに集まった人やLINE LIVEを見ていた人たちは音楽が好きなことをわかっていて、だからこそ自分たちのビジョンが伝えられるように切実にそれらと向き合っているのだなと実感した。音楽を愛し、音楽に愛されたバンドとは彼らのことを指すのだろう。

冒頭と同じく「MUSIC」の文字が後方に浮き上がった所でライブは終了。これにてライブ尽くしだった1年、ひいては10年代のライブを総括した彼ら。
もはや完全形態と成り得たような凄まじさを見せつけた一夜だったが、彼らは短い期間でもライブや楽曲をアップグレードさせ、ライブ中すらも進化しているバンドだ。一体来年の横浜アリーナはどうなってしまうのか。