04 Limited Sazabys YON EXPO @さいたまスーパーアリーナ 2019/9/29

今年は去年から続くアルバムツアーも終えて恒例のYON FESも成功させ、9月には全く新しい形態での音源リリースも行った04 Limited Sazabys。生粋のライブバンドである彼らが、今年最後のワンマンと銘打って開催されたのが今日のYON EXPO。自身最大キャパとなるさいたまスーパーアリーナを会場に据え、ライブ前にはカラオケやアミューズメント施設、写真展、RYU-TA(Gt)プロデュースのラーメン屋を開くなど、「EXPO」の名の通りバラエティ豊かな企画が展開される。「SEED」でも缶でのリリースという挑戦を行った彼らだが、ライブを含めてこうしたテーマパーク的なイベントを用意したというのも、一種の挑戦といっていいだろう。

さいたまスーパーアリーナに来るのは初めてだったが、やはり最大30000人以上(今日の動員は20000人くらいだったらしいが)を収用できるだけあってめちゃくちゃ広いし、スタンド席からもステージがよく見える。そしてPA卓とメインステージの中間地点には、大きな会場ではお馴染みのセンターステージも用意されていた。

開演時間を10分ほど過ぎて客席が埋まってきた頃、会場が暗転すると流れてきたのはいつものSE…ではなく英語の台詞が挟まれるショートムービー。GEN(Ba,Vo)はキャバクラで遊んでおり、HIROKAZ(Gt)は愛犬と戯れ、RYU-TAはラーメン屋の見習いみたいになり、KOUHEI(Dr)はバッティングセンターに通うというメンバーの日常風景のような映像が流れる。しかしGENが

「やべえ、そろそろ時間だ!」

とキャバクラを飛び出すと、3人も同じタイミングで駆け出してくる。そしてさいたまスーパーアリーナの前で、スーツを着込んで勢揃いした4人が映し出されると、YON EXPOの開催が告げられ、「Now here, No where」が始まった。
武道館の時と同じくステージには紗幕が張られているのだが、演奏が始まっても紗幕は降りず、そこに歌詞がでかでかと投影される。しかも紗幕越しにスクリーンに映る4人は、映像と同じくスーツを着ている。それを見たとき、今日はいつもとは全く毛色の違うライブが展開されるのだろうか、と想像された。

ラストのサビでようやく紗幕が降ろされ、メンバーの姿が露になると、高鳴るテンションは「Warp」で更に高いところまで連れていかれる。続けざまに「Kitchen」でアリーナを踊らせるなど、フォーリミらしいテンポの良さは健在だ。4人ともスーツのせいでやや動きづらそうだが、KOUHEIのドラムは相変わらず鮮やかで、遠目から見ていても迫力が伝わってくる。

「今日はせっかくの晴れ舞台なのでスーツを着てきました。…しかしあっついな。スカパラとかよくやるよなあ」

と慣れないスーツのジャケットを早くも脱ぎ捨てたメンバーは、

「我々のためだけに集まってくれたみなさんを責任持って幸せにします!俺達もう大人だからさ、背中を押す曲を」

と「SEED」から一発目に披露されたのは「Cycle」。インタビューでGENは

「2回目の「広がる」は「日の丸」とかけている」

と語っていたが、ステージ上部に飾られた「YON EXPO」の文字の「O」の部分が時折赤く光って日の丸みたいになるという仕掛けもあった。

痛快なイントロから「message」が始まると、ステージ後方の横断幕の奥から新たなスクリーンが現れ、終始モノトーン調のメンバーが移される。しかし流れるように続いた「My HERO」ではアリーナツアーの時と同じカラフルな映像が加わり、彼らのパンク精神とポップスを両立したサウンドがより際立つ、という大きな会場ならではのコントラストを見せる。
この辺りからフロアも徐々に元気になってきてダイバーの数も増えてくるのだが、そんな暴れん坊達を更に狂わせるのが「fiction」。猛者揃いのフォーリミの持ち曲の中でも、常に起爆剤として存在感を放ってきた楽曲だ。ハイスピードな展開と会場を貫くレーザーが相乗して見せる景色は、いつにも増して痛快。
休ませる間もなく「Montage」が始まると、今度は炎の特効が加わり、レーザーとの応酬で楽曲のスリリングさを増大させた。

ここで一旦ブレイクタイム。やたらと無口な「麺や おがた」の店主(RYU-TA似)が地元・中津川から約300キロの距離をマラソンし、埼玉までラーメンを届けるという、愛は地球を救う的な企画のムービーが始まる。
しかしおがた氏は3キロほど走ったところで早くもギブアップし、自転車に鞍替えして再び埼玉を目指し始めたところでムービーは終了。それに突っ込みながら登場したメンバーは、いつも通りのラフな格好にお着替え。

「ここから中盤戦、開催しまーす」

と宣言し、久々に演奏されたのは「Chicken Race」。最近は同じようなノリの「Kitchen」がライブの定番曲となりつつあり、この曲の存在感が危ぶまれていたが、こうやってちゃんと演奏してくれて安心した。

「埼玉埼玉!」「エキスポポッポー!」

と煽るRYU-TAの姿も久しぶりに見るし、彼の足もちゃんと高々と上がっている。

「埼玉に流星群を持ってきました!」

と始まった「midnight cruising」ではステージ両脇のミラーボールが壮観を生み出す。何度見ても美しい景色だし、楽曲のセンチメンタルさと相まって泣きそうになる。しかし

「さっきの煽りなんだったの?」

とGENがRYU-TAにケチをつけると、そこから口論が始まり、それをKOUHEIが笛で制するというお馴染みの流れで「Galapagos」へ。間奏ではGENが

「俺最初のムービーでキャバクラ行かされたんだけど。俺そんなところ行ったことねえし。てか女性苦手だし。色んな意味で堅くなったよね」

とやりたい放題。あまりにも堂々としているので、GENならあと何年かは下ネタを言っても許されそうだ。

ゆったりとした入りからキャッチャーなサビへ高速転換する「me?」を経て、今日はRYU-TAが曲紹介をした「swim」はさすが代表曲と言うべき盛り上がり。フォーリミはインディーズ時代から追いかけているが、あの頃はこの曲をちゃんと歌えているライブは数少なかった。しかし今ではちゃんと伸びやかな歌声をアリーナクラスの会場の隅々まで響かせている。GENは本当に歌が上手くなった。
そのGENのボーカリストとしての力量が活かされたのが、

さいたまスーパーアリーナでワンマンできるとは思ってなかった。俺達スーパースターだな」

と始まった次のゾーン。GENは普段はやらないことをやりたい、と前置きした上で、

「楽器を弾かずに歌いたい」

と告白。するとHIROKAZはアコギ、RYU-TAはマラカス、KOUHEIはタンバリンを手にし、GENがハンドマイクとなって「labyrinth」をアコースティックバージョンで届けた。曲中、メンバーはステージを降り、客席の間を練り歩きながら中央のセンターステージに向かう。するとステージにはベースとカホン、椅子がセットされており、4人は歌い終えたタイミングでそこに到着。KOUHEIがカホン、RYU-TAがベースにチェンジしたところで

「この瞬間が、永久に永久に続きますように」

と幾度となくライブで歌われてきた「hello」が特別編成で届けられた。最初はメンバーを一方向から照らす照明しかなかったものの、曲が進むにつれて次第に一人、また一人とスマホライトが点滅していき、GENが思わず

「きれい」

とこぼすほどの景色を生み出した。

「俺らからやってって提案するの恥ずかしかったからさ、自発的にやってくれるお前らサイコーです」

との言葉に味をしめた客席は、続く「Shine」の時も白く丸い光を左右に揺らしていた。昔はできなかったアコースティックスタイルがこうやって演奏できるのも、GENのボーカルの安定感があってこそだ。

再び暗転してムービーが流れ始めると、自転車で会場へ向かっていたはずのおがた氏がタクシーで登場し、客席を爆笑させる(中津川から埼玉までは10万円ぐらいかかったらしい)。そして客席の後方からおがた氏がラーメンを抱えて登場。その間、愛は地球を救う的な企画の最後に流れるあの名曲「負けないで」をおがた氏が歌ったバージョンが流れていたのだが、GENが

「XのToshIさんみたいな声」

と突っ込んでからはもう完全にToshIにしか聴こえなくなってしまった。
そんなこんなで苦難を乗り越えてフォーリミメンバーの前に到達したおがた氏。やたらと無口だったのは大ファンであるOfficial髭男dismに会えなかったからだそうだが、フォーリミも大好きらしく、会えて嬉しそう(ちなみに好きなバンドとしてキュウソやブルエン、マイヘアを挙げており、GENから「今時」と突っ込まれていた)。
しかし、苦労して持ってきたはずのラーメンの中身は空っぽ…といったところで寸劇は終わり。今日はラーメン屋に立ったりベースも弾いたりと、RYU-TAは大活躍であった。

「フォーリミはアウェーだとすごい力を発揮するバンドなんですけど、今日はワンマン、ここは敵がいない国。ここの王様になってもいいですか」

KREVAの楽曲を引用して煽ると、「SOIL」から一際ヘビーな「Utopia」を投下。爆発の特効も相まって和やかだった会場を完全掌握すると、「Alien」でも派手な映像と照明で襲い掛かる。ワンマンツアーや夏フェスでもフォーリミの持つラウドな一面を担ってきた2曲だが、まだまだこれからもライブで重要な役割を任されていく予感がした。
「discord」ではスモークを炊きまくりながら更に刃を尖らせる。急に爽やかになるサビとの掛け合いは、フォーリミがジャンルの枠に囚われることなく自分達を表現してきた証拠だ。

初めてフォーリミを聴いたとき、ポップスとメロコアのいいとこ取りをしているバンドだ、というイメージだったが、そうなるまでにバンドが歩んできた道のりの大変さはこれまでのメンバー自身の言葉からも痛感していた。常に自分達の道を自分達で開拓してきた彼らだからこそ、日本のアリーナでも一際大きなさいたまスーパーアリーナに立っているのが嬉しくなる。

「最近は悲しいニュースが多い。俺自身も今年は病気になったりして、それで気づいたのがこうやってバンドをやれてることって奇跡に近いと思って」

と語りだしたGENは、

「だからこうやって瞬間を刻んで残しておきたい。そしていつか、冒険の書みたいに、俺達の曲がみんなの人生のサントラになってればいいなって思います」

と締め括った。フォーリミがこうやって思い出作りに拘るのは、きっと彼ら自身も思い出に救われてきた過去があって、思い出に救われていく未来が見えているからなのかもしれない。

そうして様々な思いを巻き込みながらも

「希望の行方を追えよ」

と未来へ邁進しようとする「Horizon」が強く響き渡ると、間髪入れずに火花の特効と共に「Puzzle」へ。今日のライブは「SEED」の3曲も初披露だったのだが、今までのフォーリミには見られなかったノリ方のこの楽曲は、まだまだ未知数の可能性を秘めている。

「みなさんに残暑見舞いをお届けします!」

と「Letter」ではこの時期にぴったりの物悲しさが歌われるが、続く「milk」ではミラーボールがピンク色に染まり、人肌が恋しくなるこれからの季節に思いを馳せたくなるような風景が歌われる。GENは2番のサビをほとんど飛ばしていたけど。

今日のライブが惜しくもソールドしなかった(あと100枚ぐらいだった)ことを正直に打ち明け、悔しそうに語ったGENは、

「YON EXPO、また何処かでやらなきゃなあって思ってます」

と宣言。ロックバンドのデカ箱でのワンマンは単発で終わることが多いが、彼らはYON EXPOを続けていくことを選んだ。リベンジの意味合いもあるだろうし、次にここでやる時はソールドさせられるだろうけど、それ以上に、YON FESのように、YON EXPOを新たな居場所として提案し続けていくという、そんな宣言のようにも聞こえた。
続けていくことの難しさを体感してきた彼らだからこそ、この選択は大きな意義を持つだろうし、自分もずっと足を運び続けていきたいな、と思えた。

「バンドを続けていく限り旅は続く、だからただ、ただ、先へ進め」

「Feel」が演奏されると、かつて「CAVU」を引っ提げて全国を回っていた時代に、

「バンドを続けていく限りはずっと青春」

とメンバーが語っていたことを思い出した。フォーリミが、自分が前へ進み続けていれば、夢は続くし、青春もずっと続くのだ。

ラストは必殺の「monolith」を叩き込んで終了。この先、どんなに強力な楽曲が生まれても、この曲の存在は絶対に揺らがないのだろうな、と改めて思い知らされたし、フォーリミとの出会いのきっかけとなったこの曲をずっとライブで浴び続けていたいな、と思えた。

アンコールでは1月からZeppを回るツアーを行うこと、来年もYON FESを行うことをさらっと発表。やっぱりライブハウスに戻ってくるわけだが、今日のライブを通してフォーリミへの印象がだいぶ変わった。
ライブハウスで見る強靭かつリアルなフォーリミと、巨大な会場で見るエンターテイメント性溢れるパーティーチックなフォーリミ。今まで比較して優劣をつけがちだった2つの軸が、どちらも同じくらいに大切なものなのだということに気づかされた。それはもしかしたら、ロックバンドにとってアリーナ公演は特別なものである、という感覚自体を覆すことにもなるのではないか、とも感じた。
今日のライブは、総合的なイベントスペースの提案であると同時に、フォーリミの新たな闘い方を提案していたものだったのかもしれない。きっと次にライブハウスで見るフォーリミは、以前よりも新鮮な気持ちで見れるだろう。

考えすぎている我々のみならず、演奏している自分達自身をも鼓舞するかのように「Squall」を届けると、最後は「Remember」で狂騒空間を生み出して終了。かと思いきや、「soup」に合わせておがた氏のエピローグ的なムービーが流れ始める。銭湯のお湯をレンゲで飲んだところで、

「こんな終わり方はないでしょ」

とメンバーが再登場して勝手にダブルアンコールへ。

「最後はやっぱり、ワンマンでしかやらないこの曲で」

と武道館、アリーナツアーと同じく「Give me」で皆を笑顔にして締め括った。

毎年のようにライブを見続けているフォーリミだが、正直、武道館を超えるライブは個人的にはなかった。あの頃のギラついていた感じの方が彼らには合っていたのかなあ、とか、自分たちの状況に甘んじているのか、と思うようなライブもあったが、今日のライブは間違いなく、今までで一番のライブだった。持てる手札全てを尽くして、彼らなりのエンターテイメント性を存分に発揮した、スーパースターに相応しいライブだった。しかもこんなライブを、これからも続けていきたいと宣言してくれた。

ヒーローとして、責任を持って幸せにしてくれた彼らの姿がそこにはあった。やっぱり彼らはかっこいい。だからこれからも、一生死ぬまで一緒に。